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岩の地

 岩の地の由来は、色々な鉱石が取れることから、岩の地と呼ばれるようになったそうです。

 それをマリーから聞いた時は、少しだけワクワクしました。

 鉱石と言ったらボクです!


「何ニヤニヤしているのよ」

「だって、鉱石の地ですよ!」

「岩の地なんだけど……」


 苦笑しながらも答えるシャルドネ。マリーから聞いた話だと、そもそも出会ったばかりの頃は苦笑いすらしなかったとか。

 人間の感情はまだボクにはわかりませんが、良い傾向らしいです。


「とはいえ、岩の地は貿易の地とも呼ばれているわね。雪の地と草の地の間にあって、大陸の商人たちが集まる地域だから、一番活気はあるかもしれないわね」

「鉱石も取れて、大陸の中心にあって、商人も来る。ある意味で一番おいしい地域じゃないですか?」

「そうね。でもだからこそ腕の立つ強い人間はいないのよ。何か事件が起きても、解決するのは雪の地か草の地から派遣された傭兵や魔術師ね。私も来た時は盗賊と戦ったわ」


 鉱石の地域ともなると、物資はあるのでしょう。物資があるのであれば、雇えば良いのです。

 ですが。


「悪魔の薬とやらが普及すると、まずいですね」

「ええ、船長兄弟のような力を持った人間がポンポン現れたら、いくら貴重な鉱石を提示しても人は集まらないわね」


 いつの間にかこの世界を救う方向に進んでいるようにも思えますが、本来の目的を忘れてはいけません。


「本来の目的は、ボクが頂点の神を倒すことです。薬の件はおまけ程度に思って良いですか?」

「ええ、良いと思うわ。むしろそうした方が目的を見失う事はないでしょ。それと、強者に対向するなら草の地に向かうのも手ね」

「何故ですか?」


 そして、シャルドネはその場で拳を突き出しました。


「私に武術を教えた師匠がいるからね」

「なるほど……」


 心を失い、力の制御を失ったシャルドネですが、きちんと武術を教えてくれた人はいるのですね。


「マリーに助けてもらった後、故郷の村でしばらく過ごしていたら、とても強い男に出会ったのよ。マリーは語学を。私は武術をその男から学んでいたわね」

「というと、結構長い時間マリーはその草の地にいたのですね」

「ええ、私の家に寝泊まりしていたわね。当時は気にする余裕は無く、ただの同居人くらいにしか思えなかったけど、今思えば感謝しているわ」


 時が過ぎてから感じる事もあるのでしょう。シャルドネはやはり心を失ったのではなく、少し欠けてしまった……そして今はそれが少しずつ修復されているのでしょう。


「さあ、そろそろ到着よ。ここが岩の地……なんだけど、あれ?」


 少し崖を上って、おそらく岩の地が一望できる場所に到着したのでしょう。


 ボクが見た光景は、活気があって、人々がたくさん住んでいて、とても裕福な地域……とは真逆の。


 廃墟と化した景色がそこにありました。

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