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落下、そして出会い


「神いいいいい! さすがにこれはひどすぎではないでしょうかあああああ!」


 問題です。

 ボクは今、どこにいるでしょうか?


 正解は、すごく高い場所にいます。

 そして絶賛落下中です。


「い、息できない! すごく苦しい!」


 精霊だからこそ今も生きているけど、魔力を持たない人間だったらすでに息絶えていたんじゃないかな!

 にしてもこれはまずい。さすがに精霊でもこの高度から落下したら、衝撃で体が分裂して精霊としての実体が保てなくなる。


「隕石、そうだ! 隕石だ!」


 ひらめきました。

 体の周囲を石で固めて、とにかく体が直接地面に叩きつけられないようにすれば、精霊としての実体は保たれるはず。

 思い立ったら即行動。じゃないと本来ありえない死が訪れてしまうだろう。


「精霊としての力を開放! 周囲に高密度な石を纏え!」


 叫んだ瞬間、ボクの周囲に金色の石が出現し、それらがボクにまとわりついていく。


「足りない! もっと!」


 叫ぶ。ひたすらに叫ぶ。

 再度訪れた消える恐怖に怯えながらボクは何度も叫ぶ。

 落下しながら纏った石は、徐々に大きくなり、気が付けば大きな岩になっていた……と思う。


 思うという表現を使ったのには理由がある。なんせ今ボクは大きな岩の塊となり、目の前に見えるのは。


「何も見えない! いつ地面につくのかわからない! ちょ、心の準備ができない!」


 うっかりしてました。

 夢中になって石を身に纏っていたら、気が付けば目の前の風景すらも見えなくなり、感じるのは落下している浮遊感だけ。

 でも身に纏っている石を大きくすることは可能です。つまり、もしかしたらまだ足りないかも?


「と、とにかくもっと大きく!」


 纏った石を崩して外を見る事は可能です。でも見た瞬間墜落となると、それこそ精霊としての姿を保てなくなります。

 今できる事は、精霊として生き残る事。そして、必ずあの神々が住む世界に帰る事。そうじゃないとボクを転移で逃してくれた神に申し訳がない。


「うああああああ!」


 持てる限りの力を使い、ボクはひたすら石を纏いました。

 そしてとうとう訪れました。


 バアアアアアアン!


 すごく痛い以上の表現があったら、募集中です。

 浮遊感は無く、おそらく地面に突き刺さったのだと思います。

 纏った石に対して念じ、どれくらい石が損傷したかを確認。


「え……あと少しでボクの所まで来てたんだ」


 なんという事でしょう。

 纏った石、もとい岩は球体だったはずが、空中から落下したことにより、約半分ほど潰れていて、あと少しでボクは地面についていました。


「あ、危なかった……です」


 安堵しつつ、精霊としての意識や姿がある事を確認しましたが、少し違和感も感じます。


「小さい? いや、縮んでいるのですか?」


 そう一人ごとを漏らしつつ、岩の塊を少しづつ溶かし外へ出る。目の前には森が広がり(ボクの立っている所以外は)、地面にはいろいろな植物があって(ボクの立っているところ以外は)、よく見ると小さな動物たちがこちらを覗いていました(ボクの立っている……うん、あとでお墓を作りましょう)。


「……どれくらい高い場所から落ちたのかが分からないけど、地面を見る限りでは、目視できない場所でしょうか」


 足元を見ると、とても言葉では表現できないほど大きな穴が出来ていて、その中心にボクが立っています。

 とはいえ、精霊としての姿も残っているし、まずは無事な事に安堵します。

 とりあえず穴から這い上がり、再度森一面を見ました。神々が住む世界から見る風景と、実際に目で見る風景では異なり、ボクはこっちの方が良いなと直感的に感じました。

 そして、突如ボクの耳に声が聞こえました。


「だ、誰よ!」


 ボクが言いたいです。


 人の気配……というより、微力な魔力を感じていた為、そこに何かがいることは知っていました。


 見た目は十代前半の少女で、金色の髪にツンとした目。細い腕だが少し鍛えているのだろうか、若干の力を感じ取ることができます。

 腰にはダガー、背中にはリュックを背負っている。色鮮やかな服の装飾は、破れた箇所を縫い合わせたのだろうか。それにしても背が低いですね。


 しかし、微々たる魔力に驚くボクでもないですし、とりあえず無視をしていましたが、さすがに付近に隕石が落ちれば人も来ますよね。


「簡単に名乗るボクでは無いです。最初にそちらから名乗ってほしいです」


 あれ、ボクってこんな口調でしたっけ。思えば少し声も高いし、目線も少し低い。

 思えば、落ちてくる際に力を使っている頃から口調が変わっていった気がします。


「私はシャルドネ! 世界を旅する冒険者よ! 名乗ったから名乗りなさい!」

「ちょっと強引じゃないですか?」

「うるさい!」


 見た所、足が少し震えています。恐怖……でしょうか?


「落ち着いてください。ボクは怪しい……かどうかは判断してもらうとして、敵ではありません」

「証拠を見せなさい!」

「と言われましても。ボクはこの岩の中に入っていて、落ちてきたばかりなので……」

「あの空から降ってきた光の中に入っていたの!」

「ま、まあ」


 あ、さらに警戒されました。その証拠に、腰に装備していたダガーを抜き構えています。


「その岩を調べたいけれど、持ち主が近くにいるなら倒すしかないかしら」

「色々飛ばしてます! ちょっと冷静になりませんか!」

「いいえ、答えは早く出して行動しないと先手を取られる。さあ、おとなしく捕まりなさい!」


 その言葉の瞬間、ボクは右手を前に出して、金色に輝く石を放ちました。


「なっ!」


 放った先には、少女。

 ではなく、その後ろの大きな獣だった。

 気配を消して近づくその大きな獣は隙を見て襲うつもりだったのでしょうが、ボクには丸見えでした。


 金の石は勢いよく獣の頭に命中し、獣はその場で倒れました。命を絶つつもりはありませんでしたが、その流血から察するに死んでしまったでしょう。


「あ、ああ」

「あ、ごめんなさい。驚かせてしまい。後ろに獣が」


 言葉を続けようとした瞬間、少女はその場で倒れてしまいました。

 ……え、これって放置したらまずいですよね?

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