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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第7章 錯綜と混迷
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それは誤解です

 帝国宰相は大声を上げた後、気分を落ち着かせるように「はぁ~」と大きく息をはき出し、

「わが娘よ、今までは、多少のことは大目に見てきたが……」

「……と、おっしゃいますと?」

「とぼけるでない! おまえがアート公、ウェストゲート公、サムストック公を巻き込み、よからぬ事を企てていることは、分かっておる!!」

 そう言いながら、帝国宰相は、右足で玄関先の石畳を思いきり踏みつけた(音は出なかったが、力は相当に入っているだろう)。


 わたしは意図的に(正直、かなり苦心して)、いわゆる「まじめな表情」を作って、

「いえ、そこは誤解です。わたしは、むしろ巻き込まれた側で、正直、困っているのです」

「『困っている』じゃと? この期に及んで、何をいい加減なことを言い出すか!」

「いえ、いい加減ではなく……、間違いのない、正真正銘の真実なのです」

「ほお、真実か。ならば、その『真実』とやらを説明してみよ。『真実』であれば、ウソ偽りのない理路整然とした筋道が示されるはずじゃな」

 帝国宰相は、話しているうちに、少しずつ落ち着いてきたようだ。

「恐らく、帝国宰相は、わたしが彼らの主導するドラゴニア救済諸侯大連合に加入し、ウェルシーからの援軍をドラゴニアに派遣すると思われたかもしれませんが……」

「違うのか? 連中は、得意げに吹聴しておるぞ、『過去に二度までもマーチャント商会の大軍を打ち破ったウェルシー伯が味方に付き、ドラゴニアに精鋭を派遣する以上、勝利は既に我々のものだ』とか、なんとか」

「ですから、それが誤解なのです。わたしが彼らから、その大連合への加入の誘いを受けたことや、その際に多少のやり取りがあったことは事実ですが、わたしとしましては、この前のマーチャント商会会長との約束のように、申し訳程度の軍事顧問団より大規模な戦力をドラゴニアに派遣する気は、まったくありません。その代わりといってはなんですが、マーチャント商会側にも、約束の遵守をお願いしたいと、こういうことです」


 帝国宰相はわたしに顔を近づけ、「ほぉ~~~」と、なおも疑念に充ち満ちた目で、わたしをにらみつけた。疑われるのは当然かもしれないが、あまり顔を近づけないでほしいのが、正直なところ。

「では、わが娘よ、仮に、マーチャント商会の大軍がドラゴニアに攻め入り、ドラゴニアの騎士団に加え、アート公、ウェストゲート公、サムストック公たちが派遣した援軍を蹴散らしたとしても、一向に構わぬと?」

 と、帝国宰相はニヤリ。その「ニヤリ」の意味するところは判然としないが、わたしとしては、(ぶっちゃけた話としては)そのとおりなので、

「はい。ドラゴニアのワイン産地に関するわたしの権益・利権が守られるのであれば、そのワイン産地を除くドラゴニアは、好きなように処理していただいて結構です」

 すると、帝国宰相は、突然、「うーん」と腕を組み、うつむき加減に「うむむ」と難しい表情になって、その場でフリーズしてしまった。宰相にとって、わたしの回答内容は、完全に予想外だったようだ。

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