錬金術師ゴルド 対 悪魔に飲まれたミッド
ミッドの両親は比較的大きめな武器屋でした。
しかし、最近では魔術の発展から徐々に武器の供給が減り、とうとう赤字までになってしまったそうです。
そんな中、ある魔術書を手に入れ解読すると、そこには悪魔と契約する方法が書いてありました。
悪魔と契約するには、本来悪魔と親密な関係を持つ人を中継して契約しなければいけませんが、この男はそれを『召喚術』で補ったとのことです。
そして『召喚術』もその本に書いてあったそうです。その発想は商人故でしょうか、やはりこの男は侮れません。
「死神グリムが召喚されたときは驚いたよ。まさか神が私の前に現れたのだからね」
その言葉に、シャルドネは鉄の武器を落としました。
「待って、死神グリムを……召喚?」
「ええ、死神グリムを呼び、悪魔を紹介して貰ったんだよ。悪魔は妻の中に入った後はどこかへ行きましたけどね」
おそらくどこかと言うのは、シャルドネの母親を……。
「まさか、貴方が原因だったなんて!」
「何がですか?」
「私の母さんは、死神グリムに、殺されたのよ!」
片手に持っていた鉄の棒を思いっきり投げます。その勢いは以前と変わらない速度です。
つまり、まずいですね。シャルドネの精神状況が戻りつつあります。
鉄の棒は、簡単に弾かれました。
弾いた人は、隣に立っていた女性です。ただの悪魔が宿った人形かと思いましたが、防衛能力はあるみたいですね。
「ふふ、愛する妻よ。ありがとう」
「……」
心を完全に悪魔に食われた人形というべきでしょうか。隣の女性は表情を変えません。先程の『光球』の傷も殆ど癒えたのか、普通に立っています。
そして、ゆっくりしていられません。ミッドが壁から抜け出してきました。
「シャルドネ! ミッドが来ます!」
「ゴルドがなんとかして! 腰痛治っているのでしょ!」
「緊張感無いですね!」
女性の傷が癒えると同時に痛みは増していますがね!
そしてシリアスな場面に、完全に場違いな「腰痛」という単語を持ち出した事を深く反省しています。
「悪魔の血の陣と分かれば、こうする以外ありません! 『光球』!」
地面に聖術を放ち、陣を消します。
「ふむ、貴様は不思議な生物ですね。興味があります。細かく切り刻んで、商品にすれば売れるかね?」
「貴方の相手は私よ! てえい!」
シャルドネはミッドの両親の元へ走り出しました。
「ミッドはボクとですか。気乗りしませんが……『鉄壁』!」
光球を放った場所だけ鉄壁の設置は可能でした。
これならなんとか応戦出来そうです。
「『投石』! さあ、ミッド、かかってきなさい!」
「がああああ!」
悪魔相手に交戦するなんて、本当は避けたい道です。精霊と悪魔の相性は最悪ですが、それ以前に悪魔は強いです。
ですが、それをいつもシャルドネはやっていると思うと、やはり凄いですね。
「『投石』! こっちです!」
「があああ!」
鉄壁に近づいてくるミッド。
さて、そろそろですね。
「行きます。枝状の無差別に放つ『ライトニング』!」
無差別に放たれた雷属性の魔術は、鉄壁とダガーに反応し吸収され、その後少しだけ光っています。
「がっ? ……あ、ああああああ!」
急にミッドの動きが鈍くなりました。
当然です。ミッドの腰にあるのはボクが作った鉄です。
ダガーは鉄壁へ吸い込まれるように引っ張り、それを装備していたミッドも鉄壁に引っ張られます。
「がああああ、ぎゃあああああ!」
鉄壁に吸い混まれるように足を奪われたミッドは、鉄壁に触れた瞬間凄まじい悲鳴を上げました。
「ぎゃああああああ!」
「……さて、戻って欲しいというのが本望です。『光球』!」
放った聖術はミッドに当たりその場で倒れました。
灰にはならず、どうやら間に合ったのでしょうか……。
「があ、がはっ」
強化された肉体に変化もなく、魔力も少ししか減っていません。これは……。
「……薬は一つではありませんか」
予想はしていました。
他の薬を使っていた人間と比べて、明らかに反応は大きいです。やはり……。
「ゴルド! 気にせずやりなさい! じゃないと町が滅ぶわ!」
「でも……」
「あの町を第一に考えていたのはミッドよ! このままだと、ミリアムを含めた皆が危ないわ!」
「させるか傭兵!」
「それはこっちの台詞よ!」
戦闘を続けながらボクに助言をしてくれるシャルドネに感謝です。
「ミッド、すみません。貴方の望んだ結果にはならないかも知れませんが、許してください」
そしてボクは二発。三発と光の球を放ちました。
ミッドの体からは黒い霧が出され。
「があ! ぎゃあ! ……しゃ……しゃるどねねえちゃ……」
やがてミッドの体も霧と同時に消えてしまいました。




