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初めての同業(?)者

 シャルドネの話だと、別にテツヤという人間に好意を持っていた訳ではないとか。

 ただ、武術を教えてくれた師匠にして、母親を失った後の親の代わりとして面倒を見てくれた人間という事で、半ば父の様な存在だということらしいです。


 セイラという人間はシャルドネが母親を失った後の親の代わりとして面倒を見てくれた人間と言うことで、半ば母代わりの存在との……ん? 同じ事を繰り返し思った気がします。


「というか、当然の流れだと思うのはボクだけでしょうか」

「言いたいことはわかるけど! セイラは母さんとはほど遠いわよ! 料理が出来ないし!」

「料理だけが女性の魅力とも思えませんが……」


 ずかずかと歩く中、先ほど教えてくれたシャルドネの家に向かいます。どうやらその隣がテツヤの家だとか。


 そしてドアをコンコンと叩き、中から声が聞こえました。


『はーい、ちょっと待ってね』


 そしてゆっくりと開かれた扉から出てきたのは、緑の髪が腰まであって、白い肌と少し高めの身長の女性が出てきました。え、この人って。


「しゃ、シャルドネ! か、帰ってきたのね!」


 シャルドネを見た途端、ギュッっと抱きしめて、涙を流す。


「せ、セイラ。苦しいわよ。ただいま」

「お帰りシャルドネ! 心配してたんだから!」

「ありがと。あと、ケッコンオメデトー」

「あ、き、聞いたのね」


 すっごい心がこもっていません! シャルドネの心が云々の話はこの際おまけ程度レベルで心が無い言葉が飛びましたよ今!


「うん、ありがと。テツヤさんとこれから頑張るって決めて、先日結婚したの」

「そう。なんだか父親が取られた気分よ」

「そう言わないで。シャルドネの事も大好きだから結婚したのよ!」


 再度抱きしめるセイラ。シャルドネの力であればこれくらい振りほどけそうですが、実はこの行為はそれほど嫌いではないのでしょうか。


「それよりも隣の男性は……シャルドネの恋人さん?」


 そしてこの村はこういう話が好きなのでしょうか。男女が歩いていてまず第一声がこれ以外を聞いてみたいです。頼みましたよテツヤという人!


「初めましてセイラさん。ボクはゴルドと言います。錬金術師を名乗っています」

「初めまして。改めて私はセイラよ。シャルドネと親しい人なら私のことはセイラと呼んでね」

「ではお言葉に甘えてセイラ。一つ聞きたいことがあるのですが」

「あら、何かしら?」


 そしてボクは、ようやくこの世界に来て、ボクと似た存在が現れたことに驚きを感じました。



「エルフですよね?」


 ☆


 森の番人とも呼ばれているエルフ族は、妖精や精霊などのとも呼ばれています。

 ボクの様に殆ど魔力で出来た個体と違ってエルフは血も流れているので、人間と同じ生活を取ることができます。


「まさか、初めて会った人に見抜かれるとは思わなかったわ」

「えるふ?」


 セイラの表情は硬く、手に持った石のカップを持っていますが未だに口に運んでいません。

 シャルドネはボクの言葉に疑問を持つだけで、それ以上は特に聞いたりしません。


「言ってしまえばボクと同じ精霊の様なものです」

「ゴルドさん精霊なのですか!」


 ボクの発言により石のカップを落として割ってしまいました。


「あわわわ、し、失礼しました」

「いえ、石のカップであれば直しますよ」


 そう言ってマグカップを元の形に戻しました。シャルドネからすれば普段見る光景ですが、初見の人はこの光景に驚きを覚えるでしょう。


「まさか、精霊ですか?」

「そうです。ボクは鉱石の精霊です。だからこの世界では錬金術師を名乗っています」

「そ、そういうことかー」


 急に力が抜けて椅子に座るセイラ。


「この村では人間として生活しようと決めていたから、万が一にでも誰かにバレたらって……」


「……セイラって精霊なんだ」


「この村の人いるじゃん!」


 まあ、シャルドネは今帰ってきたばかりですけどね。


「せ、セイラ。安心してよ。別に精霊だからって扱いが変わる訳ではないわよ」

「そ、そう?」

「そうそう。だって、私だってよくゴルドに殴っているし」

「それはシャルドネが」


 ぱあん。


「……まあ、人間と精霊の境界線なんて浅いです。ボク達がその証拠ですね」

「……ふふ、二人は仲が良いのね」


 ようやく安心したのか、再度石のカップにお茶を入れて、やっと口に入れました。


「ふう、シャルドネもお茶を飲んだら?」

「え! え、遠慮しておくわよ」

「ふふ、以前の私だと思ったら大間違いよ? 騙されたと思って飲んでみなさい?」

「じゃあ……」


 そう言って勧められたお茶を飲み、シャルドネがしばらく硬直します。



「味が……無いわね」


「うそ!」


 いや、実際はうっすら緑色をしているのですが、むしろその色からどうやって味を抜き取ったのかが不思議です。


「だけど、以前のセイラなら、このお茶ですら飲めないほどだったわね」

「そ、そうよ。頑張ったんだからね」

「師匠の為に?」

「それもだけど、シャルドネにもいつか……そう思って」


 何やらとても居づらいですね。凄く退席したいのですが。む? 心情読破を使われた気がします。


「ごめんなさいゴルドさん。つい話し込んじゃって」

「いえ、それよりもエルフがいるというのも不思議ですね。この世界の出身ですか?」

「少なくとも私はそうよ。草の地の南ある森の地出身で、そこにはエルフの集落があるの」

「初めて聞く名前ですね。森の地ですか」


 実際この世界の地図を持たずに歩いてきたので、どこに何があるのか分からない状態です。

 シャルドネという案内人がいるから助かっていますが、やはり地図が欲しいですね。


「シャルドネは森の地に行ったことはあるのですか?」

「残念ながら森の地は無いのよ。行こうと思ったんだけれど、行けないのよね」

「あそこはエルフしか入れないのよ。特別な結界が張ってあって、森に入っても戻されるわよ(認識阻害なんだけどね)」

「なるほど、『認識阻害』でしたか」

「ちょっとゴルドさん! 『心情読破』を使ったでしょう!」

「先ほどのお返しです。ですが、別に何かをしようと思ったわけではありません。つい癖で『心情読破』を使う友人がいるので、真似をしただけです」

「マリーのことかしら?」


 おっと、そういえばマリーはこの地に来た人でしたね。つまりセイラとも知り合いでしょうか。


「マリーには雪の地で会ったのよ。相変わらず元気だったわ」

「ふふ、たまに連絡を取っているけど、やっぱり手紙では分からないからね。時間もかかるし」


 マリーやミリアムが鳥を使って連絡を取る以外にも方法はあるのですね。でしたらマリーに連絡を取ってみるのも良いかもしれませんね。


 そんな話をしていたら、何やら強い魔力反応が近づいて来ました。その反応はセイラにも分かったらしく、同時にドアを見ました。


 開かれたドアからは、大きな男性が立っていました。

 黒髪で厳つい顔。そして腕の筋肉などから武術家だとわかります。


「し、師匠!」

「テツヤさん!」


 同時に声をかけるも、ドアに立つ男性はその言葉に反応出来ず、息を切らしたままです。

 ようやく呼吸を整え言葉を発しました。


「タプルを呼んでくれ!」

 

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