第17話
「おりゃーー!」
そうして、五人で遊ぶことに。水の掛け合いをしたり、ボートを使って少し沖に出てみたり、ビーチバレーをしたりと楽しい時間だった。今は、みんなで砂の城を作っていた。僕は…隣でなぜか、埋められていた。
「ちょっと! そろそろ出してほしいんだけど」
「出してほしいですか? だったら、助けたご褒美がほしいです」
「ご褒美?」
「はい♪ そうですね……出してあげたら、二人っきりでボートに乗ってほしいです」
「ボートに?」
「はい。二人っきりでですよ」
「それなら……」
「「ちょっと待った!」」
「ルイス先輩と彩音先輩…。今いいところなんです」
「そんなのダメに決まってるでしょ! なら、私が出してあげるわ。そしたら、二人っきりでボートなのよね?」
「ルイスもなの? 別にいいけど…」
「ダメーー!! ゆ、悠斗はあたしが出してあげるわよ」
「ちょっと待って下さい! 私が先に都住先輩に言ったんですよ。早いもの勝ちです」
「そんなのは関係ないわ! だから……」
三人で、わーわーと騒ぎ始めてしまった。誰も譲ろうとはしない。……いい加減に出してほしいんだけどな。
「じゃあ、悠斗に選んでもらえばいいんじゃないかしら?」
「む、それはそうですね。それなら文句ありません」
「わかったわ。あたしもそれなら文句ない」
「「「悠斗(先輩)!」」」
「は、はい!」
「「「誰に出してもらいたい(ですか)!?」」」
「……誰でもいいです」
「「「それはダメ(です)」」」
「えぇ…。なら、じゃんけんで決めて下さい」
「「「………」」」
「どうしたの?」
「「「ホント、鈍感……」」」
「?」
なんでしょうね、三人とも僕をかわいそうな子を見るような視線だけど。おかしなこと言ったかな? そして、じゃんけんが行われた。結果は……彩音が勝った。
「やったーー。悠斗、今出してあげるからね」
「うん、ありがとう彩音」
じゃんけんに負けたルイスと七海さんは少し悔しそうな顔で、パラソルの方へ戻って行った。
「よいしょ…、これでいいわね」
「やっと出れた……」
「それじゃあ、ボート乗ろ! ほら、早くーー」
「わかった。ちょっと待ってよーー」
そして、僕と彩音の二人でボートに乗って沖に向かって出た。もちろん、僕が漕いでます。
「うわー、ホントにキレイな海ねーー。あ、悠斗! 魚がいるわよ」
「つ、疲れた…」
「もう疲れたの? だらしないわね、男の子なんだからもっとしっかりしなさいよ」
「これでも、彩音よりはしっかりしてるつもりだけどね……」
「なんですって!」
「あはは、冗談だよ」
「全く……あんたは…しっかりしすぎなのよ……」
「彩音?」
「なんでもないわ。悠斗、見て。砂浜があんなとこに」
「立つとあぶないよ。揺れるから……うわぁ!」
「きゃっ!」
その時、波のせいでボートが大きく揺れた。立っていた彩音がバランスを崩して倒れてくる。
「「………」」
僕の方に倒れてきたため、彩音と密着してしまっている。目の前には彩音の顔があって、お互い気まずいので黙っている。
「…あのー、そろそろ立てる?」
「え、あっ……ご、ごめん」
素早く彩音が立ち上がり、顔を真っ赤にしてすぐに背を向けてしまった。僕の心臓は、まだドキドキしていた。
「大丈夫? ケガとかなかった?」
「大丈夫……。ねぇ、悠斗は今、好きな人とかいる?」
「え? 今はいないけど……。どうしたの、突然」
「あたしはいる。ずっと昔からその人を見てきた。けど、その人はとても強いんだ。なんでも一人で出来て、あたしなんかよりずっとしっかりしてて…。きっとあたしなんて必要ないんだろうなぁ……って思っちゃうの。…ひっく、きっとあたしがいても邪魔になっちゃうって…っ、思っちゃうの」
「彩音……」
「でも、でもね、それでもその人のそばに居たいの!」
「……なら、そう言えばいいんだよ」
「でも……」
「その人は強いかもしれない、その人はなんでも一人で出来るかもしれない。でもさ、それでも一人では生きていけないかもしれない。いくら強い人でも悲しくて、泣いてしまうときがあるかもしれない。その時、彩音がそばにいてくれたら、その人を慰められる」
「悠斗……」
「一人でできることでも、二人ならもっと早くできるかもしれない。なにより、楽しく出来る。一人は楽しくないんだよ……だからさ、彩音が必要ないことは絶対にないよ。きっと、その人も彩音を必要としてくれるはず。……だから、泣かないでよ」
「だ、だって……」
「彩音が笑ってないと僕まで悲しくなっちゃう。彩音はさ、笑顔が似合ってるんだから」
「…うん。ありがとう、悠斗」
目はまだ少し赤いが、泣きやんで笑顔を僕に向けてくれた。それを見て、安心すると同時になぜかドキドキした。