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検問を通った先

 検問を通ると、まず見えたのは大きな商店街でした。これは研究所というより一つの城下町と言っても過言ではありません。

 国……という訳でもありませんし、この地域を統治している人は居ないのでしょうか?


「シャルドネ。この辺りの偉い人……責任者はいるのですか?」

「建前上は居るわ。それがさっき私が話したマリーって人」

「そうなんですか?」


 驚きでした。検問で言っていたマリーたる人物は、ここの責任者だったのですね。


「と言っても、仕事ができて魔術の知識も人より多い。だから皆から頼られて自然とそういう雰囲気でなったらしいわ」

「そうなんですね。会うのが楽しみです」

「ちなみにすごく強い魔術師よ。一度手合わせしてみたら?」

「……それは避けたいですね」


 この世界は戦闘に飢えているのでしょうか。ボクは別に強者が居たら戦いたくなる趣味嗜好は持っていませんよ。

 というか、シャルドネが言う強い人って、もうやばいのではないですか?


 さて、手綱をつけた二人と同行していると、さすがに町では目立っていました。早めにそのマリーに会いに行きたいのですが、どこに居るのでしょう。


「安心しなさい。今まっすぐ向かっているから。引き渡しをした後、事情を話して、休憩にしましょう」

「はい。その後は……」

「分かっているわよ。魔術関係の書類を見れるかでしょ?」


 察しが良くて助かります。


「ありがとうございます。シャルドネ」

「いいわよ。これも……まあ暇つぶしよ」

「そういう事にしておきます」


 そして歩くこと数十分。到着した先は。



 とっても大きなお城でした。



 いやいや、もうお城ですよ。誰がどう見てもお城ですよ。

 後ろの方にすごく大きな建物があるなーと思ってましたが、近くで見るとその迫力に圧倒されます。

 しかもそんな大きな城を隠すほどの検問所の壁の高さを考えると、相当な技術と膨大な時間がかかったのではと思います。


「魔術が進歩しているからでしょうか」

「そうね。魔術と建築が調和してこのような施設が作れたらしいわ。ここから南西に向かえば岩の地という場所があって、そこは鉱石が取れるらしいから、そこでも建築技術や細工の技術が優れているそうよ」

「それは気になりますね。次の目標も決まりました」

「まあ、そこには用があったし、別に良いけど」


 岩の地。やはり名前が無いことに違和感を覚えつつボク達はまた一歩歩きます。


「けっ。ここで何をされるのやら」

「兄貴。まだ手綱は壊せませんか?」

「ああ。無理だ。これは……何か魔力でも込められているのか?」


 いえ、鉄のみで作られた手綱です。ちょっと強度を増すために細工はしましたが。


「貴方たちには色々と話してもらうからね。その肉体強化についてや、人質等など。覚悟して欲しいわ」

「はっ。そんな脅しで俺たちがビビるかよ」

「……そう言ってられるかしら?」

「何?」


 その瞬間、目の前の扉が開きました。


 白衣を纏った女性。そして長い髪は紫で、それを二つにまとめています。いわゆるツインテールですね。

 眼鏡をつけている姿からは、一見知的な雰囲気を感じ取れます。

 しかし次の一言で、ボクは一瞬動揺しました。


「ようこそ。『被写体』諸君! ワタクシの研究所へ!」


 あ、これは危ないやつです。


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