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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第7章 錯綜と混迷
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帝国宰相大激怒

 わたしは正直、あまり気が進まないながらも、プチドラを抱き、パターソンが玄関先に用意した馬車に乗り込んだ。ちなみに、今、玄関先では、恒例行事となっているところの、アメリアとアンジェラの「フレー、フレー、誘惑犯に負けるな!」という理解不能な応援が始まったところ。

 パターソンは、その応援を横目に苦笑しつつ、

「カトリーナ様、騒がしいことになっていますが…… いずれにせよ、御用心下さい」

 わたしは特に言葉を返すことなく、小さくうなずいた。これから宮殿に出向こうというときに、アメリアとクレアの天然ボケ・ツッコミの漫才あるいはコントを見せられると、緊張感がそがれるという以前の問題のような気もするが……

 でも、それはそれとして、これから(仕方がないので)、帝国宰相の怒りで醜く歪んだ顔を見物しにいくことにしよう。馬車は、屋敷を出ると、やや早足で宮殿に向かった。

 その道すがら、プチドラは「ふぅ」と小さく息をはき出して、わたしを見上げ、

「マスター、帝国宰相だからいつものことだけど、急な呼び出しだね」

「そうね。用があるなら来ればいいのに。どうせ、暇を持て余してるんでしょ。そもそも、こっちには、あんな爺さんに用は全然ないんだから」

「そうだね。でも、それを言い出したら……」

 こんな具合に、プチドラと意味のない会話を交わしているうちに、程なくして、馬車は宮殿の証言玄関前に到着した。ちなみに、今日の宮殿前は閑散としている。会議や行事等々の予定が入っていないのだろう。


 そして、正面玄関にて、「よいしょ」とプチドラを抱いて馬車を降りると、

「しばらくぶりじゃな、わが娘よ」

 いきなり耳に入ってきたのは、かなりの怒気を内に包み込んだような帝国宰相の声だった。見ると、玄関先では、今回は、いきなり帝国宰相が真っ赤な顔をして仁王立ちし、わたしをにらみつけている。

「あら、これはこれは、帝国宰相では、ありませんか。宰相におかれましては、いつもながら若々しく、本当に、まったく、うらやましいほどに……」

 わたしは敢えて、少々バカが付くほど丁寧に(言い換えれば、慇懃無礼に)挨拶をした。ところが、帝国宰相は、今日は言葉を発することなく、ギロリと鋭い眼光でわたしを見下ろしているだけ。今更だけど、使者が言っていた「(帝国宰相が)本気で怒っておる」というのは、本当のようだ。

 帝国宰相は沈黙したまま、十数秒の間を置き、それから、

「わが娘よ、言いたいことはそれだけかな?」

 その時の帝国宰相は、表面上、口調は穏やかなものの(しかし、怒りのせいか、唇は小刻みに震えている)、その形相は、月並みの表現を借りれば、まるで鬼のごとく、なんとも名状しがたい表情。(当然だけど)これ以上、帝国宰相を刺激しないほうがよさそうと思っていると、その時……

「わが娘よ、いい加減にせよ! 何が望みじゃ!! 悪戯が過ぎるぞ!!!」

 ここで、とうとう感情を抑えきれなくなったのだろう、帝国宰相は、宮殿の内にも外にも響き渡るような大声を上げた。

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