非常に背が低くて少しポッチャリとしたお坊ちゃんの正体
プチドラは、おもむろにわたしを見上げ、
「マスター、この前の『重武装人造人型兵器』の話、今はどうなってたっけ?」
「えっ? えっと、アレね。その話は、もちろん、覚えてるわ。忘れるはずがないでしょ。でも、話がまとまって、その後は……どうなったっけ」
わたしはハテと腕を組んだ。重武装人造人型兵器の話は、覚えていないわけでもなく、忘れたわけでもないが、いざ、思い返してみようとすると、少々リラクタントな気分もしなくはない。その理由については、言わずもがなだろう。
「要するに、くさい…… ものすごく、くさい話でしょう」
「確かに、くさい話ではあるけど……」
プチドラも、鼻(らしき小さな穴)を手のひらで押さえ、苦笑している。
わたしは、半ば独り言のように、
「でも、そろそろ頃合いかしら…… 『なんの頃合い?』なんて、突っ込みはナシよ」
と、その時……、実に都合よく、応接室のドアが開いた。
「カトリーナ様、一つ、分かったことがございます」
「あら、パターソン、丁度良かった。たった今、あなたを呼ぼうとしていたのよ。で、それはそれとして、『分かったこと』って、なんなの?」
すると、パターソンは資料を抱えたまま、わたしの耳元に口を近づけ、ゴニョゴニョゴニョと、
「以前、帝国宰相自身とドラゴニアの利害関係に関し、報告を申し上げたことがありましたが、その際にはハッキリとしていなかった『帝国宰相が推薦する人物』について、続報をお持ちしました」
「え~と、そうね…… 確か、そんな話もあったわね。帝国宰相が、自分の息のかかった人物をドラゴニア侯にするとかなんとか…… で、それは、誰?」
わたしは、口ぶりとしてはあまり興味なさそうに(実際にも大して興味はないのだが)言った。
「その人物は、名をローレンス・ダン・ランドル・グローリアスというそうですが……」
パターソンの説明によれば、そのローレンス・ダン・ランドル・グローリアスとは、現ドラゴニア侯の遠縁、かつ、帝国宰相とも遠い親戚に当たり、身体的な特徴としては、非常に背が低くポッチャリ型。能力的には、各方面にわたって(武勇、知謀、政治力等々)さほど秀でたところはないが、無能でもなく、また、帝国宰相に対しては非常に忠誠心が厚いので(これには、将来のドラゴニア侯を約束されたという事情もある)、いわゆる歴史シミュレーションゲーム的に表現すれば、周囲が自国の領土ばかりの後方生産国であれば太守を任せるには適当な人物とのこと。なお、双子の兄弟がいたとの情報もあるが、詳細は不明らしい。
この前に、宮殿の玄関で非常に背が低くて少しポッチャリとした、いかにも「お坊ちゃん」みたいな男とすれ違ったけど、その男が、パターソンの言う、ローレンス・ダン・ランドル・グローリアスなのだろう。
わたしは、特になんということもないが、なんとなく、
「なんだかね……」