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精霊ゴルド 対 魔術師マリー

 マリーについて事前に得ていた情報はこの辺りの責任者。想像ではとても知的で優しいイメージを勝手に作っていましたが。理想と現実はいつも裏切りますね。

 シャルドネ曰く、研究者として切り替わると性格が反転してかなり怖くなるそうです。


「へえ。何か薬を飲んでこの力を得たと」

「なっ! 心を……」

「そしてその薬は密輸品ね。ふむふむ。成分は?」

「おい! 心を読むな!」

「成分まではわからないのね。じゃあ少し腕を切るわよ」


「……は?」


 何も躊躇いも無くナイフを振って、船長弟の腕に切り傷をつけました。

 ポタポタと流れる血液を容器に入れて蓋をします。その行動に迷いは無く、逆に恐ろしいです。


「った! 何しやがる!」

「血液の採取。大丈夫よ。もう治っているから」

「何? ……本当だ」


 驚きました。治癒術は確か術の中でも特殊な分類だと思いましたが、この人は何が使えるのでしょう。


「無駄よ。ワタクシに『心情読破』は使えないわよ。油断してたら引っかかるかもだけど」

「うう……ダメですか」


 早急にバレてしまいました。


「さて、大体できることは終わりね。えい」


 そう言って研究室の壁にあるボタンを押しました。すると兵士が何人も入ってきて整列しました。


「え、な、なんだこれは!」

「何って、犯罪者を捕らえる兵士よ?」

「研究に協力すれば逃げれるんじゃ!」

「そんな約束してないわよ。あ、シャルドネはしたのかしら?」

「いいえ」

「ね?」


「「ふざけるなああああぁぁぁぁぁ、、、、、」」


 悲しきかな。

 利用だけされて連れて行かれました。さすがのボクも二人に同情しますが、犯罪者なので当然の報いでもありますね。


「さて、改めまして、ワタクシはマリーよ。この研究所で働いているわ。皆からは研究所の長と言われているけど、勝手に言ってるだけだから気にしないでね」

「ゴルドです。魔術師で検問を通りましたが、本業は錬金術師です」

「へえ、精霊さんなんだ」

「……強いですね」

「お互い様でしょう」


 神術の『心情読破』は簡単に扱える分類に入りますが、それでもポンポンと使えるものでもありません。つまり彼女は相当強い魔術師ということです。


「マリー。研究者としてのスイッチは切って貰って良いかしら? ゴルドは私の同行者よ。強引な研究はしないで貰える?」

「えー、シャルドネがそう言ったら何もできないじゃない!」


 え、シャルドネの言葉ってそんなに影響力があるのですか?


「シャルドネは前にワタクシを助けてくれたの。だから逆らえないの」

「でもここには一度来たって……」

「ええ。この研究所には一度だけど、最初に出会ったのはここでは無いのよ」

「そういうことでしたか」


 それもそうですよね。一度出会った人間がここまで親しく話せるわけもありませんよね。


「さて、精霊さんということは黙った方が良いかしら?」

「お願いします」

「それと、ここには特殊な魔術を探しに来たのよね? どんな魔術かしら?」

「まだ具体的な答えが決まって無いのですが、神術に対抗できる魔術や精霊術を探しています」

「へえ。まあ詳しくは聞かないでおくけど、神術に対抗ね……」


 研究者なら疑問に思うはずです。

 現在伝わっている神術は、心を読んだり気配を消したりする類いの物で、攻撃的な神術は無いのです。

 当然ボクの知る限りでの神術に攻撃的な物はありません。

 しかし、ボクが歯向かった時に頂点の神はボクに向けて光の玉を放ちました。それは明らかに神術であり、それ以外には見えなかったです。


「まあ神術の資料については助手に手伝って集めて貰うわ」

「ありがとうございます!」

「その代わり……ふふ」

「あ、その、血はちょっと」

「そんな非人道的な事はしないわよ」


 さっきしてましたよね! しかも躊躇いも無く!


