[手合わせ]錬金術師ゴルド 対 傭兵テツヤ
「開始」
強引とはこのことです。
いつの間にかシャルドネは立ち上がり、テツヤは正面に立ち、ボクもまるで定位置に立っているかのような場所にいました。
「押忍。じゃあ行くぜ」
「やるしか無いのですね。えっと……今回の縛りは?」
「錬金術(精霊術)で良いわよ」
「リョウカイデス」
今までで一番やる気が出ません。精霊術の許可が出ても相手はシャルドネを倒した人間です。勝てるわけが……。
ん、人間?
「『砂壁ええええええ』!」
「ぬおおおおお! なんだこれはああああ!」
いくつもの砂壁を生成し、四つめの砂壁でテツヤを捕まえました。
「秘技! 『砂壁の中でくすぐり地獄』!」
「ぬあああああああやめろおおおおおお!」
「うおおおおおおおおおお!」
「ぐ、ぐ、ぎゃああああああああああ!」
ボクは必死でした。
だって、気を抜いたら強い打撃がボクに来るかも知れません。だとすればまずは近距離は避けたいです。
そして相手は人間です。
シャルドネ以外の人間にはとりあえずこの砂壁を突破した人はいません。安心と信頼の実績を持っています。
「さあ、降参してください!」
「まだだああああ! こんな無様な降参があってたまるかあああ!」
「でしたら、『召喚・ゴーレム』!」
複数のゴーレムを召喚し、目の前に立たせます。
「この状態から殴ることも可能です。さあ、どうしますか?」
「へへ、俺はそんなゴーレムの拳にも耐える肉体くらいは持ってる! うおおおお!」
未だ諦めずに砂壁から出ようとしています。このままでは脱出もされそうです。
「やはり、最終手段を使いますか」
「なに!」
「『砂壁』の形変形!」
うねうねと動くテツヤを覆っていた砂壁はその状態から形を変えました。
「はは、徐々に薄くなってやがる、諦めたか?」
「いえ、ボクとしても本望ではありませんが、仕方がありませんよね」
そして、最終的な砂壁の形状は。
顔の部分はテツヤのむき出しになっている厳つい顔。首から下は少しセクシーな女性の体の形をしていました。
なお、鉄やアメジスト。新たにルビーなどを生成して服を再現。おそらくこの世界では一番高価な服装でしょう。
「な、なんじゃこれはあああああああ!」
テツヤが叫ぶのも無理はありません。だって、首から下は女性なのですもの。
「こんな、意味不明な行動の何処に勝機があるんだ!」
「あります。ただしこれは降参してもらうしかありませんが」
「降参? するわけないだろ。確かに恥ずかしいが、こんな姿になっても抜け出せば問題は無い」
「確かに、抜け出すのが先か、降参が先かの話になります。正直テツヤの力が強すぎて、押さえるのに必死です」
「ああ、だったら」
「ですが、それまでに周囲のゴーレムがなんとかしてくれます!」
「な、なに……!」
テツヤの周囲には四体のゴーレム。
先ほどまでは戦闘用として呼ばれ、殺気に満ちあふれていましたが、今は違います。
『……ガ……ガワイイ』
『……オレ……モライタイ』
『……ケッコン……ジダイ』
『……コドモ……ヅグル』
「やめろおおおおおおおおおお! そんな目で見るなあああああああ!」
「さあ、降参しますか! それともしませんか!」
ボクの魔力も僅かです。早く決めてください!
「降参だああああ! ちくしょおおおおお!」
その言葉を聞いて、ボクの力は抜け、ゴーレムとテツヤを纏っていた砂壁は崩れました。
「はあ、はあ、地獄だった……」
テツヤはその場でしばらく動けなくなりました。当然です。ある意味心に傷を負わせてしまいました。
「えっと、師匠に勝ったのに、素直におめでとうと言えないのはなんでかしら……」
シャルドネはとても複雑な心境でボクに話しかけてきました。
「ドウゼンデズ……けほっ。当然です。ボクも不本意でしたから」
ちなみに、ゴーレムに言葉を発する能力はつけていません。
ボクがそれっぽい声をゴーレムの口から出していただけです。




