非常に背が低くてポッチャリした人
わたしはプチドラに顔を向け、
「今のとっても背が低くてポッチャリとした人、一体、何者かしら?」
若者という年ではないが、まだ中年と呼ぶには早そうな年齢。非常に背が低い点はさておき、大人しそうで、毒にも薬にもならないようなタイプに見えた。口ぶりからすれば、帝国宰相とは旧知の間柄ということになろうか。
すると、プチドラも、小さな腕を組み、
「誰だろう。ボクにとっても、初めて見る顔だよ。でも……」
と、ここまで言ったところで、「うーん」と首をひねり、何やら考え始めた。
「どうしたの? 『でも』の次は、なんなの?」
「なんというか…… 初めてのはずなんだけど、どこかで会ったような気も……」
プチドラも感じていたのだろう。初めて見る顔のはずなのに、初めての気がしないという、不思議な感覚を。こういう場合、都合よく、パーシュ=カーニス評議員みたいな人がフラリと現れて解説してくれれば万々歳だけれど、幾らファンタジーの世界でも、万事が御都合主義の法則にしたがって進むわけではないだろう。
やがて、プチドラは、その人物が誰か思い出す努力を諦めたのか、わたしを見上げ、
「マスター、これから、どうするの?」
「屋敷に戻りましょうか。帝国宰相の誤解……と言っていいわよね。とにかく誤解も解けたようだから、今日のノルマは終了ということにしましょう。とりあえず帰って、応接室でゆっくりとお茶でも飲みたいわ」
このまま待っていても、宮殿内を当てもなくさまよっても、パーシュ=カーニス評議員がいつものように「ハッハッハッ」と現れてくれる保障はないし、何かの具合でアート公、ウェストゲート公、サムストック公の豚さんトリオの出っ張った腹を見せられたりしたら不愉快だし、まかり間違ってツンドラ侯に出くわしたとしたら、どうなるか。ここは、無意味に命を張るところではないだろう。
こうして、屋敷に戻ってみると、パターソンがわたしを出迎え、
「お帰りなさいませ、カトリーナ様。今日は早かったですね」
「そうね、珍しくといったところかしら。でも、とにかく、用は済んだわ」
そして、応接室のソファに腰を下ろし、南方トカゲ王国から取り寄せた特別製の紅茶で午後のティータイムを愉しんでいると、不意に廊下がドタバタと騒がしくなり……
「大変です! 恐ろしい人さらいが、化けに……、え~っと、つまり、化けて出て!?」
「違います、アメリアさん。そういう場合、『化けの皮がはがれた』と表現するのですが、用法としては、また、意味的には、完全に間違っていますよ」
と、アメリアとアンジェラが、いつもの調子で慌ただしく応接室に駆け込んできた。毎度のことながら、何を言いたいのか、さっぱり分からない。
パターソンも、「ははは」と苦笑しながら、二人に「とりあえず、外から帰ったら手を洗いましょう」と教育的指導をしている……と言うか、それ意外に対応あるいは反応のしようがないところだろう。




