第14話
「行くぞ、悠斗」
「うん、今行くよ」
今僕がいるのは駅近くの大きなデパートだ。もちろん、海に行くための水着を買うために来たのである。僕周りには海に行く五人が集まっていた。あの後、結局みんなで行くことで丸くおさまった。みんな仲良くすればいいのに。
エスカレーターで二階に上がって行く。すると、すぐに水着が見える。この季節になると、二階の売り場のだいたいが水着でいっぱいになる。ほとんど女性用の水着なので、僕は行きずらいのだが翼はなんか平気そうだ。
「とりあえず、男子と女子別行動だな。そっち終わったらメールして。行くぞ、悠斗」
「えぇ!別行動なんですかー。都住先輩も水着選び手伝ってくださいよー」
「そ、それは自分でしてください。行こ、翼」
「あうー、ケチ」
可愛らしく頬を膨らませる七海をほっといて、僕は翼と男性用の水着売り場に歩いて行く。売り場に着くと、そこには色とりどりの水着がいろいろあった。あんまり派手なやつはヤだから、この真っ黒のシンプルなやつにしとくか。
「悠斗ー、決まったー?」
「うん、翼は?」
「俺はこれでいいわ。お前はシンプルだな」
「翼は派手だよ…」
翼の選んだ水着は、暗い青をベースとして、ハイビスカスの絵が書かれたやつだった。
「さて、女チームは終わって…るわけないか」
「こうゆうの長そうだからね…、本屋でも行ってる?」
「そうするか」
そうして、水着を買ったあと僕と翼は本屋で立ち読みをすることに。その前に、なんか新しいやつ出たりしてないか確認に行こうと思い、僕は新刊コーナーへ足を運んだ。
「えーっと、新刊はないか」
それだけ確認して、僕は雑誌のコーナーに行こうと思ったとき、ポケットの中の携帯が震えた。開いてみると、七海さんからのメールだった。
「なんだろう?」
『こんな水着はどうですか?』
「!!」
メールに添付の画像があったので見てみると、そこには白いビキニを着た七海さんが写っていた。七海さんの体は出るところは出て、締まるところは締まっているので破壊力抜群だ。…思わず僕は携帯を閉じてしまった。
「(これ、なんて返信すればいいんだ…)」
僕は雑誌コーナーの真ん中で、携帯を持ったまま固まってしまった。考えた末に『似合ってるよ』とだけ返信した。
女子の水着選びが終わったのはたっぷり1時間以上経ってからだった。今は五人集まって、デパートの中にあるファミレスでお昼を食べている。
「遅い、こっちは1時間以上待ってたんだぞ。なんでこうも長いかな…。なあ、悠斗もなんか言ってやれ。ってお前なんか顔赤くないか?」
「え? そ、そんなことないよ」
「先輩ー、私の水着姿どうでした?」
「「「は?」」」
「えぇーっと、とっても似合ってたよ」
「ホントですかー。嬉しいです。当日はあれ着ていくんで、楽しみにしといてください」
「そ、そう」
「ちょっと! どうゆうことよ!」「い、いつの間に見せたのよ」
「どうしたんですか二人とも。私は自分で写メって都住先輩に見てもらっただけですよー。ほらコレ」
「いつの間に…。さっき悠斗が顔赤かったのはこれのせいじゃないわよね」
「ち、違います」
「違うんですか…」
「あ、いや、七海さんはとても似合ってたよ。だから、その、えーっと…」
「あんたはデレデレすんな! だいたい桐原さんは恥ずかしくないの!?」
「私は別に都住先輩になら大丈夫ですよ。むしろ、褒めてもらえたんで嬉しいです」
「「………」」
七海さんの意外な言葉にルイスと彩音は黙ってしまった。七海さんは言う時は、はっきり言うから時々戸惑ってしまう。
「ははっ、悠斗も罪な男だな。桐原さん、悠斗が卓球部に居た時は悠斗はどんな感じだった?」
「都住先輩は後輩の面倒見がよかったし、三年の先輩とも仲が良かったですから人気者でしたよ。卓球もトップの実力なのでみんなの憧れでした」
「そ、それは買いかぶりすぎだよ。僕は楽しく卓球がしたかっただけで…。それに途中で辞めちゃったしね」
「みんな戻ってきてほしいって言ってましたよ。戻ってきたらすぐに部長にしようってみんな言ってます」
「部長なんて無理だよ! 途中で部を辞めたやつが部長でいいわけないよ」
「それだけみんなが都住先輩を信用してるんですよ。事情はみんなも知ってるし、先生も認めてました」
「すごいな、お前。卓球部に戻ればすぐに部長昇格だぞ」
「………」
「さて、食べ終わったんだし行くわよ!」
「まだ先輩と話が終わってないんですけど。ルイス先輩は大人しくしていてください」
「いいの! ほら、まだ買わなきゃいけないものがあるんだからね」
「そ、そうね。行くわよ」
「ルイス先輩も桜沢先輩も強引です…」
ルイスと彩音のせいで半ば強引にファミレスを出た。そして、五人で海に持って行くのに必要なものを買いに行くことに。といっても、ほとんどをルイスの家が用意してくれるのであまり買うものはなかった。あるとすれば、ゴーグルとか日焼け止めを買う程度だった。