夏休みの話 2
ものすごく肩身の狭いところでのお昼は落ちつかなった。何といっても、周りは女子だけ。なんとなく会話に入りずらい…。
「…い! …んぱい! …先輩!」
「え?」
「聞いてますか? 大丈夫ですか?」
「あぁ、うん。ちょっとぼーっとしてた」
いつの間にかぼーっとしていたらしく、七海さん達が呼んでいるのに気がつかなかった。みんな心配そうにこちらを見ていた。
「まったく…。夏休みが終わったらすぐ文化祭ですよ。先輩のクラスは何にするか決まってるんですか?」
「あぁ、文化祭ね。確か、メイド&執事喫茶だったかな?」
「えぇ!? もちろん先輩はメイドですか!?」
「いやいやいや!? そんなわけないからね!?」
「だったらみんなで行きますよ。ね~」
「「「ね~」」」
「ね~、じゃないよ。大体、僕は調理のほうに行くから殆ど接客はしないよ」
「つまり、先輩の手料理が食べられるんですか!?」
「…まぁ、大体は僕がやるらしいけど」
「だったら行きますよ。オ―」
「「「オ―」」」
「…チームワーク抜群だね。そろそろ、お昼の休憩時間も終わるよ。午後もしっかり練習するんだからね」
「わかってますよ!」
お昼の休憩が終わって再び練習を再開する。といっても、午前と内容はあまり変わらないのでだんだんとみんな飽きてきてしまう。
「みんな、明らかにやる気がなくなってきてるね…」
「合宿なんだからちょっとイベント的なのが欲しいですよね! 次の試合で勝ち進んだ人は「都住先輩から頭をなでなでしてもらえる」権利をもらえるってのはどうですか?」
「いやいやいや、そんなのでやる気出す人いないよ!」
「「「「きゃーー!」」」」
「えぇ!? 何でそんなやる気出すの!?」
「さて、面白くなってきましたね~」
ほとんどの女子がやる気を出して練習をしはじめた。いやー、やる気を出してくれたのはいいけど…そんなものでいいのか?
そして、試合を始める時間になったのでみんなを集めて試合をするように話す。
「あー、負けた…」
明らかに午前中と違うテンションで女子が試合をしている。本気で悔しがっている人もいる。
「モテモテですね、先輩」
「…だったら代わる?」
「俺が代わりに出ても相手にされないですよ」
試合が終わった後輩と適当に話しながら女子の試合を眺める。あ、七海さんが勝ち進んでいる。そのまま優勝していた。
「やったーー! 勝ちましたよーー! せんぱーーい!」
「さて、10分休憩しようか!」
「ちょっと先輩! なでなでしてくださいよ!」
「わかったよ…」
僕は七海さんの頭に手を乗せて頭をなでなでする。七海さんはうつむいていて顔はよく見えないけど、ずっと黙っていた。これ、いつまでやればいいんだ?
「えぇっと、もういいかな?」
「はふぅ……」
七海さんの顔はリンゴのように真っ赤になっていた。おまけに目をとろ~んとさせていた。そんなに気持ちよかったのだろうか?
「それじゃあ、この後もしっかりと練習すること!」
「「「「はい!」」」」
こうして、僕たち卓球部は夕方までみっちり練習をしていた。西山先生が顔を出すことは結局なかった。
「じゃあ、今日はここまで。ラケットの手入れは各自しっかりとしておくこと」
「「「「はい」」」」
今日の練習が終わって、今は軽くモップをかけたりと掃除をしている。
「さーて、先輩! 夕食の準備しますよ!」
「材料とかは用意してあるの?」
「もちろんです。家庭科室の使用許可もいただいてます。今日はカレーでお願いします!」
「カレーか…。わかった」
「みんなーー! これから家庭科室で都住先輩が夕食作ってくれるよーー! 見たい人は見に来てねー」
「わざわざ宣言しなくても!?」
まあまあ行きましょう、と言いながら体育館から出て行く。僕も七海さんについて家庭科室へ向かうことにする。