第11話
そうして、僕がバイトのない日は卓球部に顔を出しみんなの練習を見た。と言っても僕はバイトを週五で入れてあるため、頻繁に行けるわけではないが…。それでも任されたんだし、行ける日は毎日行った。今日もバイトがないし行こうかと思っていると翼がやってきた。
「悠斗、そろそろテストだし、卓球部は出なくていいんじゃないか?」
「そうか、もうテストか…。ってことは部活はないじゃん」
「そうゆうこと。俺の家で一緒に勉強しないか?教えてやってもいいし。その代り……」
「はいはい。夕食は僕が作ればいいんでしょ。でも教えてもらわないとまずいかもしれないからお願いしようかな」
「よし!じゃあ行くか。悠斗が作る飯はうまいからなー。今日はチャーハン作ってくれよ。材料は家にあるやつ使っていいから」
「いいよ。じゃあ行こ」
「「ちょっと待った!」」
誰かに呼びかけられて振り返るとルイスと彩音の二人が帰る準備万端の状態で立っていた。とても真剣な目をしてらっしゃる。
「「私も行くわ!」」
「? 別に俺はいいけど。悠斗は?」
「僕も別にいいよ。けど、ルイスは勉強できるんじゃないの?」
「まぁね。だから、私が悠斗に勉強を教えてあげてもいいわよ」
「ちょっと、ルイス!あ、あたしが悠斗に教えるわよ!」
「彩音は僕より出来るわけじゃないでしょ…。あ、でも、夕食の準備は誰かに手伝ってもらいたいかも。いつもは二人分だけど今日は四人だから少し大変かもしれないし」
「「私が手伝うわ!」」
「え?…え?」
「ははっ、モテモテだな悠斗」
「??」
翼が言うことがよくわからない。だいたい、僕がモテるわけがないのに。ルイスと彩音は隣でぎゃあ、ぎゃあ騒いでいた。騒がしいまま翼の家まで移動した。家の人は誰もいないのか、とても静かだった。
「さて、始めるか。いつもどうり、わからないところがあったら言ってくれ」
「わかった。夕食は七時くらいでいい?」
「「「いいよー」」」
「じゃあ、始めよう」
みんなが教科書とノートを開いて勉強を始めた。さて、僕は数学でもやろうかな。いつもバイトだからここで少しは挽回しておかないと。そう思い、教科書とノートを開く。
「うーん、ここはどうやればいいんだ?」
「どこがわからないの?」
そう言って、ルイスがすぐ隣まで寄って来る。うわぁ、すぐ隣にルイスの顔がある。
「え…と、ここなんだけど…」
「そこはこの公式を当てはめて計算すればいいわ。…顔が赤いけど、大丈夫?」
「あぁ!こ、この公式ね。ありがとう」
「ちょっとルイス!近づき過ぎじゃない!?悠斗もデレデレするなーー!」
「あら、そうなの?私は悠斗なら別にいいわよ」
「こらー!ルイスも変なこと言うなー!悠斗はそろそろ夕食の準備しなさいよ!」
「も、もうそんな時間?…うわ、ホントだ。じゃあ準備してくる。翼、手伝ってよ」
「「だから私が!」」
「食器の位置とかは翼がよくわかってるでしょ。すぐにできるから待ってて。行こう、翼」
「わかった」
そうして、僕は翼と台所に向かった。今日は何にしようかなー。そういえば、翼以外の人に僕の料理を作るのは初めてだな…。
その頃、翼の部屋に置いて行かれた二人はというと、いろいろなことを話し合っていた。主に悠斗のことを。
「悠斗が作った料理かー。そういえば、彩音は料理とかするの?」
「……そういうルイスはどうなのよ」
「その反応はできないのね…。私もできないけど。男の人に料理してもらうのは、女として少し複雑ね。彩音は悠斗の料理は食べたことあるの?」
「ないわ。食べたことあるのは翼くらいじゃないかしら?」
「それじゃあ、楽しみね」
「そうね」
二人とも楽しみに夕食の時間を待った。そして、二人とも悠斗に料理を教えてもらおうと考えたのであった。