岩の地の異変
岩の地の由来は、色々な鉱石が取れることから、岩の地と呼ばれるようになったそうです。
「と、シャルドネは以前言ってましたが」
「そうね、まるでこれは、廃墟ね」
建築物は破壊され、まるで何かに襲撃を受けた。そんな空気を醸し出していた。
「シャルドネ……」
話しかけようとした瞬間、シャルドネはボクの口を右手でふさぎます。
「シッ……、まりょくたんち? は使える?」
「『魔力探知』ですか? はい」
急にどうしたのかと思いましたが、とりあえず使ってみます。周囲の魔力を確認する神術『魔力探知』は、魔術が使えない人間にも微量な魔力で反応するので便利なんですが……。
「二十! 囲まれてます!」
「土壁頼むわよ!」
突然シャルドネは走り出しました。その瞬間三人の男が刃物を持ってシャルドネに襲いかかりました。シャルドネはそれを予想していたのか、体を捻って攻撃を回避し、すかさず打撃を入れます。
ボクは土壁を数カ所設置し、遠くから投げられた刃物を防ぎます。
「盗賊かしっら! 鍛えられているけっど! まだまだ甘いわねっ!」
蹴りつつ話すシャルドネ。つまり余裕なのでしょう。
「『投石』! 油断しないでください! 一つだけ大きな魔力があります!」
「悪魔の薬かしら?」
「いえ、それほど大きな魔力は感じません。しかし、この集団の頭だとは思います」
「くっ! しつこい!」
あまり強く打撃を打てないのでしょうか。そして相手は倒されても起き上がり再度襲ってきます。
すると、突然大声が聞こえました。
「去るんだ! 闇の力を持つ者よ!」
集団の中でも若干大きな魔力を持つ人間です。
赤い短髪で、背が低く……と言ってもボクとそれほど変わりませんね。そんな『少年』が声を上げてボク達に問いかけてきました。
「……はあ、なんだ」
シャルドネはため息をつきました。相手が少年だからでしょうか。
「私の事を忘れたのかしら? ミッド」
「その声……その髪は……ええ! しゃ、シャルドネ姉ちゃん!」
どうやら知り合いだったそうです。
☆
廃墟が続く中、一つだけ大きな建物が建っていて、少し壊されているものの建物としての原型はある施設に案内されました。
施設の中も広い部屋はありますが、テーブルなどはありません。少し違和感を感じます。
その広い部屋にボク達と町の住民、そしてミッドと呼ばれる少年が入りました。
「彼はミッドよ。以前ここにマリーと来たときに知り合った少年で、確か大きめの武器屋の息子だったと思ったけど」
シャルドネがミッドと呼ばれた少年の背中をバシバシと叩きながら紹介をしています。シャルドネ、多分ですが結構痛いと思いますよ?
「痛いよシャルドネ姉ちゃん!」
「あはは、ごめんごめん。で、もっと人でに賑わってた町だと思ってたけど、どうしたの?」
その言葉の瞬間、ミッド達の視線は落ち、シャルドネも空気を察したのかミッドの背中叩きをやめる。
「捕まったんだ。父さんも、母さんも。この町の人間の中で鉱石の位置を知る人や、稼ぎがそれなりにある人は、闇の力を持つ者に」
おそらく悪魔の薬を使った人だろう。そして捕まった人を限定している所を見ると武器の量産や戦力の増加と言った所でしょうか。
「どうして私達が闇の力を持つ者って思ったのかしら?」
「それは、ミリアムが『魔力探知』で……」
ミッドの後ろから、少女が震えながら歩いてきました。
髪は青く透き通っていて、肌が白い。背中まで伸びた髪がとても綺麗ですが、この岩の地ではおそらく場違いと言った感じでしょうか。
「すみません。あまりに大きな魔力を感じたので」
「ミリアムは雪の地の人間で、この緊急事態に協力してくれているんだ」
「というと、マリーに鳥を送ったのは?」
「ワタシです!」
これは都合が良いですね。岩の地に住む雪の地の人間とさっそく合流できました。
「ゴルド。あれを見せたら?」
「はい」
そう言って、ボクはマリーから渡された『錬金術師の証』を見せました。
「これは……雪の地のメダル……錬金術師の証で……ええ!」
突如驚くミリアムに、周囲も驚きました。
「ま、マリー様のお墨付きですか! いったい何者ですか!」
え、マリーってそんなに何か握っているんですか?
「し、失礼しました! えっと、何かお詫びを!」
「いいわよ。ミッドとは知り合いだし、屋根のある小屋を貸してくれればね」
さりげなく場所を要求する辺り、流石ですね。
ミリアムが「急いで準備します!」と言って飛んで行きました。不安もありますが、マリーの部下的な存在ですし、とりあえずは信頼しましょう。
「……シャルドネ姉ちゃん……」
「ん? 何よ」
黙るミッド。何やら様子がおかしいですね。ちょっと『心情読破』で心を読むとしましょう。
「……なるほど」
「ゴルド? どうしたの?」
「いえ、それよりもボクはちょっとお手洗いに行ってきます。あ、皆さんも案内してもらって良いですか?」
ミリアムの反応が吉と出たのか、町の人が素直についてきてくれました。
外に出た瞬間、少年の大きな泣き声が聞こえました。
ボクはそれとなく声を大きくして会話をしていたので、その声が町の人に聞こえる事は無かったでしょう。
本格的に岩の地編となります。悪魔の薬によって汚染された人間の悪事をどの様に対処するかを楽しんでいただければと思います!




