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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第7章 錯綜と混迷
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ドラゴニア情勢

 アメリアとアンジェラが手を洗うため応接室を離れると、わたしは「ふぅ」とひと息、

「ところで、この前から少しだけ気になってたんだけど……、アメリアとアンジェラが時折言ってる『人さらい』って、一体、なんのこと?」

「ああ、その件ですか。『人さらい』とは、読んで字のごとくと申しましょうか、最近、帝都で誘拐事件が頻発しているようなのです」

 パターソンの説明によれば、いつの頃からかハッキリしないが、このところ、帝都で比較的裕福な子供をねらった誘拐事件が月に2、3件発生しており、今のところ犯人につながる有力な情報はなく、犯人からの身代金の要求も確認されていないという。アメリアやアンジェラが外出する際は、帝都の駐在武官(親衛隊)がガードに付くようにしているが、仕事の具合もあり、毎回というわけにもいかないとのこと。

 わたしは、ティーカップに紅茶のおかわりを注ぎ、

「帝都も物騒になったものね。そういうことなら、よろしく頼むわ」

 パターソンは、「御意」とばかりに一礼した。


 その後……

 一般的には「幸いなことに」と表現すべきだろうが、わたしにとっては「残念ながら」と言うべきか、ドラゴニアで戦闘は発生しなかった。

 ドラゴニアではドラゴニア騎士団が臨戦態勢を整えており、三匹のブタさん(アート公、ウェストゲート公、サムストック公)が派遣したそれぞれの騎士団もドラゴニア領内に到着し、ドラゴニア騎士団とともにマーチャント商会の大軍の来襲を「今か今か」と待ち構えているらしい。なお、実際に戦端が開かれた場合には、帝都とドラゴニアの間に位置するウェストゲートの町が敵方(マーチャント商会)に真っ先に狙われそうな気もするが、そこまで気を回すのは余計なお世話というものだろう(町にある程度の守備隊は残しているのだろうということで、納得しよう)。

 ところが、マーチャント商会は、ドラゴニアに軍団を派遣することなく、また、その前段階である軍団の編成さえ行うこともなかった。ただ、ドラゴニアによる債務の不払い宣言は法的に無効であることを宣言しつつ、ドラゴニアに対しては、債務の履行を促すべく、連日、督促状を送付するのみ。


 わたしは屋敷の応接室で何をするともなく、紅茶を口に運びながら、

「なんだか、面白くないわね」

「でも、これが常識的な対応というものかもね」

 プチドラも手持ちぶさたなのか、応接室の机の上にフニャッと、だらしない格好で腹ばいになっている。プチドラが言うには、ドラゴニアに侵攻してドラゴニア騎士団プラスアルファ(アート公、ウェストゲート公、サムストック公の派遣した騎士団)を片付けたとしても、戦闘によってドラゴニアが荒廃してしまっては、債権の取立てが事実上できなくなってしまうとのこと。確かに、そのとおりで……、のみならず、わたしにとっても、ドラゴニアのワイン産地が戦闘で荒れてしまっては困るけど……

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