予想以上の強敵
「何よあれ! 土壁の強度が足りなかったんじゃ無い!」
「何を言っているんですか! シャルドネの拳に耐えたんです! 強度はお墨付きじゃ無いですか!」
ボクとシャルドネは言い合ってました。
当然です。
シャルドネが殴った土壁は大砲へ向かい、最後の土壁を破壊する寸前で、族の船長が殴って破壊したのです。
「あれは異常です。そもそも殴って壊せるモノではありません!」
「じゃあどうするのよ!」
「分かりません! でも、少なくとも今すごく危険というのだけは断言できます!」
族の大船から船員が港に入ってきました。どうやら大砲での攻撃は諦めたのでしょうか。
「まさかあの船員達も船長と同じくらい強いとは言わないわよね?」
「大丈夫です! 弱いです!」
「んだと! こらああああ!」
ボクのはっきりとした発言に、船員達は怒ってしまいました。
違うんです。こんな状況ですから、優しく包んで言う単語が出なかっただけです!
「船長をなんとかこっちに来させれば……ちょっと船員は埋まっててください! 『砂壁』!」
「今はとにかく時間稼ぎかしら。せい!」
話をしながらも船員を次々と倒します。
船員が居なくなれば、船長が来るのも時間の問題でしょう。
そう思った矢先、船を見ると……
船長が大砲の形をした杖を持って、ボク達に向かって投げようと構えていました。
「ガキが……俺の力を侮るなよ!」
アレはまずいです。魔術なら防げますが、現物は話が異なります。そして魔力で強化された船長から放たれた物体は、シャルドネにも防げないでしょう。
「さすがにアレはまずいわね。ゴルド。方法は?」
黒光りする大砲。あの物質は……。
「ボクの所へ! できるだけ離れないでください!」
「分かったわ」
シャルドネは目の前の船員を倒して、ボクに近づきます。
「くらえええええ!」
大砲を思い切り投げ、その物はボク達にまっすぐと飛んでくる。
鉄の大砲ということに賭けて。
「無駄です!」
バリン!
表現をするならこんな音でしょうか。
ボクは鉱石の精霊です。鉱石で作られた物であれば、それを溶かしたり形を変えたりすることは可能です。
だからこそ、この大砲が鉄であることに賭け、ボクは手を出し『分解』しました。
「があ!」
「ゴルド!」
鉄を分解し、周囲に砂の様な輝く粒子をまき散らすも、投げられた鉄の勢いは消すことができず、反動を受けました。結構痛いです。
「だ、大丈夫です。シャルドネの拳よりは痛くないです」
「強がっちゃって。でも、良くやったわ」
これで大砲は全て無くなり、船からの攻撃は無くなりました。
「ゴルド。今度は大丈夫よね!」
「ええ、今飛ばします!」
シャルドネの足下に魔力を集中させ、風を起こさせます。ただの浮遊では勢いが足りないので、ここは吹っ飛ばす作戦で行きます。
「周囲の船員はボクがなんとかします! シャルドネは船長を『足止め』してください!」
「ふん、そうさせてもらうわね!」
シャルドネを船へ飛ばし、再度構える。
「けっ。女みたいな顔つきの子供が、強がるなよ!」
やっぱりボクは女の子にしか見えないのでしょうか。
とりあえず今ボクに暴言を吐いた船員さんは、一生笑えなくなる『砂の中でくすぐられる刑』に処してから、周囲の船員をなんとかします。




