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ハァ王の帰還

今朝で3話目です

4時と6時にも1話づつ投稿してます。


お気を付けください

アピサルの谷間で過ごしていると、ロードの歩く地響きを感じた

ここにいると地面に立ってる時より揺れをダイレクトに感じる


ここが極楽か


「むむっ!なんぞこれは鬱陶しい!」


そんな煩悩にまみれた思考をしていると、ロードの声が聞こえてきた

しかし、何やら声を荒げている


「何かあったのかな?」

「あらあら~私の張った罠が次々に起動してるみたいです~」

「え?大丈夫なの?それ?」


何があったのか疑問に思っていると、キューレが頬に手を当てて所謂「困ったわ」のポーズをしていた


「えぇ~頑張ってロード様でもただでは済まない規模の罠を展開したはずなんですけど、どうやらダメだったみたいです~」


表だってロードに反抗していたのはアピサルとマリエルだったが、キューレも思うところがあったらしい

俺を守るためという大義名分を元にしれっと凶悪な罠を仕掛けるあたりがやり手の狩人っぽい。


「ケルちゃんがいると思って手加減しちゃいましたけど、今度はもっと頑張らなきゃいけないですね~」


やはりキューレみたいなタイプが怒らせると一番怖いな、うん

そんなことをのんびりと考えていたのだが


「根っこ、根っこはどこだ!?」


続くロードの声にハッとする

ネックを必要とするという事は何かがあったという事か

慌ててキューレの上にいたネックを抱え、アピサルの胸の上から身を乗り出す


「ロード何があった!?」

「おお、小童に根っこ、そこにおったか。実は犬っころが怪我をしてしまってな」

「ケルが!?」


見るとロードの手にはぐったりとしたケルが横たわっていた


「ケル!!大変だ、ネック!回復できるか!?」


ネックは大きな丸をつくると、水の球を幾つもケルに当てた

水の球が当たったところから、ケルの怪我は治っていき、どんどんと綺麗な体になる。


やはりさっき手を洗った水球はポーションだったようだ


「おぉ、根っこよ、大義である、褒めて遣わす」


ロードがすごくほっとした顔でネックにお礼を言っている

いつの間にかロードとケルは仲良くなっていたらしい

ロードの柔らかい雰囲気に驚きと感動を抱いたが、問題はケルが怪我をしたという点だ


ケルは高いステータスを持つ金卵の魔獣だ、そのケルが傷を負い、ロード程の存在でもそれを防げなかったなんて


「ロード、貴方がついていながらこんなことになるなんて、いったい何があったのです?」


アピサルも気になったらしく、ロードに質問をする


「う、うむ?ガハハハッ、それがだなぁ」


ひどく答え難そうにしているロード

それを見てアピサルの目が怪しく光る


「もしかしてロード、貴方ケルの存在を忘れて暴れまわったのではありませんこと?」


アピサルの追及にさらに焦るロード

ロードが攻撃を防げないという状況よりも納得できてしまうシチュエーションだ


「いや!違うぞ!犬っころとは相性の悪い魔物が出たのだ。ワシが一ひねりにしてやろうかと思ったが、この犬っころが自分だけやってみたいと申すのでな、ギリギリのところまで手を出さずに見守っていたのよ」


その言葉を聞き俺は声を荒げる


「ロード!お前はケルがボロボロになるまで見てたっていうのか!?」


そうだとしたらいくら何でもひどすぎる。

戦士の定めとか、決闘の流儀とかそんなことを言おうものならただじゃ置かない


「まて小童、敵は狡猾でな、犬っころが追い込み、とどめを刺そうという時までその力を隠していたのだ。」


ロードは身振り手振りでその状況を説明していく


「最後の攻撃は余も認識できぬほどの速さでな……。次の瞬間には犬は倒れていたのだ。決して犬がいたぶられているのを黙ってみていたわけではないのだ」


なるほど、ロードでも見切れない攻撃をする生物がこの森にいるというわけか

やはり異世界は生半可なところではないらしい。

ガチャで虹卵のアピサルとロードを引いてなかったら早々に詰んでいたかもしれないな


「そうですか……」


アピサルも事の深刻さを理解したようだ


「主様、少しばかり我儘を申してもよろしいでしょうか」

「なんだ?何でも言ってくれ」

「ロードが後手に回るほどの攻撃、わらわも一度体験しておくべきかと思います。ネックを連れ、その魔物を蘇生させて、一戦交えたいと思うのですが、お許しいただけるでしょうか?」


