蛍は水面を照らす
生を受けて千年の間に初めて欲しいと思ったのは、たった一人の人間の男だった。
国が一つしかない異世界には異形の主達が存在しており、東西南北の四方から静かに世界を見守っていた。
西の沼の主である紅螢は人魚に似た異形の姿をしており、美しい沼地で静かに暮らしていた。
平和だが少し孤独を感じていた紅螢の生活は、一人の人間の男によりかつてないほどの輝きに満ちた生活へと変化した。
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前作『刹那』と同じ世界での話で時間軸は前作の3、400年前です。単品で読めるよう書いたつもりですが、多少話が繋がっているので前作含めて読んでいただけると嬉しいです。