第30話
30話になりました。長かったなぁ…。
「夏休みは終わってしまった!」
翼が僕の隣で叫ぶ。今は学校が始まり、自分の席に座っている。
「あんまり遊べなかったわね」
隣の席のルイスが呟く。なんだかんだで、それぞれに予定があり、あまり「集まって遊ぼう!」というわけにはいかなかった。
「しかも、学校始ってすぐにテストってどうなのよ……」
いつの間にか隣にいる彩音がため息とともに吐き出す。そうなのだ、学校が始まって次の日にはテストが待っていた。みんな、休みボケが抜けておらずいまいちやる気が出ない。
「そりゃあ、学生の本分は勉強だからね。しょうがないよ」
「悠斗は勉強できるしいいかもしれないけど、あたしはこれで赤点があったら部活をさせてもらえないのよ!」
「彩音は毎回赤点ギリギリだからなー。今回はヤバいんじゃないのか?」
「くっ…、少しでも部活に専念したいのに…。課題なんて最悪よ! テストなんて悪魔よ!」
「そんな大げさな…。でも、課題が出るのはヤダね」
「そうね、遊ぶ時間が奪われるし。今日にでも私は佐倉に勉強を教えてもらおうかしら」
「ゆ、悠斗! 今日はあたしの家で勉強会にしない!? というか、勉強教えて!」
「うーん、今日はバイトがあるからあんまり時間ないよ?」
「今日はどうせ始業式だけだから午前で帰れるでしょ。午後たっぷりできる!」
「そういえばそうだね。なら僕はいいよ。他の人は?」
「俺はパスだ。部活がある」
「ルイスは佐倉さんに教えてもらうのよね。じゃあ他はなしじゃない?」
「ちょっと待った! じゃあ、悠斗と彩音の二人で勉強するってこと!?」
「そうなるのかな」
「……そういえば、今日は佐倉は休みでいないんだった」
「嘘でしょ! 明らか、今決めたでしょ!」
「違うわよ! 今、思い出したのよ」
二人でぎゃーぎゃーと口論を始める。この二人はホントに仲がいいなぁ…。隣で翼はケタケタ笑ってるし、あぁ、平和だなー。でも、そろそろ止めないと。
「ほら、そんなに喧嘩しないで。三人でやればいいでしょ。ちゃんと教えるから」
そう言うと二人はこちらを見て、呆れた顔をしてため息をついた。
「まぁ、これが悠斗だもんね」
「ホント、なんか悔しいわ」
そして、それぞれ自分の席に帰って行ってしまった。僕はなんのことだろうと、頭をかしげてみたけど答えは出てこなかった。
「それじゃあ、始めましょうか!」
はい、彩音の家に移動しました。小さい頃からよく来ていたが中はまったく変わっておらず、最低限の物しか置いていない。本人いわく「ごちゃごちゃするからこれでいい」とのこと。
「さて、何から始めようか? 苦手な教科は?」
「英語」「数学」
「えっと……、彩音が英語で、ルイスは数学ね。わからないとこがあったら教えるから言って」
「悠斗、悠斗。ここの計算はどうやるの?」
「ここは、この計算式を使って…」
「悠斗! ここの訳がわかんないんだけど!」
「ここは過去形だから、~でした。って感じにして…」
「悠斗、ここは?」
「ここはこの計算式で……」
すぐ隣までルイスが近づいてくる。一瞬、ふわっと甘い匂いがした。香水かなんかだろうか、僕はドキッとする。
「ちょっと、ルイス! 近づき過ぎでしょ! 悠斗もデレっとすんなー!」
「べ、別に、デレっとなんてしてないよ」
「でも、顔赤いよ。かーわいい」
「あー、もー、ルイスはあっちで本でも読んでなさいよー!」
彩音が指さす所には、雑誌らしきものが積み重なっていた。それを無視して、ルイスは机の棚に収まっていた分厚い本を見つける。
「じゃあ、こっちでも見ようかな」
「あ、それ、中学校の卒業文集?」
「あーーー、それはダメ!」
「いいじゃない。少し見るだけよ」
彩音の言葉も虚しく、あっさりと本を開く。僕と彩音と翼が同じ学校で同じクラスだったからすぐにわかるだろう。
「わー、小さい。これ、悠斗?」
「……どうせ小さかったよ」
「この時の悠斗ってクラスで一番小さくなかった」
「小さかったよ!」
「まぁまぁ、そんな怒らないで。かわいいからOKよ」
「うぅ……もういいよ」
「彩音は……、もしかして…これ?」
「あーーー、だからダメだってーーー」
「ぷっ、あはははーー。こ、これが、彩音…」
僕も見る。そこに写っていた彩音は、前髪がパッツンでメガネをかけていて、いかにもクラス委員長って感じに見える。そういえば、こんな感じだったな……。
「あははーーー。ダ、ダメ、可愛すぎ…」
「だったら、笑うなーーー! この時はオシャレなんて考えてなかったんだからーー!」
結局、その後も出てきたアルバムを見ながらルイスは笑って、彩音はぐったりしていた。自分の小さい頃の写真を久しぶりに見たが…、身長は伸びてるよ…ね…。あまり気にしないでおいた。
あ、あと、次の日のテストは彩音とルイスは赤点だった。原因はもちろん、アルバムを見て笑っていたことだ。