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かつてシリーズ

かつてでくのぼうだった少年は、虐げられたお姫様のために復讐の道を突き進む

作者: リィズ・ブランディシュカ



 その少年は騎士だった。


 騎士とは勇気を示して、敵の前に立たなければならないもの。


 しかし、少年はいつも他の仲間の後ろにいた。


 臆病で怖がりだったため、任務ではまったく役に立たなかったのだ。


 だから「でくのぼう」と呼ばれ、馬鹿にされていた。


 けれどそんな少年には、好きな人がいた。


 それは騎士である少年が守らなけれなならない存在、国のお姫様だった。


 お姫様は誰にでも分け隔てなく、優しく接する人間だった。


 だから少年は、どうにかしてお姫様の力になりたいと思っていた。


 どうにかして、奮い立とうとしていたのだった。


 しかし、戦争をしかけてきた敵国に少年がいた国が敗北した。


 そして、お姫様は囚われの身になってしまった。


 無事は分からず、何をしているのか分からないまま数週間が過ぎた。


 少年はその時になってようやく、自分自身を叱咤して、立ちあがる。


 立ち止まっていた時間をとりもどすかのように、一心不乱に修行に励んだ。


 少年は、弱い自分に別れをつげ、毎日過酷な修行をこなしていく。


 やがて少年は、右に出る者はいないと言われるくらい強くなった。


 だから、少年はお姫様を助けに行くことにした。


 しかし、それは残念ながら。


 間に合わない。


 少年が助けに行った時にはすでに、お姫様の心は壊れていたからだ。


 過酷な拷問を受けた捕虜は、そうなる運命だった。


 少年は自分の力のなさを悔いた。


 立ち上がる瞬間が遅かったことを悔いた。


 そして、お姫様を虐げた敵国の者達に復讐する事を誓った。


 自分にも優しくしてくれたお姫様。


 他の人にも平等に笑顔をみせていたお姫様。


 その存在は少年の光だった。


 光を奪われたなら、あとは闇に包まれるしかない。






 少年は生き残った国の者達を集めて、お姫様を虐めた国を攻撃した。


 一人で何百人分の働きをした少年は、生きた戦の神と呼ばれた。


 戦場に出るたびに、多くの者達を血まつりにあげていく。


 しかし、それだけでは国を潰す事などできない。


 だから少年は、次の手をうった。


 暗殺者の技術を身に着けて、直接要人達を殺す事にしたのだ。


 そうすると国を動かす者達が少なくなるため、敵国は次第にまわらなくなっていった。


 後は、国の内部に多くのスパイを送り込んで、内部で破壊活動を行った。


 敵国の治安は一気に悪くなり、内部からゆっくりと瓦解していった。


 生き残った王族達は、自分達だけで脱出しようとしたが、少年はそれを許さなかった。


 彼等を生け捕りにした少年は、お姫様がされた仕打ちと同じように拷問を行った。


 水責めをしたり、火であぶったり、電気で感電させたり。


 生き物にかじらせたり、猛毒をあおらせたり。


 やがて狂った王族達は死んでいった。


 少年は復讐を完遂した。


 上に立つ者がいなくなった、その国は自然と滅亡していった。

 民達は路頭に迷い、国を復興することなく、他の場所へと流れていった。





 復讐をやりとげた少年は無力感につつまれたが、そこに奇跡が起こった。


 闇に包まれていた少年の心に光が差し込んだのだった。


 心を病んでいたお姫様が、奇跡的に正気を取り戻したのだ。


 その後、お姫様の国は復興し、多くの人々が喜んだ。


 少年は、その国を守るために尽力し、お姫様がもう二度と苦しい目にあわないために、死ぬまで頑張り続けていた。


 そして、少年はその思いをお姫様に伝える事は、生涯なかった。


 お姫様は、優しいどこかの王子様と一緒になって、幸せに余生をすごしていた。



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