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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
序章 ドラゴニアへの招待
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無意味な長広舌

 御曹司は、大きく息を吸い込み、

「わがドラゴニア侯爵家は、帝国建国の際には初代皇帝陛下の大事業を大いに扶け、その多大なる功績により……(云々)……」

 と、何を思ったか、侯爵家の家系の興りやその後の発展について語り始めた。わたしとパターソンは、「なんなんだ」とばかりに顔を見合わせる。

 プチドラは、さっとわたしの肩によじ登り、

「御曹司は、プライドだけはものすごく高かったはずだよ。だから、人にものをたのむときには、どうしても、要領を得ないヘンチクリンな言い方になっちゃう」

 古くからの大貴族のものの考え方とは、そのようなものなのだろうか。分かったような、よく分からないような……、でも、やっぱり、どう考えても理解しがたいような……


 そのまま、御曹司の無意味な長広舌を、しばらくの間、聞き流していると、

「お茶が入りましてございます。」

 執事であろう地味な初老の男が、わたしとパターソンの前にカップに入った紅茶を置いた。ただし、茶菓子はなく、御曹司の分の紅茶もない。しかも、出された紅茶は色も香りも悪く、ハッキリ言えば粗悪品。御曹司は、財政的にかなり追い詰められているのだろう。換金可能なものは既に換金され、広大なこの屋敷そのものや、きらびやかな家具・調度類のうち分離困難な又は(高価すぎてすぐに買い手がつかない等の理由で)換金困難なものは、債務の担保に取られているのではないだろうか。


 御曹司の長広舌は、さらに続き、

「……で、あるからして、ドラゴニア侯爵家は、帝国の数ある大貴族の中で、特別に、帝国の政治の中枢に重きをなすという栄誉に浴してきたのである。ところが……」

 と、いつまでたっても、話の核心部分に入ろうとしない。そればかりか、喋っている間に口調は熱っぽくなり、いつの間にやら、自らの語り口に酔いしれているのか、どんどんと演説口調の名調子になって……

「先代のドラゴニア侯がもう少し賢明であれば、今日の悲劇を招くこともなかった! それを、どこの馬の骨とも知れぬ小娘の寝技に、簡単に引っかかったため!!」

 ちなみに、その「小娘」とは、わたしのこと(「寝技」は誤解だが)。本人を目の前にして、よくも、まあ、簡単に言えるものだ。ただ、さすがの御曹司も、言っちゃった後で、時既に遅しであるが、重大(致命的)な過失に気付いたのか、

「いや、失礼、先代の話は止そう。先代には誤りもあったが、偉大な人だった。いや~、ははは……」

 と、ごまかし笑い。でも、笑って済ませられる話ではないと思う。

 御曹司は、ここでグイと身を乗り出し、

「先代の誤りが直接の原因というわけではないが、近頃、領内では非常な問題が起こりつつある」

 ようやく本題らしい。もう、なんでもいいから、サッサと用件を言いやがって下さい……と、これは、わたしの内心の声。

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