[手合わせ] 鉱石精霊ゴルド 対 森の精霊エヴァ
「えっと、ゴルド、全然内容がわからないのだけれど」
当然です。シャルドネは武術の使い手であり、魔術の魔の字も知りません。
「精霊が放つ精霊術には決まりがあるのです。鉱石精霊のボクは鉱石に関係する土や石の属性しか使えません」
「でもゴルドって火を放ったり『こうきゅう』? を放ったわよね?」
「あれは魔術と聖術です。武器を使った武術と素手の武術のように、全くの別物なのです」
「な、なるほど」
シャルドネなりに理解したという反応をくれました。
それにしても、個人的にこの件は少し落ち込みましたよ。
精霊であるボクが精霊術について精霊に指摘されてしまったのですから。
この世界で同業者と出会い、変に上から目線で話しを持ちかけたことに少し反省です。若いエルフなんて言葉を少し前に使いましたけど、ボクもまだまだですね。
「ふむ、察するにゴルド殿はこことは違う場所から来たのですか?」
「……エルフは『心情読破』を使うのが趣味なのですか?」
「あ、いえ、森で狩りをする際に便利なもので、癖のようなものです」
聞き覚えのある単語ですね。エルフの集団という名を改め、マリーと愉快な仲間たちって改名しても良いと思います。提案ですよ。
「誰しもわからないことはあります。ゴルド殿はたまたま自分以外の精霊とあまり関わらなかっただけです。気にしないで良いと思いますよ?」
「ありがとうございます」
「そこで、一つ提案があります」
「提案ですか?」
☆
焼け野原。
広い場所。
ボクの正面にはこの集落で一番強いと言われている代表の息子のエヴァ。
そして少し離れてエルヴィンが立っています。
「伝授はできませんが、身をもって受けることで何か手がかりを得る事は可能でしょう」
「どうしてこうなるんですか!」
最近手合せが少ないので、一安心していたのですが!
「父上から聞きました。ゴルド殿は精霊術について学びたいと。恐れながら私、エヴァが担当させていただきます」
……うわー。すっごい青年が出てきましたよ。
きれいな金髪に鋭い目。細い体にそれなりに鍛えられた肉体。そして少し高めの身長。そして何故かわかりませんがキラキラした物体が周囲に浮いているように見えます。
これはイケメンってやつですね。
「よ、宜しくお願いします」
「はい! では、参ります!」
声もすごい綺麗です。なんかこう、色々ずるいですね。いや、別に羨ましいとか妬ましいとかそういう感情は精霊には無いんですけどね! 何かね!
「へえー、カッコいいわね」
「息子のエヴァは集落一の美青年と呼ばれている自慢の息子です」
全然羨ましくないですからね!!
「『砂壁』!」
「うおっと!」
ボクの生成した砂壁を優雅に避けるエヴァ。無自覚なんでしょうけど、なんかこう……いらっと来ます!
「危ないですね、これが鉱石精霊の精霊術ですか!」
「ええ、憎悪と憎しみが生んだ恐怖の結晶です」
「よくわかりませんが、恐ろしい。あれに入ったら生き埋めになるのですね」
「それよりも恐ろしい事が訪れます」
「……ゴルド、まるで悪役よ?」
シャルドネの指摘はごもっともです。少し冷静になりましょう。
「それではこっちの精霊術をお見せしましょう。『風爪』!」
「む!」
三つの尖った魔力の塊がボクを襲ってきました。
「『土壁』! 風ですか、てっきりエルフは草木に関するものだと思ってました」
「油断をしていると足元を取りますよ!」
「おっと!」
再度『風爪』がボクを襲ってきます。
何とか『土壁』で防いでいますが、回り込まれて襲ってくる『風爪』もあるので、厄介です。
「ゴルドさん。時に風というものをそれほど感じ取ったことは無い様子ですね?」
「どういうことですか?」
旅をしていると風は絶対に関わります。強い日はできる限り行動を控えたいなどの感情を抱く程度ですが……。
強い日……強い……強く!
「これはっ!」
「今気づいても遅いです! では行きますよ! 秘術『大旋風』!」
小さい風がいくつも同じ個所を通る事で、そこには風の道が作られていました。それが徐々に大きくなり、いつの間にかボクを中心に小さな竜巻がつくられていました。
「み、身動きが! とりあえず『アメジスト』!」
体周囲にアメジストを浮かべ、魔力を散布させます。マリーの『火球』同様に魔力を周囲に飛ばせれば。
「無駄ですよ。なんせここまでくれば精霊術ではなく、自然の力となります。魔術での防御は防げません!」
大きな竜巻に体の自由が奪われ、油断をすると飛ばされそうですね。
ですが、今気がつきました。
相手も鉱石精霊を相手にするのは、初めてなのでは? と。
「さあ、この自然の生み出した竜巻の中には砂や木くずなどが存在します! それらの攻撃に耐えれたら敗北を認めましょう!」
そう、ボクは鉱石の精霊で、鉱石の精霊術を使えます。でしたら、答えは一つ。
「鉱石の精霊術で対抗すれば良いだけです!」
周囲に舞い散った砂をボクの右手のみに集め、それを一つの塊にしていきます。
竜巻の風圧だけは耐えるしかありませんが、それらを守るためのアメジスト。今回ばかりは魔力の防御壁では無く、ただの風よけとして使わせて貰います。
そして。
「……立っている……ですと?」
ボクは竜巻の中心で立っていました。
荒れ狂う風圧は確かに辛かったと言えます。が、一つ言わせて貰います。
「今までの相手が強すぎたので、これくらいは簡単に耐えれます」
そう。
シャルドネの不意打ちの突っ込み。
マリーのいつの間にか来る『心情読破』。
ミリアムやフーリエの平均以上の強さ。
それと比べると、今回のエヴァの攻撃はこう……。
「物足りないのです! 『砂壁』!」
「ぬああああ!」
「捉えました! ではやらせて貰います! 『くすぐりの刑』!」
「があああああ! なんだこれは……ぎゃ、ぎゃははああああああ!」
苦しむエヴァ。それを見て呆れるシャルドネと心配そうに見るエルヴィン。やがてエルヴィンは宣言しました。
「鉱石精霊の勝利とする!」




