同族の魔力
「カンパネ様に……会ったのですか?」
日が昇り、朝食の時間。シャルドネが一人寂しく果物を食べている中、「何か話なさい……こう、辛いわ」と渾身のお願いをされたので、夢の出来事をお話ししました。
「『カンパネ』。そう名乗りました」
「それってこの世界の神よね」
「気になっていたのですが、その『カンパネ』は具体的に何者なんですか?」
ボクの質問に、真顔でシャルドネは答えました。
「知らないわよ」
「期待させないでくださいよ」
え、この世界の神なんですよね。こう、何か偉業をなしたとか大地を作ったとか無いのですか?
「私も小さい頃に母さんやセイラから名前を聞いただけで、特に考えていなかったわね。結婚するとき、旅に出るとき、人が死んだ時に祈りを捧げる何か……それくらいかしら」
「フーリエは何か知らないのですか?」
「そうですね……世界を作ったのはカンパネ様という記録はありません。ただ、この世界を見守っているのはカンパネ様という記録はあります」
「死んだときに祈りを捧げる相手、そして見守っている神。色々と謎は深まるばかりですね」
冥界が無い世界なので、祈りを捧げたところで意味は無いのでは? とも思えますし。
「そういえばフーリエは以前、『空腹の小悪魔』を召喚しましたよね?」
「はい!」
「それって、普段はどこにいる生物なんですか?」
「え、どこと言いましても……」
死神グリムはこの世界に召喚された後、帰ることが出来ずに人の魂を奪って生きていました。
もし『空腹の小悪魔』を放置したら、どうなるのでしょう?
「異世界……そうとしか言えません」
「え、となるとフーリエって転移魔術が使えるのですか?」
「残念ですがそれはできません。悪魔召喚は『一方通行の強制召喚』で、こちらからあっちの世界には行けないのです」
「応用は効かないのですね」
悪魔召喚に興味はありません。ですが、転移魔術には興味があります。だって野宿をする必要が無いのです。
「つまり、フーリエはあの『くうふくのこあくま』を召喚して、もし生き残っていても、『こうきゅう』で倒してたのね(もぐもぐ)」
ぐさっ!
何やらそんな音がフーリエから聞こえた気がします。シャルドネさん、少しは優しい表現にできないのですかい?
「や、闇の魔術は危険なのです。時には非情にならないといけないのです。分かって欲しいのです!」
最近のフーリエは涙脆くなった気がします。あまりいじめないであげてくださいよ。
とりあえず頭をポンポンしました。
シャルドネの朝食も終え、引き続き森の地の奥へと進みます。
そして、周囲の魔力に変化がありました。
「おや、これは……」
「どうかしましたか?」
「『魔力探知』……高濃度の魔力ですね。地面から感じます」
「つまり、目的地は近いようね」
エルフの集落と同じように認識阻害を使われていたらどうしようと思いましたが、それは大丈夫とエルヴィンから聞いていました。
周囲を見ると、少し木が少ないかなとも思えます。
「……なるほど」
「ゴルド様、どうしました?」
「シャルドネ、フーリエ、今回はボクにやらせてもらっても良いですか?」
「まあゴルドがそういうなら」
「何の話ですか?」
ボクがてくてくと前へ進みます。フーリエがボクについて来ようとしますが、シャルドネが手を掴み、その場で待機と命じました。
「まあ、よく分からないけど、これは『人間』が関わってはいけないと思うわ」
「ワタチは悪魔ですけど」
「ふふ、そうね。じゃあ訂正するわ」
そしてシャルドネはボクを見て言いました。
「これは、精霊同士の、言ってしまえば同族同士の挨拶かしら?」
ばあああああん!
ボクの前後左右から、丸い物体が地面から飛び出してきました。
白くて丸い生き物。今まで出会ったモノは全て人間の形でしたが、これはもう別な生物です。
クルクルと回る球体は、地面に着くと、少しだけ変形して四足歩行の生き物になりました。
「同族の気配なんもー!」
「面白いやつだんなー!」
「ご挨拶! ご挨拶んじぇ!」
表現が難しい形をしていますね。丸い球体が二つ繋がっていて、下の球体に手足がついています。まん丸の目がこっちを見ていて、全員が別々の色の三角帽子を被っています。
これ、絶対シャルドネは『可愛い』というやつですね。
振り向くとシャルドネは苦い顔をしていました。
「……ああ、可愛いよりも『意味不明』が勝ちましたか。ボクが人型で良かったですね。初対面は最悪でしたが」
「何か言ってるんも!」
「独り言かんなー!」
「準備は良いんじぇー?」
話す言葉も独特ですね。
前後左右の白い物体のうち、正面の物体だけ少し大きいです。多分この中の頭でしょう。
「言葉よりも、実力を先に見ますか?」
ボクは言葉を発しました。
そして前方の球体は答えました。
「それが我ら『原初の神から生まれし精霊ノーム』の風習んじぇ!」
「では、行きますよ!」




