手合わせ -ゴルド 対 ミッド達
嫌な予感はしていたのですよ?
マリーの時、代わりにボクが戦った前例があったので、万が一にでもボクが手合わせするんじゃ? って思いました。
「案の定じゃないですか!」
「予想していたなら話は早いわね。ほら、開始」
「開始合図が適当ですねえ!」
ボクは広い場所の中心に立ち、正面にはミッドとミリアムがいます。え、二人なんですか?
「あ、ゴルド。一応言っておくけど、魔術縛りね」
「ひどくないですか!」
「当たり前でしょ。とはいえ、ゴルドの魔術がどれほどかはわからないけど」
「苦手ですよ! 本業ではありませんからね!」
とりあえず文句を放ちました。そしてミッドとミリアムを見ると構えています。
「え、どういうこと? 数種類の力を使えるのですか?」
「ミリアム、まずは落ち着こう!」
「は、はい!」
あー、これはやる気です。
とりあえず、怪我をさせないように、かつ魔術ですか……。
「ミッド、行きます! 『アイスニードル』!」
「……集中」
ミリアムは単純な氷属性魔術。火属性魔術の火球でなんとかなるとして、ミッドは……身体能力が上昇しました。あれは魔術……いえ、気功の類いでしょうか?
「『火球』! そして、『つち……』、いえ、『グランウォール』!」
危うく精霊術を使う所でした。同じ属性なのに魔術に変換しないと行けないのは、なかなか歯がゆいですね。
地面から土で出来た壁が現れ、それにより氷が砕けます。土壁とはほぼ一緒ですが、ボクの場合は土壁の出す時間の方が短縮されます。逆に人間はグランウォールの方が早いでしょう。
「ん、ミッドが迫ってますね」
「なっ! ばれた!」
「雷属性の魔術はー、これですね、『ライトニング』!」
「があ!」
微少な雷を放ち、それをミッドに当てます。動きが単純な分、すぐに対処できました。
「隙は与えません。揺れてください、『クエイク』!」
「きゃあ!」
ミリアムが何か呪文を唱えようとしていました。地面を揺らして転ばせます。
おっと、二人が転んでいるのでこれはチャンスですね。
「『砂壁』!」
「なあ! う、動けない!」
「くっ、だ、出してえ!」
勝負は意外とあっさりでした。
もっと苦戦するかと思いましたが、まさかこれほど一瞬だとは。
「ゴルド、最後の砂壁って……」
「……あ」
試合には勝ちましたが、勝負には負けてしまいました。
やつあたりも込めて、少しくすぐらせて頂きましたが!
☆
「と言うことで、実際の実力は分かったかしら?」
シャルドネが腕を組んで、座っている二人に何かを話しています。というか試合に出たのはボクなんですが、なんでシャルドネが仕切っているのですか?
「はい……今後も精進します」
「シャルドネ姉ちゃん。せめてもう少し戦い方を教えてくれれば!」
「うーん、まだそれを決める時では無いと思うのよね」
「うう……」
そう言ってシャルドネは、お手洗いと言ってその場から離れました。
同時にミリアムがボクに話しかけてきます。
「負けました。ゴルドさん。貴方は錬金術師の上に魔術師なんですね」
「そ、そうですね」
精霊です。とは言えません。
「その、空いた時間で良いのですが、ワタシに魔術について教えてくれませんか?」
「魔術……ですか?」
「まだまだ半人前なので、少しでもマリー様の役に立ちたいと思いまして」
なかなかシュールなんですよ?
精霊が精霊術じゃなくて、魔術を教えるっていうのは。
例えるなら料理人が家の作り方を教えるくらい変な話なんですよ?
「まあ、良いです。それよりもミッドは良いのですか? 何か不満そうですが」
「……シャルドネ姉ちゃんは教えてくれないんだ」
「何をです?」
「敵を倒す方法」
……それはきっと、そうしているのだと思います。
十六歳と言っていたシャルドネよりも年下の少年に、相手に怪我を負わせる術を教えるというのは、なかなか気乗りしないと思います。
今は心が欠けたシャルドネに心情読破を使って本当の理由を聞くことはできませんが、少し相談して見るのもありかなとは思いますけどね。
「気が向いたらボクから聞いてみますよ」
「……いえ、大丈夫です。これは僕の問題ですから」
そう言って、ミッドはその場を離れました。
人間というのはなかなか難しいです。




