再びニコラス来訪
こうして、なんとも言いようのないモヤモヤ感を募らせながら数日が過ぎ……
例によって朝遅く(むしろ、昼前と言おうか)、寝ぼけ眼をこすりながら、あまりハッキリとしない意識の中で、いつもの朝昼兼用食を食べ終え(この辺りで、ようやく脳細胞が働き始め)、これから食後のデザートといったところで、
「カトリーナ様、おくつろぎのところ、失礼いたします」
パターソンが、少々慌てた風に応接室に駆け込んできた。
「どうしたの? もしかして、帝国宰相が『とにかくすぐに来い』とか」
「いえ、そうではなく、お客様です。前にも一度いらっしゃいましたが、ドラゴニア騎士団のニコラス・ロバート・バーナード・アース様が、カトリーナ様に火急の用とのことです」
「ニコラスが? 『ドラゴニアに兵を出してくれ』みたいな話かしら。面倒だけど、行きがかり上、仕方ないわね。とりあえず、ここに通しなさい」
パターソンは小さく一礼すると、素早く応接室を出た。
程なくして、すなわち、ほんの数分後……
「ドラゴニア騎士団ニコラス・ロバート・バーナード・アース、ウェルシー伯に、至急、お伝えしたいことがあり、ドラゴニアから参上いたしました!」
甲冑に身を包みバックパックを背負った若い騎士がパターソンに先導され、颯爽と応接室に姿を現した。
「あら、ニコラス、いらっしゃい。元気そうで何よりだわ」
と、わたしは、一応、少々間が抜けているような感もあるが無難な挨拶。
すると、ニコラスは何を思ったか、いきなりわたしの顔を凝視し、
「ウェルシー伯!!!」
と、いきなり大声を上げ、そのすぐ後には、どういうわけか右腕を顔にこすりつけるようにして、「ううぅ……」と嗚咽を始めた。
「あの、ニコラス…… 一体、どうしたの?」
「うっ…… ああ、ウェルシー伯、失礼しました。つい、感情が抑えられなくなりました。しかし、許せないのです。ヤツらです! ヤツらだけは、絶対に許せない!!」
ニコラスは、力を入れて拳を握りしめた。なんだか分からないけど……、もう少し言えば、見当さえつかないけど、ニコラスはかなり立腹している様子。
わたしは「はて」と首をひねりつつ、
「ニコラス、落ち着いて話しなさいよ。何があったの?」
「アート公、ウェストゲート公、サムストック公が派遣した騎士団の傍若無人ぶりが許せないのです。ヤツら、一体、何様のつもりなのか! ぶっ殺すくらいでは足りません!!」
ニコラスは、そう言いながら、床をドンドンと踏みならした。ジェスチャーが派手すぎるような気もするが、ドラゴニアで会った時も「マーチャント商会の使者が許せない」とかで、結構派手なアクションだったような……
ともかく、ここは、(個人的には、それほど聞きたいとは思わないが)三匹のブタさんの騎士団の「傍若無人ぶり」の具体的なところについて、話してもらうことにしよう。




