草の地の異変
タプルの家には村の人が集会をするために、大きめの部屋が一つあります。
そこでは打ち合わせなどが時々行われるそうです。
今日はそこを借りて、簡単な打ち合わせです。
「改めましてワタチはフーリエです。ミリアムの妹で、雪の地から派遣された魔術師の一人です」
ぺこりと頭を下げて挨拶をするフーリエ。とりあえずボクが最初に質問を投げかけます。
「どうしてフーリエは怪我を負っていたのですか? 魔獣と言っていましたが」
「はい、手紙を受け取った後、薬草の収集も兼ねて外に出ていたのです。森でしたらシャルドネ様やゴルド様と出会うと予想していたのでしたが、魔獣と遭遇したので逃げていました」
悪魔の薬の原因であるミッドの母親に入っていた悪魔は消滅したはずです。
その時点で悪魔の薬の中にある悪魔の魔力も消えたはずです。フーリエが襲ってきたのが猛獣ではなく、魔獣という単語を用いているのが気になります。
「魔獣というのは?」
「はい、闇魔術より召喚された異世界の生き物。そしてこの世界で生きるには人間の魔力を食べるしか方法はありません」
冥界が無いと言う部分も含め、この世界にとって悪魔や死神にとっては最悪な環境なのでしょう。
「そもそも、闇魔術から召喚だったり、魔獣について少し詳しくないですか?」
ボクのちょっとした問いに、フーリエは少し照れながら答えました。
「ワタチの専門分野が闇魔術なんです」
すげー。こんなカミングアウトあるんですね。
「え、ちょ、ゴルド、それって大丈夫なの?」
普通の人が聞いたらそう聞こえますよね。こういうとき、色々知っている精霊という立場はとても便利です。
「シャルドネは、闇魔術に対抗する方法を知っていますか?」
「え、えっと、聖術が確か有効なんだっけ?」
「では、聖術を使って対抗できる方法は、どのように知ったでしょう」
「……ああ」
納得してくれたみたいです。
実のところ、闇魔術という響きは確かに悪いですが、大事なのは使い方なのです。
リスクの高い悪魔との契約や、命を削って力を得る方法などを使用しない限りは、知識として持っていても問題ありません。
もちろん例外はありますが。
「ゴルド様は理解ある方だったのですね」
凄くほっとしている感じです。
「ええ、でもどうして闇魔術を?」
「姉、ミリアムが魔獣に魔力を吸い取られたのがきっかけです。魔獣についてや悪魔について調べて、悪魔に対策を得る方法を勉強したのです」
「確かにミリアムよりフーリエの方が強いように見えますが」
「本当は姉の方がワタチより強かったのです。ワタチを庇って今の魔力量に減ったので」
そう言われると、確かにあの短期間で魔術の能力の向上を考えると、本当は強いのではと思えるほどです。
そういう理由があったのですね。
「脱線しましたが、現在謎の魔獣がここ周辺に近づいています。シャルドネ様はここの村出身と言うことですが、あえて依頼させて欲しいです」
「何かしら?」
「一緒に魔獣を倒して欲しいです」




