鉱石精霊ゴルド達 対 土の精霊ノーム
「ゴルド様、行きます! 『深海の邪神』!」
フーリエの前に大きな触手が一本現れました。前回はフーリエの大量の血を代償にして複数の触手が出ましたが、今回は魔力だけなので一本なのでしょうか。
「やああああ!」
大きな触手は勢いをつけて大ノームを叩きつけます。しかし大ノームはその触手を手で押さえつけ、攻撃を防ぎました。
「んじぇ! この禍々しい魔力はなんぼ! でもそう簡単にはいかないんじぇ!」
大ノームは短い脚を浮かせ、強くその場を踏みました。すると所々土が光り始めます。
「『土槍』!」
いえ、あれはただの土槍ではありません!
「『プル・グラビティ』!」
「わっ!」
フーリエを強く引っ張ります。驚くフーリエですが、今は補足を説明する時間もありません。
フーリエを引っ張ったと同時に、一本の触手には次々と『土槍』が刺さり始めました。
「なっ、触手が!」
「よく避けたんじぇ。だがドンドン行くんば!」
大きな触手は数十個の『土槍』に串刺し状態です。そしてさっきまでフーリエが立っていた場所も複数の『土槍』がありました。
「この!『空腹の小悪魔』!」
フーリエは次々と悪魔を召喚します。
四対の小さな小悪魔が召喚されました。いつみても禍々しいというか、あまり見たくは無い姿というか。
『ケケッ!』
『ガア!』
ぱあん!
空腹の小悪魔はその場で破裂しました。その……とても気持ちが悪いです!
「え! 何でですか!」
「当然です! 魔力があれば吸い尽くす悪魔なんて召喚したら、この場の魔力だけで許容量は超えますよ!」
シャルドネはフーリエのおかげで助かりました。ですが『空腹の小悪魔』は魔力を放出する方法が無いのでしょう。
ん?
ちょっと待ってください。
フーリエは、大丈夫なんですか?
「……フーリエは魔力放出をいつしているのですか?」
「え、していませんよ? むしろ……足りないくらいです」
お腹が鳴る音が聞こえました。
……これです!
「何をごちゃごちゃと話しているんじぇ! 『土剣』!」
土で作られた剣が生成され、大ノームの周囲でぐるぐる回っています。ボクも作ろうと思えば作れますが、やはり鉄の剣の方が強いのですよね。
「フーリエ! あの間を抜けます! 大ノームの魔力を『食らいつくして』ください!」
「え! ど、どうやって……」
フーリエが話し終える前にボクはカバンから本を取り出します。
「『風爪』!」
瞬時に発動された精霊術。しかも属性は風。それを見た大ノームは驚いています。
「んじぇ! どうして鉱石精霊が風を!」
答える暇と義理はありません。フーリエを抱えて『風爪』に乗ります。本当は攻撃魔術なのに完全に乗り物となってしまいました。
「近寄らせないんじぇ! 『土剣』!」
さらに数本、土の剣が生成され、宙で回転しています。それらがボク達に襲ってきます。
「『風爪』!『風爪』!」
空中でも『風爪』を使い、急な角度変更にも対応します。そしてついに。
「んじぇ!」
「フーリエ!」
「はい、では……いただきますです!」
フーリエが大ノームに触れた瞬間、大きな叫びが周囲を揺らしました。
「んじぇええええ!」
「やああああああ!」
神術『魔力探知』で周囲の魔力を見ると一目瞭然です。大ノームから感じていた大きな魔力が急激に減少しています。
「んじぇえええ! やめるんぼ! んああああ!」
「たああああああ!」
嫌がるノームに対し容赦の無いフーリエ。やはり悪魔ですね。
魔力を吸われている所為か、大ノームは徐々に小さくなっていきました。
というかこれは……。
「ふ、フーリエ! 止めてください! 止めー!」
「ああああ、あ、っは!」
夢中だったのか、ボクの声でようやく我に返りました。
「はあ、はあ、よくもやってくれたんぼ! お返し……んじぇ!」
先程まで十数倍はあった大きな体は、ボク達の半分。いや、膝くらいまでの大きさになっていました。
「んじぇー! こ、これはああ!」
大ノーム(?)も驚き、自身の体を見ます。
「さあ、降参しますか? しないのであれば、再度フーリエに食べてもらいます」
「んじぇ! そ、それは……」
そーっとフーリエを見る大ノーム。
「……ゴクリ」
「降参んぼ! オイラの負けんぼ!」
その言葉を聞いた瞬間、ボクとフーリエはその場で膝をつきました。正直悪魔を抱えて戦闘なんて可能なら避けたいですね。
「か、勝ちました」
そう言葉が漏れた瞬間でした。ボクの後ろから声がしました。
「何を言っているのよ」
シャルドネの声です。そうだ、そういえばノーム百体を任せているのでした!
ずっとフーリエはこちらで戦っていましたし、シャルドネは一人で戦ってたのです。休んでいられません! 援護を。
「私の勝ちよ」
かすり傷だらけのシャルドネが立っていました。
彼女の後ろにはおよそ百体のノームが積み重ねてある山がありました。
「……ええ、シャルドネの勝ちです。久々に貴女の強さを実感した気がしますよ」
右手を握りボクに向かって突出し、そしてその場で倒れました。
相当無理をしたみたいですね。
久々にシャルドネさんの強さが描画外で描かれたと思います。ずるくは無いです……ずるくは。




