02.
何やかんやで生徒会に副会長という仰々しい役職を携えて入らされた私は、正直に言うとまあまあ楽しい時間を過ごすことが出来ていた。
はじめは何ていう面倒事を押し付けやがって……! なんて思ったりもしたけれど、清歌先輩を中心に時々姫奏さんも顔を出したり三年生の先輩方が引き続きのために仕事を手伝ってくれるので、それまで毎日のように友達と遊んだり部屋でのんびりしていた私が大きく生徒会に時間を割かなければいけなくなった。と言った事情もまったくなくむしろ面白さを感じるくらいだったから、生徒会に入るのも悪くないじゃん。そう思えるようになった。
生徒会役員選挙の直後にあった期末考査もなんとか終えると、あっという間に夏休みに突入した。
部活の合宿なんてものもある筈なく、夏期講習も面倒だからパス。そもそも生徒会は悪名高い臨海・林間学校ーーりんりん学校の準備で大忙しだ。
大体は去年の生徒会が計画したものだけど、それを形にするのは私たち。
「せんぱ〜い、面倒くさいんですけど……」
「面倒なのは仕方ないけど、後にも退けないから頑張りましょう?」
「は〜い……」
りんりん学校が悪名高いと言われているのにはとある理由がある。それが正に今私たちが準備をしている肝試し。
通称、悲鳴と嬌声の夜。
女の子を好きな女の子が多く、カップルもそれなりにいるこの学校にとっての宿泊行事は大きな意味を伴う。部屋割りや行動の制限が少ないため、周りの目を気にせずにいちゃいちゃするカップルが多く参加する。
特に肝試しは暗闇の中というカップル達大歓喜のイベント。
それが意味することは……まあそういう事だ。
私には無縁なイベントではあるけれど、どうやら姫奏さんが参加するらしいから清歌先輩は忙しくなるのだろう。
恋人など一度も出来たことないし、そもそも気になる人もいない私にはただただ頭の痛いだけということははっきりしている。
女子校にしか通ったことがないから、男性から告白された事はないけれど、何度も告白された経験はある。
ついこの間もクラスメイトから告白された。
でも、私にはいまいち“恋”とか“愛”という感情は分からなくて。
全てお断りしてきた。
なぜだか同級生とか後輩とかに告白されることが多くて、そんなに私って好かれやすい性格なのかと頭を捻っているものの、お断りしても『そうだよね、わたしと西園寺さんじゃ釣り合わないし』『やっぱり先輩だと理想が高すぎました』なんて言われてあっさり引き下がられる始末。
私自身そんな雰囲気を出してるつもりはないんだけど、聞くところによるとどうやらお友達付き合いと恋人付き合いは違うらしい。
……お断りされても何度もアタックしてきてくれるような、情熱的な人がいいな。なんて思ったりしてみても、そんな人は現れたことがなかった。
私にとっての恋という感情は、ただただ難しい、よくわからないものだった。