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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第8章 ドラゴニア情勢は複雑怪奇
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マーチャント商会は動かず

「ふわぁ~~……、眠い……」

 ここは帝都の一等地、わたしの屋敷。

 今回の物語の冒頭と同じく、例によって、わたしは寝室のベッドの中で暖かさに包まれながら猫のように丸くなり、早い話が朝寝坊。傍らでは、プチドラが手持ち無沙汰を紛らわせるように、「よいしょ、よいしょ」と、何か考えがあるのか、筋力トレーニングめいたことを始めている。


 現在のところ、ドラゴニア情勢は、表面上(もしかしたら水面下では何かあるかもしれないけど)、まったく動いていない。ドラゴニア騎士団プラスアルファ(アート公、ウェストゲート公、サムストック公の派遣した騎士団)がドラゴニアで臨戦態勢を整えているにもかかわらず、マーチャント商会は、ドラゴニアに対し債務の督促状を送付するのみで、現実的な実力行使に出る気はないように見える。

 ちなみに、風の便り(より正確に言えば、帝都の駐在武官(親衛隊)の情報収集活動)によれば、騎士団を派遣した三匹のブタさん(すなわち、アート公、ウェストゲート公、サムストック公本人)は、既にこの戦いには勝った気分で、毎日祝杯を上げているという。

 そればかりではなく(「あろうことか」も付け加えるべきか)……

「カトリーナ様、今日も書簡が届いておりますが……」

 このところ、わたしが屋敷の応接室で朝昼兼用食を口に運んでいるとき、困った顔をしたパターソンが巻物を届けるのが、日課のようになってしまった。

「今日も来たの!? 『しつこい』と言うか、『まめ』と言うか……」

 この巻物は、すなわち、三匹のブタさんによる、わたしに対しドラゴニアへの参戦(兵員の派遣)を要求する手紙。わたしとマーチャント商会会長と帝国宰相との間で妥協が成立していることを、三匹のブタさんはまだ知らないようだ(帝国宰相に導かれ、わざわざ宮殿の中庭まで駆けて出て話をした甲斐があったと言うべきか)。

 わたしは、「ふぅ」とため息をつき、

「でも、マーチャント商会会長や帝国宰相との約束もあるし…… これからドラゴニアに派兵なんか、できるわけがないでしょう。もっとも、いついかなる場合でも約束が絶対ではないとしても……」

「分かりました。では、いつものとおりに捨て置きます」

 パターソンは、やや苦笑しながら、応接室を出た。「捨て置く」とは、読んで字のごとく、(三匹のブタさんの使者にリップサービスすることはあれ)具体的なことは何もしないという意味。


 その一方で、マーチャント商会会長や帝国宰相からは、手紙、使者、呼出し等々の類は一切なかった。宰相から「すぐ宮殿に来られたし」との命令・指示でもあれば、(いつもなら鬱陶しいだけなのだが)その機会に彼らの動静を少しばかり探ることもできそうなところ。現状は、なんとももどかしいような、やきもきさせられるような、そういうスッキリとしない気分。

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