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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第10章 再びドラゴニアに
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和平の話について

 アース騎士団長は、おもむろに「え~」と呼吸を整えた後、

「では、まず……、帝国宰相からありました和平の話を……」

「よろしくお願いします」

「実は、帝国宰相の話があったからこそ、我々ドラゴニア騎士団の総意として、わが君には牢に蟄居していただこうということになったのですが……」

 アース騎士団長によれば、三匹のブタさん(アート公、ウェストゲート公、サムストック公)が派遣した騎士団が、ドラゴニアで傍若無人のやりたい放題を始めて(御曹司もそれを不問に付して)しばらくすると、帝国宰相の密使がドラゴニアン・ハート城に来訪し、非常に細かい字がビッシリと書かれた手紙を騎士団長に渡していったという。

 その手紙には、①現在、ドラゴニアでは、マーチャント商会との間に債務の返済を巡って緊張状態が発生しているが、こういったことに鑑みると、御曹司の統治能力に関しては疑問を持たざるを得ないこと、②諸侯の間でも、御曹司にドラゴニアを任せるのは不安であるため、領地の返上や隠居を求める声が強く上がってきていること、③帝国政府としては、そういった声を無視することができないため、御曹司が自発的に領地の返上等を行うならよいが、そうしない場合には、実力でもって御曹司のドラゴニアからの排除を行わざるを得なくなる可能性があること、④もし、事態が実力行使を伴っての御曹司の排除に至った場合には、ドラゴニアの荒廃や、騎士、領民の更なる困窮を避けることができなくなるが、帝国政府としては、そのようなことは望んでいないこと、⑤そういった最悪の結果に至る前に、どのような形であれ、御曹司が領地を返上し隠居したという事実が誰の目にも明らかになれば、帝国政府としては、マーチャント商会に対する債務の返済等も含め、ドラゴニアに対して寛大な措置を執る用意があること、以上の五点が書かれていたという。


「ということは、言い換えれば、帝国宰相の脅迫ということでしょうか?」

 すると、アース騎士団長は、「ははは……」と苦笑しながら、

「確かに、そのようにも言えます。ただ、帝国宰相が提案してきたところによれば、不利益を被るのは、わが君ただ一人なのです。つまり……」

 アース騎士団長は、話を続けた。すなわち、手紙には、ドラゴニアの騎士と領民に非は一切ないことから、宰相自身もドラゴニアの取りつぶし(帝国政府による直轄支配に移行すること)は望んでおらず、有り体に言えば、トップの首のすげ替え、具体的には、御曹司をドラゴニア侯の地位から更迭し、代わりにローレンス・ダン・ランドル・グローリアスなる者をその後任とする(もう少し敷衍すれば、そのグローリアスを御曹司の養子かつ後継者とする)ことができれば、それで満足する旨が書かれていたという。なお、トップの首のすげ替え以外には、ドラゴニアにおける民事上・刑事上・私法上・公法上の一切の権利義務関係に関して現状変更はないということと、マーチャント商会等への債務の返済に関しては、帝国政府による特別融資の制度等の新設を約束することが、何度も念を押されていたとのこと。

 わたしは、完全に納得したわけではないが、「ふ~ん」と二、三度うなずき、

「そういうことなら、まあ、なんとなく分かるような気がします」

「でしょう。ですから、我々騎士団も納得して、わが君には、いわゆる『泣いてもらおう』ということになったのです」


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