表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第2章 ドラゴニアン・ハート城にて
9/293

ドラゴニア

 ドラゴニアは、地理的には帝都の西方、帝都とウェルシーのほぼ中間に位置しており、帝国北中部を流れる大河へと流れ込む支流が(中心都市ドラゴニアン・ハートにおいて更に二つの支流が合流しつつ)、ドラゴニア中央部を南から北に流れている。ドラゴニアの南東(つまり、帝都の方向)には、いかに隻眼の黒龍でも、その上をあっさりと飛び越すのは困難であろう(仮に可能だとしても、わたしやアンジェラは、高々度の低温により、アッという間に凍死してしまうだろう)標高の高い山々が連なっている。

 隻眼の黒龍は、帝都を出ると、まずは帝都に流れ込む大河の流れをさかのぼるように(つまり、西方に)向かって飛んだ。川の両側には、背の低い草に覆われた平原が広がっており、牧畜が営まれているのか、時折、(上空から見ると豆粒のような)羊の群れが見える。


 帝都を出て数日後、わたしたちを乗せた隻眼の黒龍は、ドラゴニアとの境に当たる山脈に到達した。ここからは、左右に連なる山々の間(つまり、峠の道の上空)を縫うように進む。

 飛行中、隻眼の黒龍は、おもむろに頭を下げて地上を見回し、

「この辺りはウェストゲート公の領地だよ」

 隻眼の黒龍の話によれば、西方から帝都方面に侵入する場合、現実的な侵攻路としては必ず(眼下に見える)この地域を通過しなければならないことから、このウェストゲートの地には、帝国建国当時、皇帝の一族が地域防衛の要として配置されたという。

 やがて、前方の山々の間に小さい町が見えた。この町の名称もウェストゲート。皇帝の一族が配された割には、支配領域は広くなさそうだ。なお、話によれば、皇帝の一族にあまり広い領地を与えないのが慣例だという。


「ところで、あの荷馬車の列は、なんなの?」

 ふと地上に目を遣ると、何十台もの荷馬車の列がウェストゲートの町を出て、東方に向かってノロノロと進んでいた。隻眼の黒龍は、じっと目を凝らすと、苦笑交じりの微妙な表情となって、「あれは…… 見て。マスターにも見覚えがあると思うけど、毎度おなじみの、あのマーク」

 荷馬車の列をよく見ると、「金貨の山に頭蓋骨」の旗印が何カ所にも掲げられていた。このマークは、確か、今まで何かと因縁があるマーチャント商会のシンボルだったはず。ということは、帝都に向かって物資を運ぶマーチャント商会の隊商の行列だろうか。せっかくの機会だから、「単なる事故」に見せかけて、荷馬車を焼き払ってしまいたい気もするが……

「お姉様、何か考え事ですか?」

 アンジェラも見ていることだから、あまり過激なことはやめておこう。


 それから、さらに数日が過ぎた。隻眼の黒龍は、今現在、ドラゴニアの中心都市、ドラゴニアン・ハートに向かって、(帝国北中部を流れる)大河の支流の上空を飛行中。

「懐かしいなあ。この辺りまで来ると、もう、ドラゴニアだね。ドラゴニアン・ハートまで、もうすぐかな」

 隻眼の黒龍は、豊かな農園が広がる地上を見渡しながら、感慨深げに言った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