01.
「清歌先輩、最近部活来てないらしいじゃないですか。どうしたんですか? 五行先輩と学校外でお熱だからですか?」
「幽霊部員になりかけてる莉凜ちゃんだけには言われたくなかったかな〜」
「別に展示用の作品は作ってるじゃないですか。あと家で華道やらされてたから別にいいかなって」
「なんで華道部はいったの!?」
「楽そうだったからですよ」
「……全くもう。そういうところが莉凜ちゃんらしいというか」
ため息を吐かれる。
華道部の先輩である御津清歌先輩は今、昨年度の生徒会長で今年卒業した五行姫奏先輩の恋人だ。
五行先輩と清歌先輩のいちゃいちゃラブラブっぷりは校内でも有名で、五行先輩が卒業して二月ほど経った現在でも噂は留まる事を知らない。
むしろ新しい環境でのお付き合いがなんたらという噂も出てきているそうだから、そっちにかまけて部活とかに来てないんじゃないかと思ったのだど。
「で、実際のところどうなんですか」
「な、なにが?」
「私は簡単に誤魔化されませんよ。それに声上擦ってますし」
「うぐっ……。はぁ、全くもう」
私と清歌先輩との交友は、高校に進級したことで新しいことを始めてみようかと、昔やっていた華道部に入ってから。
噂では、めっちゃ大人しくておどおどしていたらしいのだけれど、五行先輩とお付き合いをはじめて今みたいになったとか。
お二人を見守る会なんて言うのも出来たらしく、ファンもたくさん居るらしい。
私は興味ないから入ってない。なんてことはない。
女の子はみんな噂好きの恋愛話大好きな遺伝子を持ってるから、みんな大挙して美味しそうな話には飛びついてく。
私だって例外じゃない。
そういう個人的な興味もあって華道部に入ったというのも理由の一つである。
「……まあ、順調かな」
「先輩の言う順調はそろそろ子供が出来るのが近いという意味での順調ですか?」
「なっ……! 違うわよ!!」
「またまた」
「うう〜っ! ……今度姫奏に言って仕返ししてもらうからね」
「ちょっ、それとこれは話が違いますよ」
「ふん。そういう事を言うってことは、わたしと姫奏との関係を踏み込んで考えてるんでしょう? 姫奏も関わってる話だし」
五行先輩……姫奏さんと私は家の繋がりもあって、風紀委員長の櫻井莉那先輩共々昔からの顔なじみだ。
昔からお姉さんみたいに接してくれている人ではあるけれど、本気で怒ったときには地球が終わるんじゃないかというくらいの恐怖を覚える。
昔一度だけ怒られたことがあって、そのときはトラウマで一週間くらい布団から恐怖のあまり出られなかった。
誇張も混じったけれど、数日は生きた心地がしなかったのは事実だ。
それ以降姫奏さんだけには絶対に逆らうまいという誓いを立てている。
それくらい避けたいことを武器に脅してくる清歌先輩。
「ごめんなさいごめんなさい!」
「じゃあ、姫奏に言わない代わりに一つだけわたしのお願いを聞いてくれるかな?」
「喜んで!」
悔しいけど致し方ない。
まあせいぜいちょっとした用事を頼まれるだけだろう。
そう舐めてかかってたら、とんでもない爆弾を持たされた。
「じゃあさ、わたしを手伝って、莉凜ちゃん生徒会の副会長やってよ」
「……えっ、はっ?」
「生徒会副会長、やって?」
「……ええっ!?」
してやったり! っていう清歌先輩のあの顔を思い出すだけでムカつく!
全くもう……。