常時一人①
残酷で美しい。なんて呼ばれるこの世界で、大切な者は何だと思う?
夢、希望、友情、愛。
暴力、絶望、不正、悪。
色々あるかもしれないけど、今だったらはっきり言える。
「この世全ては、金である」と。
***
「はあ~」
登校したばかりだというのに、俺は今日何度目かの溜息をこぼす。
溜息の数だけ幸せは逃げるというけれど、この状況では逃げる幸せもないだろう。
ひょんな事から、近隣でも有名な学園から招待状が届き入学。
たまたま運良く、入学後のクラスを決める振り分け試験で、教官に勝ってしまいAクラス入り。
大した実力もコミュニケーション能力もない俺は、Aクラスに居る事を疑問視され、結果ぼっちに。
しかも学園では部活に入る事が必須らしく、なんの取り柄もない俺は憂鬱。
「はあ~」
考えれば考える程、虚しくなってくる。
それもこれも全部この贈り物のせいだ。
『人のせいにするなよ』
『うるさいな。この状況はお前のせいだろ』
『違うな。全部一人のせいだろ。一人のタイミングの悪さが問題さ。この世全ては運であるってね』
『うるさいな、ビートは』
俺こと常時 一人は脳内での喧嘩にも疲れ押し黙る。
喧嘩とは言っても別に俺が1人2役やった訳ではなく、贈り物の精霊だと主張する謎生物と喧嘩していたのである。名前はアルビトロというらしいが、俺はビートと呼んでいる。
贈り物とは、魔法のようなものだ。
始まりはいつだったか、ある時から人々は贈り物と呼ばれる異能力が使えるようになった。
今では世界中ほぼ全ての人間が行使できるが、その能力は様々で、イメージしやすいもので言うと、炎や氷を扱う能力から、学校給食を均等に配分する能力など、戦闘向きや日常向き色々なのだ。
そして優秀な贈り物を持つ者は当然良い職につける。
そんな優秀な人材を多く輩出している学園こそ、今俺が居るここなのである。
「はあ~」
改めて状況を整理すると、夢も希望もありはしない。
全く、この世全ては残酷だな。なんてニヒルに悲観していると、始業のチャイムが鳴った。
また退屈でつまらない時間が始まると思うと、憂鬱さに押しつぶされそうだった。
こんにちは、ソムクです。
こんな拙い文章を読んで下さりありがとうございます。
「紅い月」を書こうと思っていたら、ふと思いついたので、勢いで投稿してしまいました。
それでは、こんな文章を読んでくれたあなたに最大の感謝を。