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草のち森

 マリーがいなくなり、次は何をしようかと悩んでいた時でした。


「ゴルド様、入っても良いでしょうか?」


 ドアの外からフーリエの声が聞こえてきました。

 ちなみにボクは今、タプルの家にいます。理由は、フーリエを泣き止ませるのに一日はかかるという事で、シャルドネがつきっきりで慰めるからゴルドは野宿をしてくれって言われました。


 いや、精霊を人間と平等に扱うその心は別に良いですが、野宿を勧めるのってどうなのでしょう。

 そして、タプルは若干……いえ、もの凄く気を遣ってボクを泊めてくれました。


「どうしました?」

「失礼します。エルヴィン様から連絡が来たのです」

「エルフの集落の代表でしたっけ? どうしてまた急に」

「連絡……と言いますか、手紙です。ゴルド様宛になので内容は読んでいません」

「そうでしたか。ありがとうございます」

「ではワタチはこの辺で」


 ……目の周りが凄く赤いですね。マリーとの別れがそんなに寂しかったのでしょう。今でも少し元気が無いですね。


「『砂壁』」

「え、えええ!」


 砂壁を生成して、フーリエの身動きを封じました。

 家の中で砂壁を生成する際は、砂が極端に少ないため、ボクの魔力を使って生成する必要があり、実は大変なのです。本当は外で使いたいのですよ。


「ご、ゴルド様!」

「いえ、このままだと帰ってしまいそうだったので」

「でも、手紙を読むのにワタチがいるのは邪魔になるのでは!」

「気にしません。宛先がボクでも、最初はフーリエに届きました。読まれて困る内容ならボクに何かしらの方法を使って飛ばすでしょう」

「それはそうですが……どうしてワタチを『砂壁』で?」


「……『神々しい頭痛と口内炎の治療』の仕返しがまだ終わってないなーと思いまして」


 ☆


「入るわよー。って、え……何でフーリエはまた泣いて床に転がってるのよ!」

「いえ、じゃれ合ってただけです」

「それにしたって……やり過ぎじゃない? どうせまた『くすぐりの刑』でもしたんじゃないの?」


 正解なのが悔しいです。もう少し種類を増やしますか。


「シャルドネ様。どうかゴルド様を責めないでください。きっと元気の無いワタチの顔を見て、気を遣ってくださったのです」

「へー」


 その目は何ですか! 気を……そうした事にしてください。


「こほん。ちょうど良いです。エルヴィンから手紙が届いたので、それを読むところでした」

「そうなの?」


 封を切り、中の紙を読むと、こんな事が書いてありました。


『ゴルド殿。先の件、フーリエ殿から連絡を受けました。様々な事情がある故、詳しくは書きませんが、まずはこの一帯を守っていただき感謝します。これでガランの住まう地域から何かしらの襲撃が来ることは無いと思われます。また、この度エルフの集落の修復が終わったことをお伝えします。先日お伝えしきれなかった事や、その他お話したい事がありますので、是非足をお運びください。なお、エルフの集落に来る際はシャルドネ殿とゴルド殿とフーリエ殿で来るようお願い致します』



「長い!」


 ちなみにここまでボクが息を吸わずに一回で読み上げたことを褒めて欲しいくらいですね。


「凄いですゴルド様。あの長い文章を噛まずに一回で読むなんて」


 そんなところで尊敬しないで欲しいですね!


「そんなわけで、次の目的地が決まりましたね。と言っても一度行った場所ではありますが」

「そうね。エルフの集落……と言っても、地域で言うなら『森の地』よ。私達が行った場所はほんの最初しか足を踏み入れてないはずね」

「そうなのですか?」


 再度シャルドネが地図を取り出して、現在地に指を起きました。


「ここが今の草の地、そしてここ一帯が森の地で、エルフの集落はこの辺よね?」


 フーリエは縦に首を振りました。


「では次の目的地は森の地ですね」


 そういった瞬間、マリーの言葉を少し思い出しました。そして、ボクは机に置かれている本に目を向けます。


「『ネクロノミコン』だけでは勝てない……ですか」


 きっとマリーは他にも何かを知っているのでしょうが、それは教えられないのでしょう。

 とにかく今はこれをきっかけに森の地に行くとしましょう。


 ☆


「シャルドネ。いつでも帰ってきて良いのだからね」

「ええ、ありがとうセイラ」


 そう言ってセイラとシャルドネは握手をしました。人間の愛情表現や挨拶はふれあう事が多いなーと最近思いました。

 そういう意味ではもしかしてフーリエの頭を撫でるのは、良い表現なのか悪い表現なのか分からないです。無意識でやってしまったので、もしこれが凄く無礼な行為なら謝っておきましょう。


「ゴルド」


 と、そんな事を考えていたら、テツヤが話しかけてきました。


「テツヤ、お世話になりました」

「いや、こっちこそ。それに、シャルドネをありがとう」

「テツヤが言う言葉では無いと思いますが……とりあえず受け取っておきます」

「ああ。それと一つ教えておくが、今のシャルドネは心が戻りつつある。つまり、本来の力が出せないと思うんだ」


 鉱石のグローブを両手で持ち上げた時点でそれは気がついていました。


「だが、そこら辺の盗賊くらいなら倒せる力はある。もし、今後ガランの様な強敵が出たら、頼む」

「わかりました。が、一つ言っておくと、ガランの様な人間がポンポンいたら、ボクはもう全てを諦めて帰りますよ」

「それもそうだな」


 そしてテツヤは右手を出してきました。握手ですね。


「ありがとう。俺はこの世界で生きることを決めた。ゴルドもこの先どうするか、もし決めたら教えてくれ」

「……ん? 何の話ですか?」


「え、シャルドネとけっこ『てええええい!』んをおおああああ!」


 凄まじい勢いの拳が飛んできました。


「な、なるほど、盗賊を倒せる力というのは嘘ではなさそうですね」

「師匠! 殴りますよ!」

「殴ってから言うなよ……がくっ」

「て、テツヤさん!」


 セイラの茶番を入れつつ、その他の皆に挨拶を軽く交わして、最後はタプルです。


「ここはシャルドネの故郷とともに、貴方の安らぎの地と思ってください。いつでも来てください」

「わかりました。その時はまた泊めてください」


「え、次はシャルドネの婿とし『てえええい!』『土壁』て来るの……うむ、冗談は止めておこう」


 さすがにタプルへシャルドネの拳は軽傷で終わりません。反射的にタプルを守りました。


「良い村ですね」

「何がよ! もう、行くわよ!」

「はい」


 そう言って、ボクとシャルドネとフーリエは村を出て、森の地へと向かいました。


 辛い戦いもありましたが、村の雰囲気は悪くは無かったですね。

 草の地編はこれで終わりとなります。シャルドネの故郷と両親の話ということで、前半はドタバタ。後半は比較的重め。そして個人的にはバトル部分に力を入れてみました。いろいろな意味で挑戦的な章になり、文字数もそれなりに多くなりましたが、かなり引いていったので、どこか矛盾が生まれてないか不安ではありますね。

 さて、次はちょっとだけ草の地編で出ていたエルフの集落がある森の地編です。フーリエは草の地担当ですが、エルフの集落だけ管轄に入っているなど、その辺を触れればと思います。

 -草の地編終わりということでご挨拶-

 楽しんでいただけたら幸いです! また、楽しいと思っていただけたら是非ブックマークをお願いします。そしてメッセージやご意見を送ってくださる読者様、この場を借りてお礼を申し上げます。次話も楽しんで書いていきますね!

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