「ワタクシと手合わせをしてくれないかしら? 精霊との戦闘はしたことないのですもの」


 この世界の楽しみの基準は戦いなのでしょう。



 シャルドネが中央に立ち、ボクとマリーを交互に見ます。


「えー、私が戦闘不可と判断。もしくは降参した時点で戦闘は終了。良いわね」


 今ボクは魔術研究所の広い砂地にいます。

 特に何も無く、ただ広い砂地。

 これにはもちろん理由もあり、研究者の中には威力の高い魔術を研究している人もいて、それを試験の一環で使用する場所としても使うそうです。


「ワタクシは準備できているわよ」

「ボクもです」

「そうね。追加ルールとして、マリーは魔術だけ。ゴルドは精霊術だけで良いかしら?」

「異論は無いわ」

「……まあ良いです」


 精霊術となるとボクの体内にある魔力や、周囲の鉱石を使っての攻撃となるので、負担が大きいのですが、人間相手にだったら大丈夫でしょう。



 そう思っていました。



「予想ではすぐ終わるつもりだったのだけれどね! 『火球』!」

「ボクも予想していませんでした。これほど強いとは。『土壁」!」


 このマリーという女性。魔力が安定している中で効率良く魔術を放ち、最大限の威力を平気な顔して出してきます。言い換えれば強いです。


「ふふ、ワタクシはこう見えてそこそこ強いわよ。燃えよ……『火球』!」

「ちょっと戦術を変えてみますか……久々に鉱石の精霊らしい事をしてみます!」

「へえ、見せてごらん!」

「来てください! 『アメジスト!』」

 

 ボクの周囲にいくつもの紫色の粒子が舞い、それらが少しずつ成長。やがてキラキラと輝く壁となり周囲をグルグルと回ります。


「へえ、綺麗ね。何その精霊術」

「鉱石の『アメジスト』は魔術防御に特化した物質です。これで魔術も一安心です」

「そう。じゃあ……燃えて!」


 そう言ってマリーはボクに向かって魔術で生成した火の玉を放ちます。だからその容赦の無い行動はなんなのですか!


 しかし大きな爆音を立て周囲に炎をまき散らすも、ボクには届きません。

 ……ん? 周囲の砂が燃えてますね……これは使えそうです。

 ここから反撃の時間ですね。


「すごいね。でもワタクシの火の玉とそちらの『あめじすと?』 は何処まで耐えられるかしら?」

「耐えて見せます。そして耐えた先はボクの勝ちです」

「それ、あの船長との戦闘で使えなかったの?」


 シャルドネが何か不服な視線でボクを見ます。いや、鉱石の生成は負担が大きすぎて疲れるのですよ。

 それにあの大砲は魔力増加やその玉の勢い等もあるので、アメジストだけでは防げません。


 回避しつつボクは必要とあれば攻撃に当たり、また移動します。


「どうして所々でわざと当たるような事をするの?」

「ようやく気がつきましたか?」

「いえ、二発目で気がついたよ」

「まあ気がついたならネタばらしをしましょう。こういうことです!」


 ボクが地面に両手をつき念じます。もちろんこれも精霊術です。


 ここの砂は高温で硝子(ガラス)に変わります。これも鉱石の一つで、それらは一つ一つが鋭く、凶器になります。

 マリーが火の玉を放ち、それを受け流して地面を燃やし、砂は硝子に変化します。

 周囲にそれらが沢山あるとすれば……。


「何よ……これ……」


 硝子(ガラス)だけを浮かし、その光景は星のごとく所々輝いています。


「これら一つ一つはとても鋭く、一気に襲えば貴女は穴だらけです。どうしますか?」


 その言葉に、マリーは両手を挙げました。


「さすが人間のはるか上に存在する概念ね。降参よ」


 その瞬間、ボクはほっとし、その場で疲れて倒れ込んでしまいました。


『心情読破』(心を読む神術)を使って一人称進行の部分も会話になってしまう書き方は、今後も使ってみようかと思います。

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