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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第8章 ドラゴニア情勢は複雑怪奇
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御曹司は座敷牢に

 その後も状況は大きく、いや、まったく変わらなかった。マーチャント商会はこれまでと同様に軍事的行動に出ようとせず、三匹のブタさん(すなわち、アート公、ウェストゲート公、サムストック公本人)は、毎日、既に勝ったつもりで祝杯を上げ、のみならず、わたしの屋敷にも「ウェルシー伯もドラゴニア救済諸侯大連合の勝利の前祝いパーティーに参加されたし」という使者をしつこくよこしてくる。使者にはパターソンが応対し、適当な理由をでっち上げて断っているが、その理由にもそろそろネタが尽きてきて、パターソン曰く「正直に申し上げますと、非常に困ってます」とのこと。わたしが一瞬でも、その大連合のパーティーとやらに顔を出せば、ブタさんたちの気が済むのかもしれないが、その場にいるだけで肥満になりそうだ。

 その一方で、風の便り(より正確に言えば、帝都の駐在武官(親衛隊)の情報収集活動)によれば、ドラゴニアにおいて、御曹司(現ドラゴニア侯)は、度重なる失政・失敗・失策等々の責任を問われ、ドラゴニア騎士団の総意により、とうとう座敷牢に押し込められてしまったという。そのため、現在のドラゴニアは、ドラゴニア騎士団(より精確に言えば、アース騎士団長を中心とする騎士団上層部による合議制)が統治し、三匹のブタさんの騎士団には、基本的に「節度ある対応を要求する」というスタンスで臨んでいるらしい。ただ、三匹のブタさんの騎士団が、その求めに素直に従うのかどうか。もしかすると、ドラゴニアにて、仲間割れの内戦みたいな、更に意味不明な騒動が持ち上がるかもしれない。

 ちなみに、ニコラスの言っていた「青年ドラゴニア党」とは、パターソンの見立てのとおり、ドラゴニアの将来を憂う若い騎士たちの秘密結社的な集団(つまり、アース騎士団長の目の届かないところで結成され、騎士団長の指示でも場合によっては従わない、ある意味、困った連中)とのこと。


 なお(話は変わって)、今現在、廊下では、これからアメリカとクレアがお使いに行くところなのか、何やらドタバタあるいはバタバタとして、

「え~っと、アンジェラさん、わたしたちが出かける際には、駐在武官の人たちがガードしてくれることが多いのですが、いつまでも、お世話になってばかりではいけません。ですから、今日こそ、いわゆる汚名挽回です」

「はい? 『汚名挽回』……ですか?? 『名誉挽回』ならまだしも、仮に、その『名誉挽回』としても、使いどころを間違っているような気が……」

「え~っと、いけません。え~っと、つまり、そういう細かいことをばかり気にしていると、そのうち、きっと、誘拐犯につけ込まれますよ」

 そういう問題ではないと思うが…… ちなみに、これは、応接室のソファにもたれかかっているわたしの内心の声。


 ここで、プチドラが、不意に「あっ」と口を大きく開け、

「そういえば、マスター、ひとつ、忘れてない?」

「……って、何を?」

 いきなり「忘れてない?」と言われても…… 一体、何を忘れたというのだろう。

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