確かに俺の持つ最大戦力の一角であるロードが不覚を取るのなら、アピサルも不覚を取る可能性があるという事だ、単体ならまだしもそれが複数現れたら俺の身も危ない


「わかった、危険だけどリスクは把握し対処方法を練るべきだ。俺はロードとここで待つから、ネックを連れて――」

「ま、待つのだ小童!」


アピサルに言葉を伝えているとロードが焦ったような声を出す


「別にただ後手に回ったわけではない、犬っころがあまりに優勢に事を運ぶのでな、安心しきって見ていたがゆえに不意を突かれただけよ。ちゃんと相対すればなんていうことは無いはずだ、だからわざわざ蛇女に確認させるまでも――」


「ロード」


随分と早口なロードの声を制するように

絶対零度の声が響く


ピシリッと、これまでどんな攻撃も歯牙にもかけなかったロードが固まる


「あなた……何を隠してますの?」

「む?余を疑うか!?不敬であるぞ!?」


アピサルは瞬時にロードの首に尻尾を巻き付ける


「誇り高い覇者が、つまらぬ嘘などつくはずがない、そうですね?」

「う、うむ」

「今ならば、先ほどの弁明は聞かなかったことにして、前言を撤回しても、誰もあなたの誇りに傷がついたとはみなしません。そうですよね、あなた達」


アピサルが怖い

ヴァイオレットやキューレ、市やネックまで素早くうなずいている


ピー助に至っては白目をむいて気絶している


「むぅぅぅぅぅぅ……」


ロードはすごく怖い顔でアピサルを睨んでいる


(これ絶対何か隠してるやつじゃん)


力も知恵もあるロードだがその立場故にこういう風に尋問される経験値はあまり詰めていないのだろう。隠し事があることがバレバレのリアクションをしている


こういう時は「全く気にしてませんけど何か?」くらいのある種ドライな反応をやりきらないといけないというのに


(いや、別にロードの肩を持つわけじゃないんだけど、アピサルに問い詰められてるロードを見ると男として無性に肩を持ちたくなってしまう)


これが雄の弱さ、女の強さなのだろうか


「余は嘘などついておらぬ!」

(あーあ、早く認めちゃったほうが楽なのに)

「へぇ?なるほど?」


案の定アピサルがさらに不機嫌になる

ロード南無と心でその冥福を祈っていると


「クゥ~ン」


と弱弱しい鳴き声がしてケルが起き上がった

(よかった、無事だったか)

無事だったことに安堵していると、ケルは状況を察したのか、ロードの足元に行き、ロードをぺろぺろと舐めたあと、アピサルや俺たちに向かって頭を下げた


まるで自分の我儘のせいだと反省しているように見える


ケルのけがはロードのせいと半ば確信を持っていただけにその行動に驚いた俺達だが、そのなかでも一番驚いてるのはまさかのロードだ


目と口を開き、信じられないという顔をしている


(その顔をしている時点で、十中八九ケルをあんな風にした原因はロードなんだろうな……)

それぞれの心の中で事件の真相が見えた中


「はぁ……」


とアピサルが大きなためいきをつく


「いいでしょう、ケルに免じて、これ以上は追及しないでおいて差し上げます」

「う、うむ」

「ですが、主様の行動やその命に係わる報告の虚偽をしたときは、本当に容赦いたしませんからね?」

「な、なんのことやら、わからんなぁ、な!犬っころ!!グ、グハハハハ」


まるで家庭内で立場を失った父親が飼い犬に逃げるように、ケルをわしゃわしゃと撫でるロード

ケルはロードの勢いに軽くつぶされそうになりながらも、そんなロードの行動が嬉しいらしく、尻尾をぶんぶん振っている

炎の調子も戻ってきたようだ


そんな自白するかのようなロードの反応に少し呆れると同時に、どんどんと親しみを持っている自分がいる

なんだか嬉しい。


一方的にロードを遠い存在とみなして、壁を高く見積もるんじゃなくて、ちゃんと理解を深めてしっかりとその壁を乗り越えていきたい


そんな風に思えた一幕だった

次回、偵察に出ていた二人が戻ってきます。

どんな発見があり世界が広がっていくのか

楽しんで頂けたら幸いです


よろしくお願いいたします。


感想や評価、言いね等で執筆速度を応援していただけたら幸いです。

今日から数日は本業でやるべきことが詰まっているため更新速度遅くなると思いますが、書けよっ!って背中押していただければ喜んで書いちゃうかもしれません |д゜)<オネガイシマス

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