これからの方針
ようやく冒険開始!
この話をかきあげるまでにまた一人ブックマーク者が増えていて驚きました
嬉しさのあまり脳内でネックが不思議な踊りをしています
今後ともよろしくお願いいたします。
4話以降のアピサルとマーリンの口調を若干修正しております。
実力不足で細かな変更が多くて申し訳ありません。
読み返さなくても支障はありません。
よろしくお願いいたします。
「さて、これからの方針を決めよう」
突然異世界にやってきて、瞬く間に10の仲間が出来た。
当然頼もしくもあるが、不安もある。
この世界にどんな生物がいるかはわからないが、アピサルやロードを見た瞬間に敵対してくる勢力もいるはずだ。
まずはこの世界の基準を理解し、そのうえでどう対応するか決めなくては
「我が王よ、一つよろしいかのぅ?」
考えをまとめているとマーリンが声をかけてきた
「もちろんだ、マーリン」
マーリンは優れた知能を持っている、きっと名案を出してくれるはずだ
「では失礼して」
マーリンはそのひげを丁寧に撫でながら言葉を続ける
「王はこの世界を知らぬ、そして、無力なことに我等もまた、この世界のことを何一つとして知らぬ。今の我等には、まぁこの世界で通じるかはまだ定かではないが、それでも並大抵ではない力がある。今の我らに足りぬのは知恵、知識、そしてなにより情報じゃ」
確かに、力だけの存在が知恵によって倒される話なんてよく聞く話だし、情報弱者が食い物にされるのもよくわかる。情報は力だ
「で、あるならば。まずは儂と、マリエル殿が空からそれぞれ偵察を行い、何者かの集落を発見する。そして見つけたならば、その勢力の第一勢力に最も形状の近い者が交流を試みてみるというのが第一じゃ」
「マリエルはわかるけど、マーリンが空から?」
「なに、魔法を使えば造作もないわぃ」
マーリンは茶目っ気のある老人と認識していただけに、急に賢者然とした振る舞いを見るとすごくリスペクトしたくなる
「そしてすぐに第一案が達成されなかったときのために、そこにある森が王にとって安全かどうかを、ロード殿とケルめに確認してもらう、というのが第二じゃ」
「余を顎で使う気か?賢者よ」
マーリンの提案にすかさず反応するロード
「ロード殿ほどの御仁であれば、この森に神が住まうとて、引けは取らぬはず、万が一が起きたら、素早いケルに戻ってきてもらい、王を守るアピサル殿に危機を伝えてもらうという寸法じゃ。今はロード殿が誰によってどれだけ動くかより、何もかもが不明な地で、王の安全を確保するのが最優先と考えるが、巨鬼の覇者殿は違う考えかのぅ?」
「ふん、王が貧弱だと配下は苦労する」
「ふぉっふぉっふぉ、王たる素質を持つ未熟者を支える醍醐味を知らぬとは、まだまだ若い」
「ぐはははは、いうではないか賢者よ」
「ふぉっふぉっふぉっふぉ」
これが年の功というやつなんだろうか、一触即発かと思いきやすごくなごんでいる
というか明らかに長生きしてるロードを若者扱い出来るなんて、マーリンのモデルになった存在は何歳だったんだろうか
魔法で年齢を操作してるとか普通にありそうだ
「で、この第一第二の献策、採用してくれますかのぅ?我が王よ」
深刻そうに、だけれど最後には安定のウィンク付きで提案をしてくるマーリン
本当に大した人だ
「あぁ、それで頼むよ。マリエルもよろしく頼む」
俺が声をかけるとマリエルは凛々しい顔で答える
「はいっ!お任せください!必ずや集落を見つけて戻ってまいりますっ!」
「天使殿よ期限はおおよそ二刻の間としようではないか」
「私に指図するな爺」
「ほへ?」
まさかの返しに唖然とするマーリン
すごく間抜けな顔である
せっかく作った賢者然とした雰囲気が台無しだ
「……頼むよマリエル」
「はいっ!主様の命であればこのマリエル喜んでっ!」
俺とそれ以外でマリエルの対応が違いすぎる
あざとい女の子は裏の顔を隠しきるものだと思っていたが、ここまで露骨に切り替えるとは
(……はっ!?もしや周りとのギャップ萌え、もしくは自分だけ特別感を強制認識させることを狙っているのか?いやいや、それよりも俺が仲裁せざるを得ない状況を作ることによって会話回数を無理やり増やしてるのか!?)
