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魔術研究所の検問検査

 門番の案内に誘導されて、ようやくボク達は目的地に到着しました。


「次」


 雪の地の魔術研究所はとても大きな所です。

 中に入るには検問を通る必要があり、そこでは持ち物や何をするかを聞かれています。

 人によっては神術『心情読破』を使って心を読み、犯罪を企んでいないか等も読まれます。


「ボクが精霊というのはバレないでしょうか」

「そこはなんとかしなさいよ。それと名乗るときは私の同行者の魔術師にしておきなさい。錬金術師だと色々面倒だから」


 ボク達と同行していた船長兄弟は、ようやくマンドラゴラの悲鳴から目が覚め、ふらつきながらも歩いていました。

 手を縛られ、ボク達が無理矢理引っ張らない限りは歩こうとしません。


「けっ。情けねえ」

「兄貴。なんとかならねえかな?」


 好機があればすぐに逃げようとするため、油断できません。

 ここ数日は交代制で睡眠を取ったりと工夫をしていましたが、さすがに今日はゆっくり休みたいです。本来睡眠を必要としないボクですら、眠いと感じます。この体になったからでしょうか。


「しかもこの手綱、本当に頑丈だ。何だよ!」


 ボクが鉄を加工した最上級の手綱は、さすがの船長兄弟でも壊せないそうです。それもそうですよね。『ボク』が作ったのですから!

 ミルダに錬金術師だと言われたボクです。これくらいは当然の一品ですよ!


「何鼻を鳴らしているのよ。次は私達の番よ」

「あ、はい」


 一人で盛り上がっている間にボク達の番となりました。


「次」

「シャルドネよ。ここへは一度来ているはずよ。中の知り合いのマリーに会いに来たわ」

「うむシャルドネか。記録を探すから待ってろ」


 門番が分厚い資料に手をかざして何かを唱えます。陣が出ているので魔術の類いでしょうか。


「うむ。よろしい。では次」

「ゴルドです。魔術師です。シャルドネの同行者です(ゴルドです。せ==師です。シャルドネの同行者です)」

「う……む? 少し心を読むのを失敗したか……?」

「そうなのですか?」

「ふむ、ちなみに特技の魔術は?」


 おっと困りました。基本何でもできるのですが、ここは何を披露しましょう。


「うむ? 何でもできるのか。なかなか上位な魔術師だな」

「魔術はあくまで仕事上の職業です。今回は精霊術について聞きたくここへ来ました」

「ほう。まあシャルドネ殿の同行者なら良いだろう。そして……」


 なんとかボクは通りました。あ、心情読破の偽装に少し不安がありますが、今回のように心の声を偽装する『心情偽装』は今後も有効に使えそうですね。

 さて、問題の二人となります。


「へっ。もしかしてここへ入れなければ自由か?」

「そうですね兄貴」


 明らかに何かを企んでいますね。困った人たちです。


「二人の名前は?」

「「……」」


 当然無言ですよね。怪しければ入れない。これは仕方がありません。心を読んでボクが説明するとします。


「ガーラとジュラルです」

「てめえ! 心読んだな!」

「こいつ!」


 初めて二人の名前を知りました。兄がガーラ。弟がジュラルで、見た目は厳ついスキンヘッド。そしてそっくりなので実は言うとボクの感性ではどちらが兄か判別つきません。常に語尾に(兄)とか言って欲しいくらいです。


「うむ。二人は犯罪の指名手配を受けているな」

「へへ。そうだな。じゃあここでおさらばだな」

「ふ……む? どうしてここに来たんだ?」


 門番の疑問にはシャルドネが答えます。来た理由がなければこの検問に来た意味がありません。


「それは、この二人を調べて貰う為よ。マリーにこの二人の魔力について調べて貰って、異常が無いか研究してもらおうと思って」

「ほう。ではもしこの二人がこの場で入ることができないとなったら?」

「それは困るけれど、軍にこのまま引き渡せないかしら?」

「何!」

「おいおい冗談じゃねえぞ!」


 検問所で鳴り響く二人の声。あまり事を大きくにしたくないのですが。


「うむ、引き渡しに関しては問題ない。指名手配犯だから報酬に宿くらいは手配できるだろう」

「それは良いわね。貴方たちを引き渡して宿代が浮くなら、マンドラゴラは別なところで有効に使おうかしら」

「ふざけるな! けっ。分かったよ。この二人の言うことに絶対の服従をしよう」

「俺もだ」

「ふむ、嘘は言ってないが、少々怪しい。念のためシャルドネの署名を願う」

「分かったわ」


 署名は、同行者が何かをした際に責任を負うという類いの物でした。

 署名を終えた後にシャルドネは自信の頭をツンツンと触れます。何かのサインでしょうか。検問の人がシャルドネを見て『心情読破』を使っています。

 ボクも気になったので覗いてみました。


(研究が終えたら軍に引き渡せるかしら?)


 その心の声に対して、検問はコクリとうなずき、シャルドネは書類を渡します。


「では入れ。問題は起こさないでくれ」

「ええ。ありがとう」

「けっ」

「くそっ」


 それぞれ違う感想を言う中、ボクはこの魔術研究所に少しだけ興味がありました。

 もしかしたら、ここに頂点の神を倒す術があるかもしれませんから。

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