鉱石精霊とシャルドネ 対 船長兄
「シャルドネ。無事ですか?」
港の船員をなんとか戦意喪失させ、船に乗り込むと、まず目に入ったのは血だらけのシャルドネでした。
「ふふ、これが無事に見えるなら、ゴルドの目は節穴確定ね」
「予想より無事で良かったです」
甲板には数人の船員。ボクが港の船員を倒している間に甲板の船員くらいは倒せるかと思いましたが、そんな余裕すら無かったのでしょうか。
「娘。強いな。俺の強化された肉体に耐えるとはな」
「その強化、あなたの体に合ってないようね。悲鳴を上げているわ」
「余計な心配だ。お前がここで朽ち果てれば、俺の体も休めるものだ」
つまりこの魔力は何かしらの強化魔術ということでしょうか。ともあれ、まずは早めの対処に専念しなければなりません。
「シャルドネにしては珍しく。雑な戦いですね。ええい!」
「ぐあ!」
小石を後ろに飛ばし、何も無いように見えていた場所から悲鳴と共に、男が現れ倒れ込む。
『認識阻害』を使って隠れていたそうですが、この世界にも神術を使える魔術師が居るのですね。
「気配で知ってたわよ。相手にする価値が無かっただけよ」
「ふん、ならば俺の拳で息絶えるが良い」
「てい!」
凄まじい速さでシャルドネに向かって殴りかかる船長だったが、ギリギリのタイミングでシャルドネを引きよせる。
「ほう、ただの魔術師では無いな」
船長に目をつけられたら少し厄介です。なんせ精霊のボクでさえ相手にしたくないと感じる相手です。
「再度あの作戦で行くわよ!」
「わ、わかりました」
再度となると、おそらく足に穴を開けて下半身だけを落とし、そこへ殴りかかる作戦でしょう。
多少の不安はありますが、今はシャルドネのその力を信じるしかありません。
「てえええい!」
勢いよくシャルドネが突っ込み打撃を与える。それに対してすべて防御する船長。
「ふん、全く効かぬ!」
大きく振りかぶって、殴りかかろうとする。ですがそれよりもボクの魔術の方が早いです!
「今です!」
ボクのかけ声と同時に船長の足下は崩れ、船長の下半身は船の甲板に埋まる。
「くらええええ!」
シャルドネの左腕から放たれる全力の拳。
そして鳴り響く殴った後の音。
そして船長は。
「良い作戦だった。と言っておこう」
シャルドネの腕をしっかりと受け止めていた。
「え、ちょ、そ」
「だが、爪が甘いわあああ!」
パアン!
船長の掴んでいたモノがはじけ出す。
「ぐ、があああああああああ!」
シャルドネも目の前の起きた光景に、悲鳴を上げる。当然です。腕が破裂したら誰でも驚きます。
「う、うでがあああああああ」
「……と叫べば満足かしら?」
「な、何! う、うわ! 目に砂が!」
ただ、本当に自分の腕だったら、その場で気を失ってたでしょう。
瞬時に腕に『認識阻害』を使い、そして腕に擬態した土の模型をシャルドネに貼りつかせました。
というか、腕を張り付かせただけなのに、その対応力と言いますか、それを使ってくださいと言って無いのに使う辺り、やはりこの人間は察する力の度合いがすごいです。
「良い事を教えてあげるわ。私は右利きよ。右にひねった体から放たれる拳って、どっちから来るかわかる?」
「……右から」
「正解。では、お休み!」
思いっきり振りかぶった右腕は見事に腹部に直撃し、弟同様に気を失う船長の姿がそこにありました。
いとです。三話に続いた戦闘となりました。次回は復興やら旅たちやらとなります。




