第13話
「はい、そこまで。シャーペン置いて、一番後ろの席の人は答案用紙集めて」
「終わったー」
翼が両手を伸ばしながら言葉をこぼす。最後のテストが終わったところだ。これで明日にはテストが返ってきて、それが終わると夏休みとなる。
「悠斗ー、今回のテストどうだった?」
「大丈夫だと思う。翼が教えてくれたおかげでね」
「ははっ、まぁな。夏休みだけど、お前はどうするの? 俺は部活がたまにある程度であとは暇なんだけど」
「そうだね…。短期のバイトでも探してみようかな。ここで稼げるだけ稼いでおきたい」
「そっか。しかし、一度しかない高二の夏休みをずっとバイトで過ごすというのはつまらなくないか? 海に行くとか、山に行くとか、とりあえずどっか行こうぜ!」
「それもそうなんだけど…。いざ、行くとしてどうやっていくの?」
「うぐ…、それはだな……。」
「ふう。どうしようかな」
「話は聞かせてもらったわ!」
「お、ルイス。なになに、なんかいい案あるの?」
「もちろん! 私の家のプライベートビーチに一泊二日で行くのはどうかしら? 送り迎えもこちらで手配するわ」
「えぇ!? いいの?」
「もちろん。パパに言えばいいだけだし、それに悠斗の頼みだって言えば喜んでOKしてくれるわ」
「おぉ、やるなー悠斗。さすがだぜ」
「でも、ホントにいいの? 突然で困るんじゃない?」
「そんなことはないわ。悠斗には借りがあるから困ったことがあったらなんでも言いなさい、って言われてるし」
「わかった。じゃあ、お願いしようかな」
「OK。今からパパに連絡するわ」
そう言ってルイスは自分の携帯電話をいじり、電話し始めた。しかし、ルイスの家はプライベートビーチまであるのか…。どんだけのお金持ちなんだ…。そんなことを考えていると、ルイスから携帯電話を手渡される。
「パパが悠斗と代わりなさいって」
「もしもし?」
『もしもし、悠斗くんか。話は娘から聞いたよ』
「すいません、突然で」
『はっはっは、かまわないさ。君の頼みは断れないからね。とりあえず、参加する人数を決めて後で教えてもらいたい。もちろん何人でもかまわないよ』
「わかりました」
『それじゃあ、君には娘を任せたよ。それじゃあ』
「はい、ありがとうございます」
それだけ話して通話が終了した。僕はルイスに携帯電話を返す。
「参加する人を決めて、後で教えろって。とりあえず、参加する人は、ルイス、翼、僕…」
「はいはーい。私も行きまーす」「あ、私もでーす」
「彩音、七海さん…っていつの間に!?」
「あたしはさっきから居たわよ」「私は先輩と部活に行こうと思って、さっき来ました!」
「…どうしようか、ルイス?」
「……しょうがないわね。じゃあこの五人で決定ね」
「わーい、私、水着買いに行かないと。都住先輩、一緒に水着買いに行きましょうよ!」
「ちょっと! 何言ってるのよ。それは私と一緒に行くのよ」
「こらー! そんなのダメに決まってるでしょ!」
「……えっと?」
三人でにらみ合い、ぎゃあ、ぎゃあ、騒いでいる。それを見て、翼はおなかを抱えて笑っていた。…笑い事じゃないよ。