08.
あれから一週間。
返事をうやむやにし続けるまま夏休みも始まってしまい、会う頻度が少なくなってホッとしているのか、残念に思ってるのかよく分からなくなっている。
りんりん学校の準備で一日中忙しくしている日もあって、他のことを考える余裕が少なくなっている。
今日も帰ってから咲桜が夕ご飯の時間に起こしてくれるまでしばらく寝ていた。
「リリー、お疲れ?」
「つかれてるよ〜。咲桜は? 作品どう?」
「もうすぐ終わりそう。ちょっといい刺激も貰ったから」
「ふう〜ん?」
咲桜は最近は先輩とうまく行っているみたいで、作品に取り掛かる時間と集中力が長期休みに入ったからというのもあるけど、前よりかなり長くなっている気がする。
部屋にあんまり帰ってないから分からないけど、毎日学校から帰った時、朝起きた時に見かける絵が前の日よりもずっとずっと輝いて見えるから。
なんだか複雑な気持ちだ。
私じゃなくて先輩のお陰なのか……私じゃ力になれなかったのかな? なんて思ったりして。
順調そうに見える咲桜と比べると、私は全然進んでいない。
むしろ後退してるんじゃないか? とすら思える。嫌いじゃない誰かを避けるなんてことをしたの、初めてかもしれない。
「リリ、何か悩み事?」
「ちょっとね。咲桜の先輩に嫉妬してる」
「……!」
目を真ん丸に開いて、食事中だった全ての動作を停止して私を見つめる咲桜。
「なんて言うかさ、私の咲桜に出来る事の一部を取られた感じがするんだ。勉強とか、相談事とか……」
「そう、思っててくれたんだ?」
「最近気付かされた」
「ふぅん……。で、リリはどうしたいの?」
どう、とは?
問い返すと、告白してきた娘とのこと、と返される。
「正直に言うとさ、わからないんだ」
「まだ?」
「うん。まだ」
そのまま沈黙が続き、私達二人は食事を終えた。