あざと女子の奥は深い、闇は深まるばかりである
元気よく飛び立ったマリエルと、哀愁漂う背中のマーリンを見送る
「余が散歩に連れて行ってやろう、光栄に思うがいい、犬よ」
「ウゥゥゥワンっ!!」
ケルとロードが完全に休日の亭主関白の親父と飼い犬である
犬と呼ばれてうれしそうなケル、お前はそれでいいのか
なんだかんだ上機嫌で森の中に入っていったロードとケル。
豪快に木を倒しながら進んでいたロードだが、彼よりも高い木もあるからだろうか、すぐにその姿は見えなくなった
「さて、それじゃあ俺たちは……」
「ピィィィィィッ!」
何をしようかと続けようとしたのだが、ピー助が突然俺の前で素振りを始めた
そして剣を振る毎にこっちをチラッチラッと見てくる
「あー……ピー助には俺の身辺警護を頼んでもいいかな?」
「ピッピピィィ!」
「まかせてっ!」とでも言いたげに目をキランと輝かせたピー助はまるでSPのように俺の周りに鋭く視線を飛ばし始める
「主様」
そんなピー助を見てると俺の身体がふわりと持ち上がる
この急に持ち上げられる感覚も何度か経験したせいか慣れてきた
案の定俺を持ち上げたのはアピサルで、その長い爪を器用に動かし俺を胸の谷間へと落とす
「ここが一番安全ですから」
「あ、あぁ。ありがとう、アピサル」
頭では確かに安全な場所とわかっていても、胸の谷間をソファーのように使ってるという状況にいまだ慣れない
下の方からピー助の焦りをはらんだ鳴き声が聞こえてくる
恐らく護衛対象が急にいなくなったことにパニックを起こしてるのだろう。ピー助からでは下のふくらみしか見えないはずだからな
まぁ下にいてもやることは無いのだしと気持ちを切り替え、せっかくなので今の状況を楽しむことにする
(いい天気だなぁ)
妖艶で巨大な美女の、フカフカな谷間で日光浴をするというなんとも不思議な体験に少し眠気を感じ始めた時
下の方から声が上がってきた
「主様ぁ~」
どうやらキューレがアピサルの身体を上がってきてるらしい
アピサルの肩までたどり着いたキューレは蜘蛛の足を器用に使い俺に果物を差し出してきた
「ヴァイオレットちゃんが~主様のために探してきてくれた果物です~。毒見は市さんが済ませてますので~ご安心を~」
どうやら気を使わせてしまったようだ
しかし、毒見を当たり前のようにさせられる市がなんともかわいそうである
いくらネックが蘇生できるとはいえ、体当たり過ぎる
受け取った果物はまるでリンゴのような赤い果物で、甘酸っぱくみずみずしい
しかし、この果物は確かに美味しいのだが、手が少しべたついてしまう
こんな手でアピサルの胸を触るわけにもいかず、手の置き場にこまってると目の前に水の玉が現れた
「へ?」
視線を上げると、キューレの蜘蛛部分にしれっと乗っていたネックがその根からシャボン玉のようにいくつもの透き通った水球を出してくれていた
「はは、ありがとう、ネック」
お礼を言うと根っこを振り嬉しそうにするネック
俺が使わなかった水球はアピサルの胸に当たり、その肌を色っぽく濡らしている
地味にエロい
(しかし、手が化粧水を塗った時のようにサラサラしてるんだけど、ネックの出してくれたのはもしかして回復薬なんだろうか)
だとしたらポーションで手を洗うという贅沢な事をしてしまったという事だ
異世界の基準はわからないが間違いなくブルジョアな行為だろう
(こういう事から王らしさを身に着けるのである、なんてな)
少し調子に乗ったことを考えた時
身に覚えのある重圧を感じる
そして少し遅れてやってきた地鳴りのような音と、地響きにアピサルの胸がたゆたゆゆれる
「これは、ロードの声か?」
どうやらロードと戦える存在がこの森にいたようだ
この世界の存在との初遭遇に、眠気は吹き飛び、一気にロードの安否が心配になる
「主様、大丈夫でございます。なにせ、ロードですから」
そんな俺の心を落ち着けようと優しい声が響く
「うん、そうだな。あのロードだもんな」
アピサルとほほ笑みあう
ほんの一瞬の出来事なのに随分と楽になった
そして心を強く持ち直す
わずかな時間しか触れ合っていないが、それでも圧倒的な信頼を寄せられるのがロードという存在だ
きっと豪快に笑いながら帰ってくるのだろう
俺はそう胸に言い聞かせながら、ロードの無事を神に祈った
次回はロード視点
森での初遭遇、初戦闘シーンを描きます
どうぞお楽しみに!
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