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雪のち岩

 今回の戦闘でシャルドネは重傷を負い、今日は宿では無くマリーの部屋で休むことにしました。

 休むと言ってもシャルドネの治療です。

 ボクがシャルドネに治癒術を使っていると、隣で見ていたマリーが寂しげな表情を浮かべました。


「はあ、やっぱり精霊には勝てないのかしら」


 ため息をつくマリー。ボクが治癒術でシャルドネの怪我を治療していることに、何か不満があるのでしょうか。


「不満というわけでは無いわよ。ただ、やはり精霊だけあって、超えられないって思っただけよ」

「さりげなくボクの心と会話をしないでください」

「ふふ、まあ許して頂戴。癖みたいな物だから」


 苦笑いをするマリー。そういえば死神の心を読むことで弱点を見つけることができましたが、そもそも神の心を読むなんて規格外の人間がいたことにボクは驚きです。


「心を読めるのは神術と相性が良いからと言ってましたが、根拠はあるのですか?」

「そうとしか言えないわね。『この世界に』来て最初は言語もわからなかったけど、相手の心は理解できたのが唯一の救いだったわ」


 何やら普段聞かない単語ですね。この世界?


「マリーは別世界の人間なのですか?」

「ええ。まあ今ではここの責任者だから、もうそんな以前の話をしても仕方が無いけどね」


 煮え切らない終わり方でバッサリと切られました。何か事情があるのでしょう。


「いつかは帰りたいとも思ってはいるからね。そのときは協力して貰うかもしれないわね」

「では、一緒に旅をしますか?」

「ふふ、ありがとう。でも、ワタクシはここの責任者。すぐには外に出れないわ」

「そうですか」

「でも、いつか外に出るときはよろしくね」

「はい」


 そう言って、シャルドネの治療を続けます。

 あ、シャルドネが目を覚ましました。


「……ここは?」

「マリーの部屋です。腕の骨はなんとか繋ぎました。少し無理をしすぎです」

「私の特権よ。力加減を失ったからこそのね」

「でも、死んでは意味がありません。大事にしてください」

「……そうね。それで、死神は?」

「死神グリムは消滅しました。気になる発言を残してですけど」


 悪魔の薬を人間にばら撒いたのは死神グリムでは無かった。グリムから悪魔を貰った人間が原因ということらしいです。


「その話なんだけど、先ほど岩の地にいる部下から連絡があったわ」

「連絡ですか?」

「ええ、どうやら岩の地に不思議な力を持つ人間が現れて、騒ぎを起こしているらしいわ。詳しくはわからないけど雪の地の人間からの伝言には変わりないわよ」


 一枚の小さな紙を読むマリー。どうやら鳥を使って連絡を受けたらしいです。


「悪魔の薬かしら……」


 悪魔の薬に関しては何かしら対策はしないと、今後の旅にも影響するでしょう。

 それに、その悪魔を得たという人間についても調べたいことがありました。


 死神とはいえ、どうやって神に交渉して悪魔を得たのかです。


 今考えても解決はしませんが、考え方によっては厄介な事の前兆に思えます。だって、神と人間が手を組む事例ができたわけですからね。


「さて、マリーはついてこないの?」

「ええ、ワタクシはこちらで調べ物が終わってから行くわ」

「わかった。ゴルド、明日には出発しようかしら」

「そうですね」


 そう言って、旅支度をして翌日魔術研究所を出ることに決まりました。


 ☆


「ここから先の道に行けば、岩の地に行けるわよ」

「ここまでの道案内ありがとう。マリー」

「ええ、こちらもマンドラゴラを調達出来たから良かったわ」


 森を抜ける中、道中マンドラゴラを発見してはボクが引き抜く作業を行い、マリーに渡していました。


「錬金術師さん。今更だけど死神の一件は助かったわ。責任者としてお礼を言わせてもらうわ」

「いえ、問題が未然に防げて良かったです」


 と言っても実際被害は出ています。シャルドネの母親は死神グリムによって殺されました。

 復讐ができたとはいえ、許せない部分はあるでしょうけど。


「私の事は気にしないの。それよりも岩の地よ!」

「シャルドネは良いのですか? 目的はある意味で解決しましたけど」

「そうね。理由は二つ。一つは岩の地のさらに先には私の故郷があるの。旅をするなら一人より二人の方が安全でしょ」

「シャルドネ一人でも、その辺の獣は大丈夫だと思うのですが」


 ぱあん!


 久々に殴られた気がします。えー、突然ですね。


「一応私も女の子よ?」

「はい。男(仮)のボクがしっかり守りますよー」

「ふふ、仲良しで良いわね」

「そうかしら?」

「それで、もう一つは?」

「ただ単純に面白そうだからよ」

「そうですか」


 その言葉を聞いて、なんとなく安心しました。

 心が欠けたシャルドネですが、徐々に回復している証拠ということでしょう。


「では、マリー。ここでお別れです。道中お気をつけて!」


「ええ、錬金術師さん達もね。無名の星の神『カンパネ』様のご加護がありますように」


 送り言葉としてはお約束の単語でしょうか。


 このときは深く考えていませんでした。

 雪の地編はここで終わりとなります。次からは岩の地編となります。

 今後もゴルドとシャルドネの冒険に、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!

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