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最初の戦い

 どの世界にも抗ってはいけない存在、逆らってはいけない暗黙のルールが存在する。


 ボクの住む神々や精霊たちが住むこの世界でも、その暗黙のルールが存在する。


 そしてボクは今、この神々の住む世界の中で一番恐れられている神に、喧嘩を売っている最中だった。



「下位精霊が私に逆らうなんて、愚か過ぎないかしら?」

「でもボクは、あなたの行動に不満がある!」


 ボクの目の前には神々しく輝く神が立っている。そしてその神はボクが住むこの世界の頂点に立ち、一番恐れられている存在でもある。


「私のやり方に不満ね……ではあなたにも消えてもらうしか無いわ」

「あなた『にも』。つまりボクと同じ行動を取った精霊がいたのですね!」

「ええ。そして私は迷わずこの右手を突き出して、ポンっと消すの。不思議でしょ? この力を使うと周辺の精霊の記憶も消えるのよ?」


 言っている意味が分からない。

 自分の気に入らない存在があれば消す。そんな神がこの神々が住む世界に存在して良いのだろうか。

 誰も行動を起こさないと思っていたけれど、ボクよりも前にこうして抗った精霊がいたという事は信じがたい。記憶が消えるというと、実は知り合いだった精霊も消されていたのだろうか。


「さて、鉱石の精霊さん。最後に言い残すことはあるかしら?」

「……るってる」

「なんですって?」


「あなたは狂ってる!」


 ボクの右手から金色に輝く石を生成し、それを全力で目の前の神に投げつける。

 そしてその全力の攻撃は……


 キィン!


 と、音を立ててはじかれてしまった。


「女神様。お怪我は?」

「ふふ、別にあのくらい、当たっても良かったのに」

「そうはいきません」


 いつも頂点の神の隣に立つ側近が、目に見えない速さで剣を抜き、ボクの金色の石を弾いていた。


「さて、言い残しは無いわね。そろそろ『いつもの』をやって、暇つぶしに戻るわよ」

「……はい」


 側近との会話に少し違和感を感じつつ、ボクは構える。

 目の前の神は言った。右手から何かを出して、相手を消す。と、つまり神術(しんじゅつ)の類の何かをするのだろう。


「さようなら」


 パシュ!


「!」


 一瞬だった。そして偶然だった。


 頂点の神から放たれた光の球体は一直線にボクへ向かい、当たる瞬間ボクは手から金色の鉱石を出し、光の球体はそれによって防げた。

 相手をよく見ていたからこそ出来た偶然だった。


「防がれた? これは……厄介ね」

「はあ、はあ」


 頂点の神は防がれた事に対し予想外だったのか、少し苦い顔をする。

 ボクも何が起こったかも理解できないまま、再度構える。


「でも、さすがに数発撃てば消えてくれるよね?」

「はあ、はあ」


 恐怖。


 本来精霊には無いはずの感情なのに、この時ばかりは恐怖という感情が初めて理解できた気がする。そして、その感情が増すごとに集中力が切れ、集中力が薄れてくる。

 攻撃が来る前にボクは数発金色の石を投げた。


「やああ!」

「無駄ですよ」


 やはり側近の剣で弾かれ、ボクの攻撃は届かない。


「じゃあ、さようなら。鉱石の精霊さん」


 パシュ! パシュ!


 光の球体が数発放たれ、ボクは終わったと思った。


 しかし、数秒待っても意識が消える事は無く、反射的に閉じていた目を開くと、目の前には大きくて、老いていて、大きな杖を持つ者が立っていた。


「あら、鉱石を司る神の登場? どうしたのかしら?」

「どうしたも、ワシの部下が無礼を働いたと聞いてな。どうじゃ、ワシに免じて許してくれんかの?」

「ダメね。この世界では私が全て。わかるでしょ?」


 二人の会話に入れないボク。しかしこのままではボクの父とも言える鉱石の神が危険である。


「か、神よ。ボクの事は放ってください。ボクが悪いのです!」

「ふん、知った事。ワシはいつか訪れるこの日を待っていたに過ぎんよ」

「待っていた?」


 疑問に思いつつ、ボクの言葉を遮るように頂点の神が鉱石の神に話しかける。


「予想ができたのであれば好都合。今のうちにあなたにも消えてもらおうかしら?」

「ワシも神を名乗る以上、安易に負ける訳にもいかぬよ」


 そう言って鉱石の神は振り向く。


「良いか。お前の使命は一つ。彼の女神を抑える者を連れて来い! それがワシの最後の頼みだ」

「神、何を言っているんですか!」


 最後という単語に不安と疑問が浮かぶ。


「ふふ、ワシは楽しかったよ。運が良ければまた会おうぞ!」


 足元には魔術的な陣が描かれ光る。これは転移の類のものだ。


「や、か、神! なりません!」

「待っとる。そして連れてこい。鉱石の精霊よ!」


 そしてボクは、転移の魔術に逆らうことが出来ず、この神々の住む世界から飛ばされてしまった。


小さい頃、もしくは今やっている王道のファンタジー。そういったものから影響を受けて書かせていただいてます。少しでもおもしろいと思ってくださったら幸いです。また、気に入っていただけたら是非ブックマークをお願いします!

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