第18話
「疲れたー」
彩音が落ち着いた頃、僕たちは砂浜へ戻ってきた。日も暮れ、寒くなり始めたので荷物をまとめてコテージに戻った。
「夕食は佐倉が用意しているわ。それまで、待ちましょう」
「私、もうお腹ペコペコですよー」
みんな今は、ロビーのソファーでくつろいでいた。確かにお腹が減った。待ってるだけじゃ落ち着かないから手伝おう。そう思い、キッチンに入って行った。
「佐倉さん、僕も手伝いますよ」
「いえ、お客様に手伝わせるなんてできません。すぐにご用意いたしますのでもうしばらくお待ちください」
「けど、五人分を一人で用意するのは大変ですよ。あ、お皿出しますね」
「……すいません。ありがとうございます、都住様」
そして、二人で夕食の準備に取り掛かった。一方、ソファーに残った人はというと。
「都住先輩、いつの間にキッチンへ。エプロンが似合ってますねー。手伝いに行こうかな…」
「私も手伝いたいけど……」「だったらあたしだって……」
「やめとけ、残った女子は誰も料理は出来ないんだろ。行っても邪魔になるだけだ。大人しくしとけ」
「「「うぅ〜〜」」」
翼の言うとうりだった。ルイス、彩音、七海の三人は誰も料理が出来ない。なので、キッチンに行っても邪魔になるのはわかっていた。だから三人はこれから料理ができるように教えてもらおうと思った。
「「「「うまい!」」」」
「お粗末さまです。都住様も手伝っていただいてありがとうございました」
「いえ、佐倉さん料理がうまいので勉強になりました。おいしいですよ」
「ありがとうございます」
こうして夕食が終わった。その後、ロビーでトランプなどで遊んだ。時間は九時になろうとしていた。
「そろそろお風呂ね。先、男子行っていいわよ」
「お、そうか。よし! 行こうぜ、悠斗」
「うん」
「では、ご案内します」
佐倉さんに案内されてお風呂に。翼と二人でお風呂なんて、小学校以来かもしれない。滅多にそんな機会はないからね。
「お、さすがに広いな〜。いい景色じゃん。ほら、見てみ悠斗」
「ホントだね〜。キレイだ…」
先に頭を洗って、体を洗う。そして、湯船につかった。ちょうどいい温度だった。
「なぁ、1週間後にクラスに奴で集まって遊ぼうって話があるんだけどさ、悠斗もどうだ?」
「そうなんだ。1週間後……ダメだ。その日は……」
「なんかあったっけ? ……そうか、墓参りがあるか」
「うん。だからいけないや。ごめん」
「気にすんな。また別の日に誘うから。……悠斗はさ、まだ女子が苦手なのか?」
「……そうだね。わかる?」
「平気そうな顔はしてるけどな。まだ時々、女子には敬語使ってるだろ。……でも、そうか」
「やっぱり、僕には女の子はよくわかんないんだよ」
「でも、俺としては克服してもらいたいな。お前には幸せになってもらいたいし」
「…ありがとう、翼」
「何より、そんなんじゃ彼女も出来ないからな! 俺、先上がるわ。ちゃんと温まれよ」
そう言って、翼は先に上がって行った。一人になって考えろってことなのかもしれない。確かに僕は女の子が苦手で普段はあまり話さないようにしている。そうなってしまったのは僕が過去に女の子と良くないことがあったから。でも、あの時……
「あーー、やっぱわかんないや。もう上がろう」
男子が上がって、今度は女子がお風呂に行った。今、僕と翼は部屋でのんびりしている。明日は何をしようかとか話していた。
「でさ、悠斗は今んところ好きな人とか居ないの?」
「え、なんで突然そんな話になるのさ!」
「んー、なんとなくかな。彩音とかどうなの?」
「彩音は…幼馴染だから」
「じゃあルイスは?」
「ルイスは隣の席だし。転校してきたとき、僕がいろいろ教えただけだよ」
「じゃあ、あの後輩ちゃん。七海ちゃんだっけ?」
「七海さんは僕が卓球を教えてただけだよ。それに、僕に好意を抱いてくれるわけないよ。みんなレベルが高いんだから、僕なんかじゃ釣り合わないよ」
「(こりゃ、重症だな……) だったらさ、三人が告白してきたら悠斗はどうする?」
「そんなのあるわけないよ。だからわかんない」
「でも、ルイスには告白されたんだろう? 十分考えられるんじゃないか?」
「そうだけど……」
「どうなんだ。誰にも言わないから教えてみ」
「翼はどうなのさ! 僕ばっか不公平だよ」
「俺は告白はされてないからな。それに今は部活をしていたい。はい、答えた。悠斗は?」
「僕は……」
「「「わあぁぁぁ」」」
その時、突然お風呂上がりたての三人が滑りこんできた。どうやらドアに寄りかかりすぎて倒れたらしい。
「おい、盗み聞きはよくねーなー。悠斗、この話はまた今度な」
「わかった。…どうしたの、三人とも?」
「「「な、なんでもない! おやすみ!」」」
「? おやすみ…」
それだけ言うと、三人は慌ただしく部屋を出て行った。隣で翼はずっと笑いを必死にこらえていた。