鉱石精霊としての自覚
「フーリエ殿、申し訳ない」
「いえ、まさか代表含め大人のほとんどが怪我をしていたなんて」
ボクの魔力量に驚き、警戒しつつも怪我人が収容されている場所へ案内され、治癒魔術を施しました。
収容場所は地下にあり、中には保存食や水などが少しだけ備蓄されてありました。
フーリエと話している人はどうやら集落の代表みたいですね。他のエルフより少し老いているように見えます。エルフ特有の尖った耳と金色の髪。シャルドネの短髪とは異なって長い金髪です。
「フーリエ殿に連絡を飛ばしたすぐだった。大男と黒い服の男が来て、ここを襲ったんだ」
「え、大男と黒い服の男?」
心当たりがある特徴ですね。それもボク達は最近会ったばかりです。
「その話しを詳しく聞かせてくれないかしら?」
「君は……?」
「私はシャルドネ、冒険家よ。こっちは錬金術師……いや、ここでは精霊って言った方が良いかしら?」
「ああ、ゴルド殿だな。そしてシャルドネ殿。すまなかった、若い連中も悪気はなかったんだ」
「いえ、気にしてません」
いや、実際は気にしてますけどね。森の精霊とか言われているなら同業者くらい気が付いて欲しいものです。
「改めて私はエルヴィンだ。この集落の代表を担っている」
傷が癒えていない為、座ったままだが首だけを下げました。つられてこちらも頭を下げます。
「それで、大男と黒い服というのは?」
「ああ、昨日の夕方、突如襲ってきたんだ。大きな剣を持った金髪の大男と、隣の黒い服の男が襲ってきてな」
「それで、歯が立たなかったのね」
「そうだ。相手は妙な術を使ってきたんだ」
「妙な……」
まさか、ボクも知らない術を使って……。
「相手の魔力を見た瞬間、全員が腰痛に襲われたんだ」
「「……」」
シャルドネが聞いた瞬間、斜め下を見ました。
「あれは呪いだ……あんな激痛は初めてだった。全員が激痛で襲われ動きが鈍くなった瞬間、大男の大きな剣の一振りで木はなぎ倒され、黒服の男からは黒い火が……シャルドネ殿? 顔色が悪いのですが大丈夫ですか?」
「ええダイジョウブ。その、なんというか、災難だったわね」
笑いごとじゃないんですよ。そもそもその大男ってあなたの父じゃないですか。確かにボクの腰痛事件の所為で腰痛という単語に反応してしまうのは仕方が無いですが。
「というか腰痛ですか」
「はい……腰痛だった」
「ゴルド……真剣な声でその単語を簡単に出さないで。拳が飛ぶわ」
「……気を付けます。とはいえ、どうやら悪魔については手がかりを掴んだといった感じでしょう」
「何か心当たりでも?」
「別件でその黒服の男とはかかわったことがあるので。ボクも腰……呪いに悩まされたので」
一瞬シャルドネの拳が見えました。というか集落一つ焼けているので、別に腰痛の単語一つや二つ出しても良いじゃないですか!
「そうでしたか。ゴルド殿も腰痛に……」
「うあぶない!」
反射的にエルヴィンへ拳が飛びそうになるシャルドネ。どれだけ腰痛という単語が嫌いなんですか。
「どうしましたかシャルドネ殿! まさか若い連中が何かしましたか!」
「違うわ! こっちの事情よ! それよりこんな焼けてしまっては、ゴルドの目的も達成できないんじゃないかしら?」
「ゴルド殿の目的というと?」
そしてボクはようやくこの村に来た本当の目的を話し出しました。
「魔術の書物や伝承などを聞きに来ました」
「なぜここで?」
「エルフは人に近いとはいえ精霊です。その長寿から魔術……いや、精霊術や神術に関して何か情報があればと思ってきました」
「うむ? 神術ならまだしも、精霊術?」
「はい、とある事情からボクは大きな敵と戦う事になりました。それ故に色々な術を取得しないといけなくなったのです」
頂点の神は何を使うかわからない。よって、手数を増やすしか今のところ考えてはいないのです。エルフの用いる術を取得できれば、戦術の一つとして覚えていて損は無いでしょう。
「うむ……理解はした。が、ゴルド殿の探している答えは半分、いや、半分以上は出せないな」
「それは全て焼けたからですか?」
「それもあるが……」
そして、エルヴィンはゆっくりと話し、ボクはあきらめるしかなかった……というよりも、わかりきっていたことを改めて言われた気分になりました。
「私たちは森の精霊。 私たちの精霊術に関する書物は確かにあったが、ゴルド殿は使えぬでしょ?」
ボクは鉱石の精霊で、エルフは森の精霊。そもそもボクが教えてもらったところで、使えないという事を思い出しました。
※本作品は腰痛で悩んでいる人を馬鹿にしてはおりません。むしろ作者も腰痛に困っています。腰痛によく聞くマッサージがあったら大募集です。




