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専門外業務

 男性の背中には小さな女の子が血だらけで寝ていました。

 僅かな魔力反応が唯一命を繋いでいる状態です。


「はあ、はあ」

「テツヤさん、大丈夫?」

「ああ、俺のことはまだ良い。まずはその子だ」


 タプルも来て、ようやく治癒術による治療が始まりました。タプルも額に汗をかきつつ、表情は真剣です。


「くっ! 傷が深すぎる。間に合わぬぞ!」

「くっそお! あと少し早ければ!」

「テツヤさんは悪くない……でも、助からないの……?」


 全員が心配する中、シャルドネがボクに話しかけてきました。


「ねえ、ゴルドも協力できないの?」

「……」

「黙ってないで何か言ったらどうなの!」


「……ちょっと、静かにしてください」


「え」


 治癒術専門の人間は、血筋が大事とされています。

 治癒術を使える人間は親も使える。しかし、子は必ず使えるとも限らない。そんな事がマリーからもらった本に書いてありました。


 そしてボクは毎度の事ながら言わせて貰います。


 治癒術も大の苦手なんです。


 だって、専門は精霊術です。ただでさえ魔術を使うには一度変換してから魔術を使うのですが、治癒術はさらに魔術から変換を行わないと行けません。


 なので、単純に頭の中では三つの魔術がグルグルと巡っているのです。

 そして組み上がった治癒術は、人間の放つ治癒術よりも弱いかも知れませんが。


 そこは精霊の特権である魔力の量で補えば良いのです。


「『セイクリッド・ヒール』!」


 治癒術の中でも中級に分類するこの術は、人間の中でも使えるのはごく僅かでしょう。

 タプルが使っていた治癒術はボクがシャルドネを助けた時に使っていた低級の治癒術です。

 ですが、この少女の傷を見る限りではそれで助かる保証はありません。

 可能性の高い方にかけるしか方法は無いのです。


「お、おおおおお! まさか、こんなことが!」


 何故かタプルが感動していますが、後にしましょう。

 少女の傷が凄まじい速度で塞がっていきます。あとは……。


「セイラ。以前シャルドネに出していたお茶というのを出すことは可能ですか?」

「え、先ほどので良いのかしら?」

「いえ、『シャルドネがまだ旅立つ前の』お茶です」

「……分かったわ」


 そう言って厨房に行くセイラ。それを見てシャルドネは疑問を感じました。


「どうしてセイラにお茶を?」

「セイラの種族は森の番人であり、薬学に関しては勝る人も少ないでしょう。だからお願いをしたのです」

「何を?」

「もうすぐ分かります」


 そしてセイラは石のカップを持ってきました。

 中を見ると……うん、予想通りの超緑色です。


「か、過去が蘇るわ」

「でもこれが一番必要でした。ありがとうございますセイラ」

「あはは、今思い返せば私はシャルドネやテツヤに凄い飲み物を渡していたのね」


 目が泳いでいますが、それも無視です。まずは少女を助けなければ行けません。


「さあ、ゆっくり飲んでください」

「ん、ぐ、……ぶ、ぶあああああ!」


 ……緑色の液体を飲んだ瞬間、ボクの顔面に吹き出してきました。

 どうやらそれほど美味しく無いのですね。


「はあ、はあ、こ、ここは」

「気がつきましたか」

「え、あ、え?」


 どうやらまだ自分がどこにいるか分からない。そういった感じでしょう。

 ひとまずこれ以上は大人達に任せるとして、ボクは一旦引くとしましょう。


「ゴルド殿! ありがとうございます!」

「はあ、はあ、助かったぜ。少年」


 タプルと厳つい男性……えっと、本人から聞いてはいませんが、テツヤというシャルドネの師匠でしたっけ。


「いえ、それよりもテツヤでしたっけ?」

「あ、ああ」

「とりあえず、これを飲んでください」


「……え?」

 注)セイラの料理が不味いのはセイラ本人の料理スキルの問題であり、エルフ全体の料理を疑う表現ではございません。エルフの方がもしご覧になっていましたら、誤解が無いようにこの場で記載しております

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