嫌な予感
研究所の長い廊下を歩きながらマリーとシャルドネは話をしていました。
「悪魔の魔力?」
「ええ、これは……何やら危ない気配を感じるわ」
「今どこに向かっているの?」
「本来研究員しか入れない部屋なんだけど……シャルドネと錬金術師さんはついてきて」
「……あれ、ボクまだ名乗って無かったでしたっけ?」
「え、名乗ったわよ? 錬金術師ですって」
「ゴルドです!」
最初に名乗っているはずです! 記憶違いが無ければですが!
「慣れたからこのままで良いかしら?」
「まあ良いですけど!」
少し気にしながらも廊下を歩く速さは変わりません。
階段を降りて、さらに降りて……一体地下の何処へ行くのでしょうか。
「ここでは色々な魔術の研究をしているわ。神術や魔術から、精霊術、治癒術、聖術。そして闇魔術」
「闇魔術ですか。この世界にもあるんですね」
「ええ。そしてその闇魔術はこの世界では禁忌とされているわ」
「何故ですか?」
「人体の悪影響。伝染力。その全てに良い点が無いの。だから大陸全土で闇魔術に関しては厳しく罰せられるの。シャルドネにもそういった依頼はいくつか行ったはずよ?」
「ええ。悪魔と契約した盗賊とかなら何人か倒したわね」
だからシャルドネは一体何者なんですか。
悪魔と契約した人間は、普通の肉体の数倍以上の身体能力を得ることが出来る代わりに、色々な代償を支払います。
そんな超人を倒すシャルドネは、もはや人間では無いのでは!
「……錬金術師さん。今思ったことをワタクシが代弁したら、さっきのコントがまた見れるのかしら?」
「やめてください」
シャルドネも腕を構えるのを辞めてください。だからその察しの良さも凄いですって。
「でもシャルドネってボクと初めて会った時、震えてましたよね?」
「未知は恐怖ね。実態があれば殴れる。幽霊は殴れない。だからあの時のゴルドは何者か分からなかったから怖かっただけよ」
シャルドネの感性が未だに読めません。僕から見たら船長のような強敵の方がよほど恐ろしく見えるのですが。
「話は戻るけど、その闇魔術に対抗する部隊が水面下で作られているわけだけど、その前に薬とやらが普及してしまったら遅いわ。まずは研究結果を見に行きましょう」
そして地下深くの扉に到着しました。
開けると、そこにも研究員が数人居て、皆がマリーを見た瞬間頭を下げます。
「挨拶は良いわ。まずは研究結果とその資料。ついでに血液も持って来れる?」
「こちらに」
「ありがとう」
マリーが資料を受け取って、それを眺めている。血液は硝子の瓶に数滴入っている。それをボクに渡してきました。
「……悪魔の魔力を調べることは可能かしら?」
「わかりました。ではシャルドネ。お願いがあります」
「何かしら?」
「ボクの様子がおかしくなったら、遠慮無く殴ってください」
「……? わかった」
正直この血液から悪魔の魔力を調べる事に対して、気は乗らないのです。なぜなら。
精霊と悪魔は、すっごく相性が悪いからです。
「ぐああああああ!」
「れ、錬金術師さん!」
「な、殴ろうか?」
叫ぶボクを見て、マリーは動揺。シャルドネは構えます。
「あああ、あはは、あははははは」
しかし次の瞬間、腹部がくすぐられる感覚に襲われました。
悪魔は気まぐれで、その魔力も気まぐれです。だから、その魔力を精霊が調べると、その魔力の中に潜んでいる悪魔がボクに流れ込んで、いたずらをするのです。特に精霊の中に入った悪魔の魔力は人間より活発と聞きます。
「や、やめてください! お、お腹が、お腹をくすぐらないで!」
「誰もくすぐって無いわよ! 錬金術師さん?」
「違い、違います。悪魔がボクに……この血液には悪魔の魔力がありました。もう良いですね! あははは!」
「え、ええ! しゃ、シャルドネ! どうすれば良いかしら?」
「とりあえず、殴っておこう」




