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05.

 その初対面の女の子と会ったのは先週。

 どうせいつもみたいにあっさり終わるだろうとなんの感情も抱かずに呼び出された、夕陽が差し込む放課後の最上階。


「西園寺先輩……その、あの……す、好きです! 以前先輩とぶつかってしまった時に優しく声をかけて頂いて、そのときになんというか……トクンときて、それからずっとあなたのことしか考えられなくなってしまいました」

「そっか」

「私と……お付き合いしてください……!」


 珍しく本気の告白か〜なんて考えつつ、いつ私はこんなフラグを立ててしまったのかと頭の隅で思い出させる。


 私に限らず、告白してくる人のタイプには二通りあると私は思っている。

 まずはただの軽いノリ。友達の延長みたいな、からかわれたりその場の勢いで告白してくるような人。

 私はこういう人たちが苦手だ。

 なぜならすぐ別れてしまう確率が高いから。


 私はお付き合いすると言うことは生涯を共に遂げても構わないと思える相手にしようと心に決めている。

 何事も経験、何回も付き合ったり別れたりすることで経験を積むんだ〜みたいな事を言う人たちを微塵も理解出来ない私は、そういう告白をされたら即答することにしている。

『ごめんね』

 と。


 ただ、二つ目の場合……今回みたいな本気の告白のときはそうも言っていられない。

 圧倒的に本気の告白の回数は少ないとは言え、される度に毎回返事に苦慮する。


 苦しい想いをして、勇気を振り絞って私に想いを伝えてくれたのだから、あっさり断るなんてことは出来ないししたくない。

 相手の心を汲み取りつつもしっかり目を見て、誰とも付き合うつもりが無いことを伝える。


 付き合うつもりがないと言えば嘘になるかもしれないけれど、今までの人生、全く引き下がられることしかなく何もなかったのだ。


 今回もそのパターンかな?

 と思いながら目の前で眼をぎゅっと閉じて緊張を全身で感じながらも逃げずにきちんと向き合ってくれているこの女の子を見つめる。


 あぁ、そう言えばこの娘……


「君、変な魔法陣みたいな紙束を持ってた娘かな?」

「……!」

「あ、やっぱり?」

「覚えてくれてたんですか!?」

「んー、顔だけは、かな。あんまりいないからね」


 あまりの衝撃的な出会いはうっすらとだけど今も覚えている。

 あの日の放課後、生徒会室に向かいながらその日の予定を考えて歩いていたときに、曲がり角で黒いローブを着た女の子とぶつかってしまったのだ。

 明らかな不注意。ぶつかった勢いで体勢を崩して転びかけた女の子を慌てて抱きとめ、しっかりと両足で立たせた後、ぶつかると同時にまき散らされてしまった女の子の持っていた紙の束を拾い始めた。


 その子が慌てて止めるような素振りを見せる中、遠慮しないでいいのにとはじめの一枚目を手に取ったとき目に飛び込んできた魔法陣やら訳の分からない言語が一面にびっしり書いてある気味の悪い書類の数々。

 チラリと女の子を見上げると真っ赤になって固まっているその子と目があってそこでやっと、慌てていた理由を理解したのだ。


 それはつまり、慌てていたのは先輩に拾わせて申し訳なく思わないためではなくて、自分が持っている恥ずかしいコレクションが見られるのが嫌だったから、ということに。


「おかしな人だな。って思いますか?」

「いや、私にはよく分からない分野だけど君の大切な趣味だもん。可笑しいとは思わないし馬鹿にもしないよ」

「……ほ、本当ですか!?」

「嘘は言わないよ。もっと自分に自信持ったら?」


 そんな程度の会話。

 そこで私の何処に惚れる要素があったのかと言われるといまいちよくわからない。


「ありがとうございます!! 先輩のおかげで勇気が出ました!!」


 と握手を求められ、結局最後まで何だったのかはわからないものの、翌週から黒ローブを羽織った女の子が云々という噂が流れ出したことにより、部屋の隅で頭を抱えることになってしまったことは秘密だ。


 これが、彼女との出会いだった。

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