鉱石の精霊ゴルド
神々の住まう世界から覗いていた世界には国が多々存在していた。そしてそれらは文化を作り、貿易をし、次世代に繋がる努力をしていました。
この世界はというと、国というものは存在せず、ボクの今いる離島と呼ばれている場所も、ただの離島と呼ばれているだけで、冒険者が腕試しのための目標としてのみ存在していました。
「あなたはどうやってここへ?」
「シャルドネ」
「……シャルドネはどうやってここへ?」
なぜか満足した表情を浮かべる少女。人間の感情は難しいです。
再度身なりを確認しますが、金色の短髪にツンとした目つき。腰にはダガーを装備し、色とりどりの装飾や布は破れた箇所の修繕でしょうか。
見た目十代前半。言ってしまえば小娘とも呼べる少女ですが、こんな少女が一人で行動するのは良いのでしょうか?
そんな事を考えていると、シャルドネはふと疑問を投げかけてきました。
「あなたに名前は無いのかしら?」
「名前? 鉱石の精霊ですけど」
「それは種族……と言っていいのかわからないけど、それだと目立つし長い。何か他に名前は無いの?」
「と言われましても」
神々が住む世界では、数名ほど名前を持つ神や精霊は存在していました。しかし、序列の中でも下層に住む僕には名前などあるわけがありません。
「じゃあつけてあげる」
「はい、よろしくおねがいします」
「え、いいの?」
いや、驚かないでくださいよ。
「じゃあ、金色の塊から生まれた『ゴールデンバース』は?」
「長いです」
「じゃあ、金色の石を出すから『ゴールデンブロック』は?」
「物っぽいです」
「じゃあ。金色の」
「金色にこだわりますね!」
精霊ということもあり、単語全てに異世界の言葉が使われています。その言葉を知っているあたり、この少女は意外と博識なのでしょうか?
「じゃあ、略して『ゴルド』はどうかしら?」
「ゴルド……ですか。まあいいです」
まんざらでもない、そう思ってしまった。
「じゃあよろしくね。ゴルド」
「シャルドネこそ、足を引っ張らないで下さい」
「足を? 誰が?」
「あなたです。ボクの石で気絶するあなたですから、少々心配です」
「だからあれは無しって言ってるでしょ!」
頬を染め怒るシャルドネ。そして怒り狂ったのかダガーを構えます。
「え、ちょっと待ってください。さすがにそれは怒りすぎでは?」
「いえ、私の実力を見ずして心配をするなんて、私のプライドが許さないわ。十秒待ってなさい!」
そして。
シャルドネは一瞬消え。
五秒後には鳥を三羽も仕留めて帰ってきた。十秒とは一体と思いつつ驚きます。
「人間にも、すごい能力の持ち主がいるのですね。何か魔術を?」
そう疑うしかありません。何せボクは目で追うので精一杯で、もし刃物がボクに向かっていたら、ぎりぎり防御できたかどうかの速さでした。
「私はこれでもそこそこ名の知れた冒険者よ。だから今まで誰とも組まなかったの。だからあなたが精霊であろうがそれほど驚きはしないわ」
「少しは驚いたのですね」
「そおい!」
「ちょっ! 鳥を振って血を飛ばさないでください!」
「それは内蔵よ。食べられないから飛ばしただけよ」
「余計にたちが悪いです!」
人間の行動にはあきれます。とはいえ、余計な心配でした。
ボクの仲間……いや、半強制的に同行することになった人物はそこそこ強そうですね。
「さて、今後の行動だけど、ゴルドはどうするつもりなのかしら?」
「……大きな目標があります」
そう言って、ボクは初めて落ち着いて話すこととなりました。
いつか訪れる神々と精霊の戦いについて。
名前に関しては正直悩みました。
今後のことを考えアルケミストのアルクとか、ミストとか。
ですが、色々な構想を入り交えた結果ゴルドとなりました。今後ともよろしくお願いします。